NFLにおける“許し”は稼いだヤード数やタッチダウン、勝利、プレーオフへの切符、そしてチャンピオンシップによって判断される。これらを提供できるのならば、フットボールの恩恵であなたは生まれ変わるだろう。

ワイドレシーバー（WR）アントニオ・ブラウンには、それらを届けることができるだろう。たとえタンパベイ・バッカニアーズがニューオーリンズ・セインツに38対3で惨敗した夜に、ブラウンを含めバッカニアーズのユニフォームを着た誰もがそうできなかったにしろ。前回のニューヨーク・ジャイアンツ戦に続いてバッカニアーズ攻撃陣がトップレベルのチームを相手に惨憺（さんたん）たる様相だったことを踏まえれば、ブラウンができる限り長く最大限の成果を出していくことをバッカニアーズが必要としているのは明らかだ。

バッカニアーズはここ20カ月におけるブラウンの4つ目の所属チームにあたる。これはブラウンの不安定さを示す一方、その能力の高さの証でもある。ブラウンは1年以上ぶりにフィールドに姿を見せており、その前にはニューイングランド・ペイトリオッツで1試合のみに出場。そこでは現バッカニアーズQBであるトム・ブレイディと急速に関係性を築いており、バッカニアーズはブラウンが問題を起こすことなくその種を花開かせることを期待している。

ブラウンが現地8日（日）に実施された試合でインパクトを残さなかったのも別段驚きではない。ブレイディはセインツのパスラッシュに終始押し込まれ、レシーバーたちは守備陣によって覆いつくされていた。『NFL Research（NFLリサーチ）』によれば、ブレイディがレギュラーシーズンの試合で3回以上のインターセプトを喫するのは、2011年の第3週にバッファロー・ビルズに敗れたとき以来のことだ。ブラウンが調子を上げていたとしても、この状況は変えようがなかっただろう。

バッカニアーズのヘッドコーチ（HC）であるブルース・エリアンスはブレイディが活躍できなかったことについて「28ポイント差をつけられ、ボールを動かせず、プレッシャーがかかっている。それでもインターセプトの言い訳はないが、彼はヒットを受けていた。間違いなく、彼のせいではない」と述べている。

また、エリアンスHCはこの敗北を“ショッキング”だと語った。

バッカニアーズでの初試合においてブラウンの存在は大きな要素にならず、試合後のインタビューでエリアンスHCもブレイディもブラウンについての質問を受けていない。試合中の様子からブラウンがブレイディの想定した位置にいなかったのが何度か見て取れ、ブラウンがプレーブックに習熟していないのがうかがえた。

セインツ戦はブラウンにとって、不抗争の答弁を行った住居侵入窃盗および暴行罪の容疑による、リーグの個人行動規範違反に対する8週間の出場停止処分から復帰して初めての試合だった。一方でブラウンは今も性的暴行の疑いによる民事訴訟に直面している。NFLは民事訴訟においてどういった情報が浮上するかによってブラウンにさらなる出場停止処分を科す可能性を指摘しており、バッカニアーズはさらなるトラブルがあればブラウンはチームを去ることになるとしていた。

ブラウンは先週、“怒りから遠ざかり”、より良い人間になったと思えると話していた。それが本当だとすれば、確かに良い話だ。

おそらく、ブラウンは生まれ変わったのだろう。より高い目標を果たすことを想定するプロスポーツの世界ではことさら、贖いの物語が好まれる。精神面でのサポートとして、ブレイディがモチベーショナルスピーカーのトニー・ロビンスとの間を取り持ってくれたとブラウンは明かしている。ただし、ロビンスが昨年にセクハラと違法行為で複数の告発の対象となった――本人はこれを否定――ことを踏まえれば、ブラウンが正しい道を歩めるかは興味深いところだ。

率直に言って、バッカニアーズ側からすれば誰がブラウンを導こうがトラブルや回り道がない限り関係ないだろう。ブラウンがNFLにいるのは、トラブルを避けてフィールド上にとどまることができれば将来の殿堂入りが確実な選手だからだ。だからこそブレイディが手を貸したのであり、エリアンスHCが――オフシーズンに個人的な嫌悪感をあらわにしながらも――ブラウンをチームに受け入れた。

いったん腰を落ち着ければ、ブラウンはバッカニアーズが白星を得るための助力になるだろう。もしフットボールがブラウンの人生を変える誘因となるのであれば、それはより重要な勝利と言えるかもしれない。だが、バッカニアーズがブラウンとサインしたときに想定し、今季これからも集中し続けるのは、それとは別の勝利だ。日曜日の惨敗はバッカニアーズの見通しを急速に暗くした。しかし、ブラウンの成功がいかにしてジャッジされるかは、これまで以上に明確になっている。

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