先発のクオーターバック（QB）について語る際、ミネソタ・バイキングスのヘッドコーチ（HC）であるマイク・ジマー以上に口の重たい者はいないだろう。

開幕戦の当日にはジマーも先発QBに誰を選んだのか明かすことになるが、これまでの状況とは異なり、必要に迫られた結果となるかもしれない。

バイキングスはQBテディ・ブリッジウォーターが膝前十字靭帯（じんたい）断裂と膝の脱臼によりチームを離脱した後、ドラフト1巡目と4巡目の指名権を引き換えにフィラデルフィア・イーグルスからQBサム・ブラッドフォードを獲得。先発出場するような選手でない限り、ドラフト1巡目指名権と引き換えに選手をトレードするチームなどない。つまり、常識的に考えればブラッドフォードがバイキングス開幕戦の先発QBとなるのだろう。しかし、ブラッドフォードがバイキングスのオフェンスを学ぶ時間は2、3日しか残されていない。

NFLの各チームはそれぞれがオリジナルのプレーブックを作成しているが、その情報量たるや固定電話が最も普及していた時代の電話帳よりも分厚い。不可能とは言い切れないものの、プレーブックに記載された情報を1週間もない間に読み込んで記憶し、フットボール最高峰の舞台で、覚え込んだ知識を体で実践するとなると途方もないことだ。最初はおそらくバイキングスのチームスタッフがブラッドフォードのためにチームのプレーブックを薄くするだろう。チームスタッフはまた、新しく加入したブラッドフォードの仕上がり具合を観察し、その結果を踏まえて日曜日にナッシュビルで開催される開幕戦でブラッドフォードがバイキングスのオフェンスを指揮できるかどうかを見極めることになるだろう。

仮にブラッドフォードが開幕に間に合わないとすれば、数々のチームを渡り歩いたバックアップQBのショーン・ヒルがその役割を担うことになる。ブリッジウォーターが戦線を離脱した後、ジェネラルマネジャー（GM）のリック・スピールマンがブラッドフォード獲得の貪欲な取引を行う前まで、実際にヒルが開幕の先発を務めるものと思われていた。準備期間は短いが、実際、テネシー・タイタンズ戦でブラッドフォードが先発QBではなかった場合はかなりの衝撃となるだろう。