キャリア終盤の機会損失を嘆くベン・ロスリスバーガー、殿堂入り達成を願う
2022年07月23日(土) 20:55ベン・ロスリスバーガーは引退した。彼は別れを告げたばかりのフットボールに思いをはせている。
最近『Pittsburgh Post-Gazette(ピッツバーグ・ポスト・ガゼット)』のロン・クックを相手に広範囲なインタビューに応じたロスリスバーガーは、引退に際しての心残りについて質問されている。その中のいくつかはよく理解できるものだった。21世紀に入った最初の10年間でスーパーボウル優勝を2度果たし、第45回スーパーボウルへと進んだロスリスバーガー所属のピッツバーグ・スティーラーズだったが、それ以降は彼の引退までプレーオフで3勝しかできなかった。
文化的な変化や世代交代が影響したと彼は考えている。
「ゲームが変わったと感じた」とロスリスバーガーはクックに話した。「人もどことなく変わったように思う。俺が最初の頃に洗脳されたからかもしれない。あの頃はチームが何より重要だった。チームが全てだったんだ。今では何でも自分を中心に置いて考えるようになった」
「ちょっと大げさかもしれないけど、それが俺にとって最大の土産だったんだ。チーム第一だった時代から、自分重視の時代に変わった。それは難しかったよ」
「若手も大変だよな。ソーシャルメディアってのがある。大学ではすごく大事に扱われる。今じゃNIL(知名度、イメージ、肖像の頭文字で、学生たちがそれを利用して収益化することが認められている)なんてものがあるんだろ、信じられないよ。特別扱いだ。大学のコーチたちは彼らに勝ってほしいから、若い頃から甘やかす。(マイアミ大学で)俺のコーチだった(テリー)ヘプナーは一度も甘やかしちゃくれなかったな。(ビル)カウアー(スティーラーズの元ヘッドコーチ/HCでプロフットボール栄誉の殿堂入り)もそうだった」
ロスリスバーガーのいわんとしているところは理解できる。ほんの5年前まで、スティーラーズはNFL屈指のワイドレシーバー(WR)アントニオ・ブラウン、エリートランニングバック(RB)リビオン・ベルを擁してNFLで最も爆発的なオフェンスを誇っていた。その2人とロスリスバーガーの組み合わせは“キラーB”トリオと呼ばれ、敵を一掃する運命にあると思われた。
しかし、フィールド内外での度重なるブラウンのトラブルやベルの契約問題などにより、3人のフルポテンシャルが発揮されることはなかった。ベルは2018年を丸々欠場することになった決断を今は後悔していると言っている。一方、ロスリスバーガーはさまざまな雑音に気を取られないようにしながら、スティーラーズをNFLのトップチームにとどめる努力を強いられた。
最終的には、ブラウンとベルがより良い環境を求めて去っていったことで状況は落ち着いたものの、2人が行き先で以前の輝きを取り戻すことはなかった。スティールシティに残ったロスリスバーガーはフレッシュな顔ぶれと共にスティーラーズの競争力を維持したが、再びロンバルディ・トロフィーを狙える機会はついぞ巡ってこなかった。
そして、ロスリスバーガーの時間は尽きた。2021年シーズンにサラリーキャップを大きく圧迫することになっていた彼は、チームと再交渉の末に最終シーズンとなる1年契約を締結。彼はクオーターバックの地位だけでなく、多くのものに強制的な別れを言わなくてはならなかった。
「大部分は(元ジェネラルマネジャー/GM)ケビン(コルバート)の意向だった」とチーム首脳との関係悪化についてロスリスバーガーは話している。「彼は前へ進もうとしていた。マイク(トムリン/HC)も多少そういう考えはあったけど、俺が戻ってきてもいいと思っていたはずだ。ミスター・(アート)ルーニーは俺が去年プレーすることを強く望んでいた」
彼らは再びプレーオフには進んだものの、カンザスシティ・チーフスに完敗してロスリスバーガーのキャリアは終わった。スーパーボウルの栄冠を2度手にしたとはいえ、前述したような多くの障害がなければ、もっと大きな成功も可能だったかもしれない。だが、ハインツ・フィールドでのロスリスバーガーのファイナルゲームはカンファレンス王者に就くこともなく、タイトルへの挑戦権をつかむことなく終わった。
「時間が尽きたんだと思う。あんなに長く続ける気はなかったんだ」とロスリスバーガーは言う。「十分長かったと言う人もいるだろう。“去年も続けたじゃないか”ってね。でも俺は去年、かなりいいプレーをしたと思っている。今だって腕はやれる状態だ。まだプレーできる自信はある。でも、日々変わるからな。メンタルなことだ。キャンプやシーズンの準備をしなくていいことは俺にとってすごくありがたかった。今は全てのことに満足している」
スティーラーズはミッチェル・トゥルビスキーや地元大学出身のケニー・ピケットをロスリスバーガーに置き換えて前に進んでいく。2人のQBに、ロスリスバーガーは自分を目指すのではなく、彼ら自身の良さを大事にするよう伝えたという。2人としてはロスリスバーガーのキャリアの一片でも同様の成功を味わってみたいことだろう。2004年のルーキーシーズンには13勝0敗という完璧なスタートを切り、20年近くも勝ち続けたフットボールキャリアだった。
栄誉の殿堂入りもできるはずだと彼は信じている。
「俺は長いことプレーした」とロスリスバーガーは振り返った。「長く続けることが条件じゃないのは分かっているけど、勝敗も見てほしいな。俺はそこそこハイレベルで十分長くやったと思う。殿堂入りできたら最高だよ。特別なことだからね。1つの特別な場所だし、特別な功績だ」
もし殿堂入りがかなわなかったとしても、彼はスティーラーズファンの心の中で特別な場所を占め続けるはずだ。彼の生み出した大量得点をたたえてスコアボードに飾られていたケチャップボトルが今はもう撤去されてしまったとしても。
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