バッファロー・ビルズのセーフティ（S）ダマー・ハムリンがNFLのフィールドに復帰できたのは、奇跡としか言いようがない。

救急隊員の迅速かつ的確な行動、シンシナティ大学メディカルセンターでの24時間体制の治療、そして長い回復期間があって初めて、ハムリンは復帰できた。もし、クリーブランド・ブラウンズのクオーターバック（QB）ジョー・フラッコが見事な復活を遂げていなければ、ハムリンは2023年シーズンのNFL年間最優秀カムバック選手賞を受賞していただろう。

フラッコがカムバック選手賞を受賞したことに対して、一部の人々は不満を持っていた。フラッコは、ブラウンズ史上最多となる、連続で300ヤード以上を投げた試合数を記録し、予想外のプレーオフ進出にチームを導いた。そうした人々の不満を耳にしたハムリンだったが、当初の悔しさを冷静に整理した後で、自分自身は不満を持っている人々に数えられることはないと考えている。

『Maggie and Perloff Show（マギー・アンド・パーロフ・ショー）』に出演したハムリンは、次のように語った。

「ああ、聞いたよ。何人かが騒いでいるのは聞いた。でも、最初はそう思った。正直に言えばね。少しそう思ったのは、俺自身が強い競争心を持っているからだけだ。どんな競争でも勝ちたいんだ。でも、ジョー（フラッコ）がステージに上がるときは拍手したし、ステージから去るときも拍手した」

「今の俺の人生では、それが神の計画だと本当に思う。彼がトロフィーを手にしたのには神の意図があった。彼の人生の道のりにも、神の意図がある。それが無価値だなんて言うつもりはない」

ハムリンがNFLのフィールドに復帰できたという事実だけでも、大きな功績と言えるはずだ。シンシナティ・ベンガルズのワイドレシーバー（WR）ティー・ヒギンズとの接触によって、ハムリンは心臓振とうを引き起こし、心停止した。フィールド上でCPR（心肺機能蘇生）を受け、その後の治療がハムリンの命を救っている。

その時点では、フットボールは優先事項ではなかったはずだ。それでも、フィールドに戻る決意を持ち続けたハムリンは、2024年にその目標を達成し、5試合に出場してタックル2回をマークした。

スタッツは重要ではない。ハムリンは、毎日目を覚ますたびに、何が本当に大切かを思い出している。

ハムリンはこう説明した。

「俺の旅、つまりカムバックは、この世の出来事とは思えないくらいのものだった。トロフィーで定義できるものではない。神が俺に与えたトロフィーは、毎日目を覚ますこと、生き続けること、呼吸できていることだ。健康な生活を送ること。家族が健康であること。今置かれているあらゆる状況に感謝している」

ハムリンのキャリアがこれからどう展開するかはわからない。元ドラフト6巡目指名のハムリンは、2024年シーズンを迎えるにあたってまだビルズに在籍しているが、たとえハムリンのフットボールキャリアが明日にでも終わったとしても、ハムリンはそのキャリアが素晴らしいものだったと考えるだろう。

ハムリンはさらにこうつけ加えた。

「たった1フィートのトロフィーを獲得できなかったからと言って、憤慨する方がきっとおかしいんだ。トロフィー獲得そのものはとても大きな意味を持つよ。俺も獲得したかったわけだし、その賞を軽視するつもりはまったくないけれど、俺の旅は、この世の賞よりも、はるかに精神的なものだと感じている」

【KO】