待望のNFL新シーズン開幕!【前編】
2016年09月08日(木) 12:00パンサーズ対ブロンコスという、スーパーボウルと同じ顔合わせで2016年シーズンが開幕を迎える。
リーグMVPを史上最多の5度も受賞したペイトン・マニングの引退や、ラムズのロサンゼルスへの再移転でNFLは新しい時代に突入する。トム・ブレイディの4試合の出場停止処分、開幕直前に相次いだクオーターバック(QB)移籍、贅沢な補強を施したジャガーズとレイダーズ。さまざまな要素がそれぞれのチームに少なからず影響を与える。32チームの戦力分布図はどう変わるのか。
AFCはペイトリオッツ、ベンガルズ、スティーラーズの3強を中心とした展開になると予測する。
ペイトリオッツはブレイディ不在の4試合をどうしのぐかが注目されるが、このマイナス要因があったとしてもイースト優勝の最有力であることに変わりはない。
ペイトリオッツに対抗する勢力があるとすればドルフィンズか。今季からアダム・ゲイスが新ヘッドコーチ(HC)に就任した。2年前までブロンコスの攻撃コーディネーターを務めた人物で、得点力の高いオフェンスを構築できる。シーズンごとに着実な成長を見せるQBライアン・タネヒルがゲイスのオフェンスシステムで躍進を遂げれば楽しみな存在だ。ディフェンスもマリオ・ウィリアムズを獲得するなどパスラッシュ強化に努めている。
ノースは今年もベンガルズとスティーラーズが優勝争いを展開する。ベンガルズはラインバッカー(LB)ボンテズ・バーフィクト、スティーラーズはランニングバック(RB)レベオン・ベルがそれぞれ開幕から3試合の出場停止処分を受ける。ともにチームの主力なだけに、ここをいかに乗り切るかは重要だ。
ベンガルズはA.J.グリーンに次ぐ第2レシーバーの台頭、スティーラーズはノーズタックル(NT)、セカンダリーが一新されたディフェンスの再構築が鍵だ。
昨年、故障のためにわずか7試合の出場に終わったQBアンドリュー・ラックが復活を遂げればコルツがサウスの王座に返り咲く可能性は高い。昨季優勝のテキサンズは新QB ブロック・オスワイラー次第だ。長年先発RBを務めたエアリアン・フォスターに代わってラマー・ミラーがスターターになるなど、オフェンスの戦力整備には数試合を要するだろう。
ディフェンスタックル(DT)マリック・ジャクソン、セーフティ(S)タショーン・ギプソンなどディフェンスを中心に大幅な戦力補強を行ったジャガーズだが、FAで選手を寄せ集めただけという印象はぬぐえず、チームとしてのケミストリーがまだ生まれていない。地区優勝やプレーオフを狙うだけの力はまだない。
ウエストは注目に値する。昨年の覇者ブロンコスはパスラッシュを武器としたディフェンスはほぼその戦力を維持しているとみていい。しかし、マニング引退の穴は大きい。現在のオフェンスはパスよりもランに比重を置くとはいえ、2年目のQBトレバー・シーミアンではタイトル防衛は難しい。
地区優勝に一番近いのはチーフスだ。相変わらずパスオフェンスには課題が残るが、DTドンタリ・ポー、LBデリック・ジョンソンが率いるディフェンスが強力だ。アウトサイドラインバッカー(OLB)ジャスティン・ヒューストンが故障で出遅れるのは懸念される。
楽しみなのはレイダーズだ。近年のドラフトで指名したQBデレック・カー、ワイドレシーバー(WR)アマリ・クーパー、LBカリル・マックらが中心選手に成長した。さらに今季はオフェンスライン(OL)カレッチ・オセメリ、LBブルース・アービン、Sレジー・ネルソンら実績あるベテランをFAで獲得した。ドラフトとFAがうまくかみ合った補強に成功しており、2002年以来となるプレーオフ出場も夢ではない。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。