QBワトソンの状況には「少し経ってから」対処するとブラウンズGBベリー
2024年11月07日(木) 12:19厳しいシーズンを過ごす中、クリーブランド・ブラウンズはトレード期限当日に売り手となり、すでに行っていたワイドレシーバー(WR)アマリ・クーパーのトレードに続き、ディフェンシブエンド(DE)ザダリアス・スミスをデトロイト・ライオンズに送り出した。このトレードはアメリカ東部時間5日(火)16時【日本時間6日(水)6時】の期限直前に成立している。
期限が過ぎ、ジェネラルマネジャー(GM)アンドリュー・ベリーが報道陣に対応する時が訪れたが、重大な情報が得られると期待していた人々は、その結果にがっかりするだろう。
予想通り、ベリーGMは2勝7敗のブラウンズが期待に応えていないことを認めた。しかし、ブラウンズがここからどのように進むかという質問に答えるべきときに、ベリーGMは意図的にあいまいな回答をしている。特に、アキレス腱(けん)断裂からの回復を目指しているクオーターバック(QB)デショーン・ワトソンの5年2億3,000万ドル(約355億1,794万円)の完全保証契約があと2年残っていることは、チームにとって重荷となっているはずだ。
ワトソンに関する2025年に向けての計画について質問されたベリーGMは「デショーンについての焦点は、シーズン終了につながる大ケガに見舞われた選手に共通していることだが、まずはアキレス腱のケガから回復し、健康を取り戻すことが最優先だ。それ以外のことについては少し経ってから対処する」と答えている。
その“少し経った後”こそが、2025年以降のブラウンズの見通しにとって最も重要なポイントだ。ブラウンズがスタークオーターバックの獲得に大金を投じたことは完全に裏目に出ており、NFL史上最悪のトレードの1つとして語り継がれる可能性もある。このトレードを成立させるためにブラウンズがワトソンと結んだ歴史的な契約も同様に問題視されるだろう。
2022年にワトソンをあのような形で獲得したことは賢明だったのかと問われたベリーGMは「今は反省モードではない」と返答。
「おそらく・・・去年も(ジョシュア)ドブスについて同じ質問を受けた覚えがあるが、現時点でそこに焦点を当てているわけではない。私たちが焦点を当てているのは、2024年シーズンをきちんと終えること、チームがより高いレベルでプレーすることだ。そういった長期的、あるいは大局的な振り返りはもう少し経ってから行うつもりだ」
2シーズンを通して、ワトソンがその契約金額に見合うクオーターバックであることを示す場面はわずかにあったものの、巨額の完全保証契約を正当化できるようなパフォーマンスを維持するには程遠かった。結果は大きな失望を招くものであり、シーズン第7週にアキレス腱を負傷していなかったとしても、いずれベンチに下げられる可能性が少なからずあったと言える。
簡単に言えば、ワトソンはもはやNFLの32人の先発クオーターバックに名を連ねるにふさわしいプレーをしていなかった。しかし、ベリーGMは水曜日、すべての責任をワトソンに押し付けることなく、次のようにコメントしている。
「もっと広い視点で、私たちはチームとしてうまくプレーできていなかったし、攻撃陣としてもうまくプレーできていなかった。オフェンスがうまくいっていないときは当然、先発クオーターバックとプレーコーラーに一番多くの批判が集まる。しかし、現実には、攻撃というのは組織と連携にかかっている。パフォーマンスを発揮できなかった理由については、各ポジショングループが共同で負っている責任による部分が大きい」
ベリーGMが言っていることは完全な間違いではない。バッファロー・ビルズの攻撃コーディネーター(OC)を務めていたケン・ドーシーを採用してオフェンスの改善を試みたブラウンズは、悲惨な状態となっている。今シーズン、20点以上を獲得したのはボルティモア・レイブンズを相手に衝撃的な勝利を収めたシーズン第8週の一度だけで、しかもそれはQBジェイミス・ウィンストンが今季初先発した試合だった。
ワトソンはフィールドでもチームに貢献していなかった。そして、ウィンストンがワトソンの代わりに出場し、3回のタッチダウンを記録して勝利をもたらしたとき、たとえそれが唯一の問題ではなかったとしても、ワトソンが大きな問題であることが明らかになった。
ベリーGMがこの2年で2回ワトソンの契約を再編したため、ブラウンズは依然として巨額の支払い義務を負っている。『Over The Cap(オーバー・ザ・キャップ)』によると、今後2年間のワトソンのキャップナンバーはそれぞれ7,290万ドル(約112億5,764万円)で、ブラウンズが来年にワトソンをカットした場合、2025年のデッドキャップは1億1,890万ドル(約183億6,101万円)から1億7,270万ドル(約266億6,902万円)に達するという。
2024年シーズンのサラリーキャップは2億5,540万ドル(約394億3,989万円)に設定されていた。ブラウンズが2025年に競争力のあるロースターを構築するのに、そうした動きがどれほど厳しい影響を与えるかは、数学の専門家でなくても理解できる。
経済的に容認できる決別の道も存在している。ブラウンズは今夏、6月1日以降のトレードでワトソンを手放していれば、4,600万ドル(約71億0,350万円)のキャップスペースを確保できたかもしれない。その取引は、2017年にブラウンズがヒューストン・テキサンズから受け入れた取引に似ている可能性がある。当時、ブラウンズはテキサンズから2018年ドラフト2巡目指名権――最終的にはこれでスターランニングバック(RB)ニック・チャッブを獲得――および2017年ドラフト6巡目指名権を獲得する見返りとして、元QBブロック・オズワイラーの膨れ上がった契約を引き受けた。
しかし、ワトソンを獲得するという後悔すべき決断にさらにコストがかかることになるため、かつてのテキサンズと同様に価値の高い指名権を手放すという意思がブラウンズになければ、そのような取引が成立する保証はどこにもないと言える。
たとえベリーGMに今すぐ振り返るつもりがなかったとしても、すでに多くの人々が振り返っており、その評価は厳しいものとなっている。ワトソンの契約について最終的に決断を下した人物が誰なのかは分からないが、現時点では、ベリーGMとオーナーの両方が責任を負っている状態だ。
ベリーGMは「常に言っていることだが、全員が賛成していたと言っておく。全員が賛成していたし、そういう点で大きな決断をする場合は当然、常にそうなるものだ」と語った。
今後の方針について、ブラウンズがどのような展開を見せるのかを予想するのは難しい。
ベリーGMとヘッドコーチ(HC)ケビン・ステファンスキーはブラウンズが1999年にエクスパンションチームとしてリーグに復帰して以来、最も大きな安定性をもたらしてきた。ステファンスキーHCは年間最優秀コーチに2度選ばれており、3回のプレーオフ出場で1勝2敗の成績を収め、クオーターバックの変更が頻繁にあったにもかかわらず、チームを比較的安定した状態に保ってきた。
そうした功績にもかかわらず、残りの8試合は重大な意味を持っている。ブラウンズがこのまま重い足取りで暗黒のオフシーズンに向かっていけば、コーチングスタッフやフロントオフィスに変更が加えられる可能性は十分にあると言えよう。
プレーオフ進出の希望はほぼ絶たれているが、ブラウンズにはまだやるべき仕事がある。
ベリーGMは「明らかに失望している。十分なプレーができていない」と述べ、こう続けた。
「シーズンを通して一貫した結果や勝利を得るために必要なことができていない。組織内部にとっても、ファンにとっても残念な結果であり、私たちは全員でこの結果を受け止めている。選手やコーチだけではない。私自身や人事スタッフ、調査グループもだ。今週は、レギュラーシーズン最後の8週間で質の高いフットボールをプレーするために、自分たちでコントロールできることに集中するつもりだ。これまでそれをやってこなかったからだ」
とはいえ、ワトソンがブラウンズのユニフォームを着て試合に臨むことはもうない可能性が高いように見える。ベリーGMが復帰の可能性を残し、「その可能性は常にある」と報道陣に話していたとしてもだ。
結局、ブラウンズは2023年シーズンにプレーオフ進出を果たす実力があることを証明したチームでありながら、フランチャイズクオーターバックを欠いているという、痛いほどなじみのある状況に直面している。2025年にそうした状況を改善する策を練るのはベリーGMの役割だが、それを実行に移すときまでチームに残っていられればの話だ。
【RA】