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第60回スーパーボウルでペイトリオッツを圧倒し、疑念を払拭したシーホークスQBダーノルド

2026年02月10日(火) 13:29

シアトル・シーホークスのサム・ダーノルド【AP Photo/Matt Slocum】

第60回スーパーボウルはシアトル・シーホークスのクオーターバック(QB)サム・ダーノルドにとって最高のパフォーマンスを発揮した試合ではなかったが、それで構わない。ダーノルドはMVPを獲得したわけでも、何らかの記録を打ち立てたわけでも、フットボール史に残るような衝撃的なプレーを見せたわけでもない。試合開始の瞬間から圧倒的な強さを発揮すると期待されていたチームの一員として、自分の役割を果たしただけだ。しかし、NFL史上最も印象的なキャリア復活劇の最終章を締めくくるには、それだけで十分だった。

シーホークスがニューイングランド・ペイトリオッツを29対13で下した試合は、スーパーボウル史上最も守備陣の活躍が印象的だった対戦の1つとして語り継がれるだろう。シーホークスは1985年のシカゴ・ベアーズ、2000年のボルティモア・レイブンズ、そしてフランチャイズ初の優勝を成し遂げた2013年のシーホークスを彷彿させる戦いぶりでペイトリオッツを圧倒した。とはいえ、守備陣がこの試合で最大の注目ポイントだったわけではなく、ダーノルドこそ真の主役だった。その記録がわずか202ヤード、タッチダウン1回、パス成功率50%にとどまったとしてもだ。

シーホークスがこの試合に勝ったのは守備陣が圧倒的なパフォーマンスを見せたからだろう。しかし、彼らが優勝に値するチームになったのは、ダーノルドが昨年3月にフリーエージェント(FA)として加入した際に示した可能性を見事に実現したからだ。

シーホークスのワイドレシーバー(WR)ラシッド・シャヒードは「これは俺たちにとっても彼にとってもすべてを意味する」と話している。

「彼がここまで来るために積み重ねてきた努力を、彼自身も俺たちも知っている。毎日、目の当たりにしてきた。彼は真のリーダーであり、コンペティターだ。スーパーボウル王者になるために彼が歩んできた道のりを、君たちも目にしてきたはずだ」

ダーノルドが頂点に至るまでの道のりは何度も語られてきたため、熱心なフットボールファンであれば誰もが知っている話だろう。2018年ドラフト全体3位を受けたダーノルドは、ニューヨーク・ジェッツでは期待外れの選手、カロライナ・パンサーズではポジションを維持できなかった選手とみなされ、2023年シーズンにはサンフランシスコ・49ersで控え選手となった。ミネソタ・バイキングスで劇的な復活を遂げた2024年シーズン――プレシーズンに見舞われた膝の負傷でシーズンを棒に振った新人のJ.J.マッカーシーの代わりにバイキングスを14勝3敗に導いた――でさえも、結局はいつものように期待外れの結末を迎えた。シーズン最終戦で大敗した後、ワイルドカードラウンドでロサンゼルス・ラムズに敗れたことを受け、シーホークスがなぜダーノルドを獲得したのかと疑問視する者もいた。

今や誰もがその答えを知っている。

ダーノルドはこれ以上、自身の資質や感情の乱れ、チームを栄光に導く精神力があるかといった質問に答える必要はない。ダーノルドはシーホークスをNFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)西地区制覇とプレーオフ第1シード獲得に導いただけなく、今季のNFCチャンピオンシップゲームでラムズを破ったことで、自身の実力を十分に示した。その試合でダーノルドは最終的にNFL MVPに輝いたラムズのQBマシュー・スタッフォードを上回る活躍を見せている。ペイトリオッツとのスーパーボウルでは、守備陣が相手に第4クオーターまで得点を許さなかったため、ダーノルドがそれほど大きな働きを見せる必要はなかった。

ダーノルドは自身の成功を後押しする要素がそろうチームに加入することを分かっていた。その要素とは、守備陣や成長著しいスターWRジャクソン・スミス・インジグバ、そして49ers時代に指導を受けた経験がある攻撃コーディネーター(OC)クリント・クビアックだ。ダーノルドの成功の秘訣は、加入と同時に救世主になる必要がなかったことだろう。求められたのは、ただチームに溶け込むことだった。どのようにしてチームを優勝に導いたのかと尋ねられたダーノルドは「簡単だ――チームメイトとコーチのおかげだ。OTA(チーム合同練習)やトレーニングキャンプの最初から、彼らは俺を信じてくれた。毎日、俺たちは仕事に打ち込んできた」と答えている。

シーホークスの勝利が注目に値するのは、ダーノルドが一流選手と見なされずにロンバルディトロフィーを掲げたこの2年で2人目のクオーターバックとなったからだ。昨シーズンはQBジェイレン・ハーツがフィラデルフィア・イーグルスを率いてカンザスシティ・チーフスに大勝したが、この試合ではイーグルス守備陣がQBパトリック・マホームズを徹底的に封じ込めたことが勝因だった。チーフスは3度のスーパーボウル制覇経験と2度のリーグMVP受賞歴を持つマホームズを擁していたが、イーグルスはより完成度の高いロースターと、高いプレッシャーがかかる中で勝利をつかむ術を理解している司令塔を抱えていた。

マホームズほどの才能を持つクオーターバックを欲しがらないチームなど、存在しないだろう。しかしそれは、シーホークスのジェネラルマネジャー(GM)ジョン・シュナイダーのように、より費用対効果の高いクオーターバックを起用することで才能のある選手をチームにそろえて優勝を目指す時代に向かっていないことを意味するわけではない。ダーノルドが3月にサインした3年1億50万ドル(約156億0,293万円)の契約は、ほとんどのクオーターバックが基盤となる選手を求めるチームから提示される金額とはかけ離れていた。しかし、この契約によってシーホークスはシャヒードやディフェンシブエンド(DE)デマーカス・ローレンス、WRクーパー・カップといった、この優勝に貢献した貴重なベテラン選手を獲得することができたのだ。

シーホークスは2025年シーズン初戦から明らかにチームワークを発揮していた。ダーノルドは最初の9試合で25回中17回のタッチダウンパスに成功し、シーズン前半に素晴らしい数字を残せることを証明。シーズン第11週に敗れたラムズ戦で4回のインターセプトを喫した後は主に試合を管理する役割を担い、その後の試合ではすべて勝利をもたらした。

スーパーボウルに向け、シーホークスの自信は高まっていた。セーフティ(S)ニック・エマンウォリは“目が覚めた瞬間に”チームが勝つと確信したと明かしている。

「朝食をとっているとき、みんなが笑顔で、笑い合いながら試合の重要さを意識していないかのように振る舞っていたときに分かったんだ。俺たちはシーズンを通してやってきたことと同じことをしただけだ」とエマンウォリは語った。

シーホークスはペイトリオッツのQBドレイク・メイに6回のサックを決め、3回のターンオーバーを強いた。その中には、第4クオーターにラインバッカー(LB)ウチェナ・ヌウォスが45ヤードを走り抜いて決めたインターセプトリターンタッチダウンも含まれていた。

ペイトリオッツが逆転できると感じられる瞬間はほとんどなかった。シーホークスは守備陣だけでなく、ランニングバック(RB)ケネス・ウォーカー三世にも大きく依存し、キャリー27回で135ヤードを獲得したウォーカー三世はスーパーボウルMVPに輝いている。ダーノルドは試合の大半でスミス・インジグバやカップにうまくパスを通せなかったが、最終的にその必要があまりなかった点は彼にとって幸いだった。

シーホークスが試合後半に19対0のリードを築いた時点で、ペイトリオッツの方が力不足であることは明らかだった。

メイは「相手はいろんなブリッツを仕掛けてきた。強烈なプレッシャーをかけるチームだとは言わないけど、今夜はうまくいっていた。彼らに追い詰められていたし、俺はもっとうまくボールを出さなきゃいけなかった」と振り返っている。

メイは、試合終了後にフィールドで勝利を祝う選手たちが交錯する中でダーノルドを見つけようとしたが、ライバルのダーノルドには“もっと大事なことがある”と考えたと明かした。もし2人が会えていれば、ダーノルドが今回のような挫折を引きずらないよう、メイに手短に助言をしたかもしれない。キャリアが低迷していたジェッツ時代に、ダーノルドが頂点に立つとは誰も想像していなかった。いや、昨シーズンが終わった時点でそれを予想していた者すら、ほとんどいなかっただろう。

ダーノルドが青と緑の紙吹雪が降り注ぐリーバイス・スタジアムに立っていたという事実は、その忍耐力を如実に物語っている。日曜夜、ダーノルドはその瞬間にあまり感情的な反応は示さず、“やったぞ”と感じただけだった。ダーノルドは、自分を過小評価していた人々に反論することに気を取られるのではなく、自分が本当にチームにふさわしい存在だと気づいてくれたフランチャイズの一員でいられることに感謝していた。

【RA】