NFLがeスポーツに本格参入、大会開催
2017年08月27日(日) 13:18NFLは現地21日(月)、ゲーム会社『エレクトロニック・アーツ(EA)』と提携し、EAが販売する人気ゲームシリーズ、マッデンの最新作“マッデンNFL18”を使ったeスポーツイベント、“マッデンNFLクラブ・チャンピオンシップ”の開催を発表した。大会にはNFL所属全32チームが参加する。
マッデンNFL18はG.O.A.Tエディションと名付けられたスペシャル版が22日に、通常版が25日に発売され、大会も22日にスタートした。参加者は自分が推すNFLチームの代表となるべく、まずオンラインで予選を戦う。成績上位者はさらにNFLスタジアムを含む、各チームが主催する現地トーナメントに進出し、最終的に各NFLチームで1名の代表プレーヤーが選ばれる仕組みだ。
こうして32人の代表プレーヤーが決まると開催されるのがマッデンNFLクラブ・チャンピオンシップ・ライブ・ファイナルという決勝トーナメントだ。このトーナメントは来年フロリダ州オーランドでプロボウルウイーク中に行われるファンイベント、プロボウルエクスペリエンスとミネアポリスで開催される第52回スーパーボウルのファンイベント、スーパーボウルエクスペリエンス内で実施されることとなっている。
以前にも紹介したが、eスポーツとはエレクトロニックスポーツの略で、複数のプレーヤーによって行われるコンピューターゲームやビデオゲームを“スポーツ”として捉えたものの総称。アメリカでは近年急速に市場が拡大しており、リアルなスポーツ界からの参入が続いている。NFLでも7月にペイトリオッツオーナーのロバート・クラフトが、人気ゲーム“オーバーウオッチ”を題材とした新規プロリーグで、ボストンを拠点とするチームのオーナーに就任することが発表されたばかりだった。
今回のマッデンNFLクラブチャンピオンに関してはプロゲーマーだけを対象とせず、誰でも参加できることが売りとなっている。ロジャー・グッデルNFLコミッショナーは開催の声明で「競い合うゲーム大会とeスポーツはより多くの、そして若く、デジタルに精通したNFLの観衆を集める最もエキサイティングな方法の一つです。マッデンNFLクラブ・チャンピオンシップ開催のためEAとコラーボレートすることはNFLの活動の興奮と誰もが参加可能な大会による我々のファンの情熱をつかむ他にない機会を提示します」とコメントしている。
EAはeスポーツ熱の過熱に伴い、2年前から競技ゲーム部門を設立、eスポーツビジネスへの参入を図ってきた。今回の発表に先立ち、プロバスケットボールNBAを題材にしたゲーム“NBA 2K”を題材に、NBA所属17チームが参加するリーグが来年スタートすることも発表されている。マッデンに関しても規模の小さなトーナメントを実施していたが、今回はトーナメント形式で全チームが参加する大々的な大会に拡大させた。
この点についてEAのアンドリュー・ウィルソンCEOは「我々が開催したマッデンNFL大会の最初のシーズンは何百万人ものプレーヤーを集め、世界規模でNFLファンの情熱を燃え立たせることができ、大成功でした。今回マッデンNFLのプレーヤーたちが全32NFLチームの代表となるべく競う点で、我々は前例にないレベルで競技ゲームとNFLが協力を行っています。マッデンNFLクラブチャンピオンシップはスポーツファンの夢を実現し、世界的なステージで彼らの大好きなチームのために競う、待望の機会となります」と話している。
大会のメディア露出についてはまだ詳細は発表されていない。しかし、32のローカルトーナメントについては動画配信サイト『YouTube』やゲーム動画の配信を専門とする『Twitch』といったNFLとEAが提携するデジタルプラットフォームでストリーミング配信されるということだ。さらにプロボウルとスーパーボウル開催時の最終ラウンドに関してはNFL専門チャンネル『NFL Network(NFLネットワーク)』がカバーすることとなっている。
これまでNFLはNBAなどと比べ、eスポーツへの参入が遅れ来たが、一挙に巻き返した形の今回の大会開催によって狙い通り、若者層の支持拡大につながるか注目されるところだ。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。