コラム

激戦区となるか、NFC南地区

2017年08月26日(土) 23:22


アトランタ・ファルコンズ【Sipa via AP Images】

過去2年のNFC優勝チームはいずれもNFC南地区が輩出している。一昨年はNFL最多勝利の15勝1敗でシーズンを乗り切ったパンサーズ、昨年はあと一歩でフランチャイズ初のリーグ制覇を逃したファルコンズがカンファレンス王者となった。

ファルコンズは攻守ともに主力メンバーが残っており、今年も地区優勝候補の筆頭だ。昨年6勝10敗でディビジョン最下位に甘んじたものの、パンサーズはクオーターバック(QB)キャム・ニュートンを中心に相変わらずのタレント集団で巻き返しを狙う。

ここに新たな勢力として名乗りを上げるのがバッカニアーズだ。昨年は9勝7敗でシーズン終盤までプレーオフの望みをつないだ。長い低迷が続き、連続勝ち越しのシーズンは2007年と2008年の2年連続を最後にないが、今年は期待できそうだ。

オフェンスに多くのタレントが集まったのがその理由だ。3年目を迎えるQBジェイミス・ウィンストンは順調にポケットパサーとしての成長を続けている。過去2年いずれも4,000ヤードを超えるパス獲得距離を記録しているが、今年はそれを大きく伸ばす勢いだ。

プレシーズンゲームでも落ち着いたプレーでリーダーシップを発揮し、オフェンスの中心としての自覚が芽生えたようだ。エースワイドレシーバー(WR)マイク・エバンスとの呼吸もあっており、今季もこの2人はタッチダウンを量産しそうだ。プレシーズンは2試合で平均71.4%のパス成功率をマークし、レイティングはいずれも90を超える。タッチダウンパスがないにもかかわらず、これだけの成績を残すのはパスの精度が高く、距離を稼いでいる証拠だ。

オフェンスの主力メンバー、いわゆるサポートキャストにも恵まれている。エバンス以外にも、レッドスキンズから移籍のWRデショーン・ジャクソン、ランニングバック(RB)ダグ・マーティンらはいずれもプロボウルクラスのプレーメーカーだ。こうしたスキルポジションのコアメンバーが重大な故障なくシーズンを過ごすことができれば2007年以来となるポストシーズンも見えてくる。

ディフェンスではジェラルド・マッコイとクリス・ベイカーのディフェンシブタックル(DT)コンビは巨漢を生かして中央の守りを堅くし、このオフに5年の契約延長を受けたディフェンシブエンド(DE)ウィル・ゴルストンもインサイドにスライドした際はランストッパーとして貢献する。ブレント・グライムズ、バーノン・ハーグリーブスがアウトサイドを守るセカンダリーも悪くない。

プレシーズンで見せた印象が実力ならばNFC南地区でファルコンズの対抗馬に十分になりうる戦力は整っている。

戦力的にセインツは難しいかもしれないが、パンサーズが復活すればこの地区はNFCで最も激しい戦いが展開する地区になる。今シーズンのこの地区はAFC東地区、NFC北地区との対戦が組まれており、比較的他ディビジョンからの勝ち星は拾いやすい。それだけにディビジョン内での戦績が地区優勝とプレーオフを争う重要な要素となりそうだ。

2002年のリーグ再編によって誕生して以来、2013年から2015年にかけてパンサーズが3連覇するまでこのディビジョンは毎年優勝チームが入れ替わっていた。昨年ファルコンズが頂点に立ってパンサーズの1強時代到来にストップをかけたが、今後は競争の激しい展開が待っている。

激戦区は星のつぶしあいで勝ち数が伸びずにプレーオフではいいシード順位をとれない傾向がある。その反面、シーズンを通して厳しい戦いを経験することで鍛えられるチームもある。このディビジョンはどちらの運命をたどるのか。最終週まで複数のチームが優勝を争うスリリングな展開を期待したい。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。