コラム

選手の人格を評価する2つの賞の候補者発表

2017年12月17日(日) 10:37


2016年シーズンのウォルター・ペイトンNFLマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたイーライ・マニングとラリー・フィッツジェラルド【Photo by Jeff Lewis/Invision for NFL/AP Images】

NFLが選手の人格について表彰する2つの賞の候補者を発表した。

まず現地7日に発表されたのが“ウォルター・ペイトンNFLマン・オブ・ザ・イヤー”賞の候補者32人。各チームから1名ずつが選出されている。

同賞は1970年から行われているもので、選手のフィールド上での卓越した活躍はもちろん、フィールド外での慈善活動や地域社会への取り組みについて評価するものだ。リーグの数々の賞の中でも最も名誉ある賞とされている。創設当初は単に“マン・オブ・ザ・イヤー”と呼ばれていたが、慈善活動への熱心さで知られ、1977年に同賞を受賞している元ベアーズのランニングバック(RB)ウォルター・ペイトンが1999年に逝去したことに伴い、その年から“ウォルター・ペイトン”の名前が冠されるようになった。

これまでの受賞者には1970年の元コルツのクオーターバック(QB)ジョニー・ユナイタスに始まり、1982年の元レッドスキンズQBジョー・タイズマン、1990年の元ベアーズのオフェンシブタックル(OT)アンソニー・ムニョス、2001年の元スティーラーズRBジェローム・ベティスなど名選手が並ぶ。昨年はカーディナルスのワイドレシーバー(WR)ラリー・フィッツジェラルドとジャイアンツQBイーライ・マニングのダブル受賞となった。ちなみに47年の歴史の中で最も受賞者が多いチームはベアーズとチーフスの5人。ポジションではQBが16人と他を引き離している。

今後は最終候補者3人にまで絞り込まれた後、第52回スーパーボウルの前日、現地2月3日に行われるNFLの総合受賞イベント“NFLオーナーズ”内で受賞者が発表される予定だ。

また、32人の候補者はフィールド外での業績を示すため、シーズンが終わるまでマン・オブ・ザ・イヤーのデカルをヘルメットにつけてプレーすることになる。これは今回が初めてで、将来的に継続されるということだ。

受賞者にはNFL財団と慈善団体ユナイテッドウェイ、同賞のスポンサーとなっている保険会社ネーションワイドから受賞者の名前で50万ドルの寄付が行われる。そのうち25万ドルは受賞者が運営する慈善団体に寄付され、の残り25万ドルは受賞者の名前で、子供達へのデジタル技術を使った教育支援プログラム、キャラクター・プレーブックに寄付されるとのことだ。さらに最終候補者2名には同様に、10万ドルずつが、残りの候補者29名も同様に5万ドルずつが寄付される。

気になる候補者だが、テキサンズのディフェンシブエンド(DE)J.J.ワットやイーグルスのセーフティ(S)マルコム・ジェンキンス、スティーラーズのDEキャメロン・ヘイワードなどが選ばれている。

2つ目の賞は“アート・ルーニー・スポーツマンシップ”賞だ。各カンファレンスから4人ずつ、8人の最終候補者が選ばれている。AFCはチャージャーズのタイトエンド(TE)アントニオ・ゲイツ、ジェッツQBジョシュ・マカウン、チーフスQBアレックス・スミス、ブラウンズOTジョー・トーマス。NFCがレッドスキンズTEバーノン・デービス、パンサーズのラインバッカー(LB)ルーク・キークリー、ライオンズのディフェンシブタックル(DT)ハロティ・ナータ、49ersのOTジョー・ステイリーとなっている。

同賞はフェアプレーや対戦相手への尊敬、プレーに取り組む姿勢など、フィールド上のスポーツマンシップを評価したものだ。2014年にスティーラーズの創設オーナーでやはり人格者として知られた故アート・ルーニー(現チーム社長、アート・ルーニー2世の祖父)の名を冠して創設された。

選考方法としてはまず各チームが1名の候補者を選出。それを元バッカニアーズRBウォリック・ダンや元ジェッツRBカーチス・マーチンなどから構成されたNFLレジェンズ・コミュニティが最終候補8名に絞った。今後は15日に選手たちが行うプロボウルの投票に合わせ、選手による互選という形となる。自分のチームの選手には投票できない制限が設けられているということだ。受賞発表はやはりNFLオーナーズの中で行われ、受賞者にはNFL財団から2万5,000ドルが受賞者の選んだ慈善団体に寄付される。

これまでの受賞者は2014年がカーディナルスWRラリー・フィッツジェラルド、2015年が元レイダースSチャールズ・ウッドソン、2016年がコルツRBフランク・ゴアだった。

昨年はフィッツジェラルドがウォルター・ペイトンNFLマン・オブ・ザ・イヤーも受賞しており。今回はアレックス・スミスとハロティ・ナータの2人が両方の賞で候補に挙がっている。

NFLではラフなプレーやフィールド外での不祥事など、選手やチーム、リーグ全体のイメージを損なうような出来事が多いのは事実だ。それだけにリーグの質を高め、イメージを良くするためにもこうした賞に力を入れることが重要なのである。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。