コラム

スティーラーズに不安の影を落とすWRブラウンの故障

2017年12月23日(土) 09:56

ピッツバーグ・スティーラーズのファン【AP Photo/Keith Srakocic】

スティーラーズ(11勝3敗)は今季AFCで最も早く地区優勝を果たしてプレーオフ出場を決めている。第15週にペイトリオッツに敗れるまで8連勝し、序盤の2敗が遠い記憶となるほどだった。

連勝中はシード争いで長期にわたってAFC暫定1位を堅持してきた。しかし、その座をペイトリオッツ(11勝3敗)に明け渡した今、第2シードすらも危なくなっている。その最大の要因はエースワイドレシーバー(WR)アントニオ・ブラウンの戦列離脱だ。

ブラウンはペイトリオッツ戦で左脚のふくらはぎの筋肉を部分断裂するケガを負い、レギュラーシーズンの残り2試合を欠場する見込みだ。

ブラウンは今季リーグトップの1,533ヤードを稼ぎ、チーム最多の9タッチダウンをあげている。言うまでもなくクオーターバック(QB)ベン・ロスリスバーガーのナンバーワンターゲットだ。そのブラウンがいなくなるとスティーラーズのオフェンス力は大きく後退する。

ランニングバック(RB)リビオン・ベルは健在でレシーバー陣も新人ジュジュ・スミスシュースター、マータビス・ブライアントと人材はそろっており、タイトエンド(TE)ジェシー・ジェームズも順調にキャッチ数を増やしている。しかし、ブラウン欠場の穴は依然として大きい。

プレーオフには復帰可能と予想されるが、筋肉の故障だけに回復時期は正確には読めない。スティーラーズとしては万全を期すためにもプレーオフの第1週のバイウイークは確保したいところだ。

そうすると記憶の彼方に押しやられたはずのシーズン序盤の2敗が重くのしかかってくる。カギを握るのはプレーオフピクチャーで現在暫定第3シードのジャガーズ(10勝4敗)だ。

ジャガーズは第15週に10年ぶりのプレーオフ出場を決めた。1999年以来となる地区優勝も目前だ。地区編成前だった当時はAFCセントラル所属だったため、実現すればAFC南地区は初制覇となる。このジャガーズは第5週の対戦でスティーラーズに勝っている。両チームが同勝率でシーズンを終えた場合のタイブレイクで有利な条件を保持しているのだ。

残り2試合のスケジュールはスティーラーズがテキサンズ(4勝10敗)とブラウンズ(0勝14敗)と対戦し、ジャガーズは49ers(4勝10敗)とテキサンズとぶつかるが、どちらも順当なら2勝してシーズンを終えるだろう。

しかし、ブラウン不在のスティーラーズは苦戦する傾向にある。ブラウンが先発に定着した2011年以降ケガで欠場した試合はプレーオフを含めて4試合あり、スティーラーズの戦績は1勝3敗だ。もし、第3シードに転落し、ブラウンもプレーオフ第1週に間に合わなければワイルドカードラウンドをエース不在で戦わなければならない。決して安穏としていられる状況ではない。

主力選手を故障で欠いたNFLチームはよく“Next man up”という言葉を口にする。「他の選手が台頭するべき」という意味だ。幸いにスティーラーズオフェンスには人材が揃う。誰がブラウンに代わる“Next man”になるのか。スミスシュースター、ブライアントらの奮起は不可欠だ。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。