語り継がれる名勝負 - “逃げるは恥だが役に立つ”、花道を飾ったレイ・ルイス
2017年01月05日(木) 01:31レイブンズ vs. 49ers
結果:34 – 31
会場:メルセデス・ベンツ・スーパードーム(ルイジアナ州ニューオーリンズ)
スーパーボウルには毎回多くのサイドストーリーが存在するが、2012年シーズン末に開催された第47回はとりわけ多くのストーリーが存在した。
まず舞台となったのが2005年に発生したハリケーン“カトリーナ”の被害から見事に復興を果たしたニューオーリンズだったこと。さらに、対戦したボルティモア・レイブンズのヘッドコーチ(HC)がジョン・ハーボー(兄)、そしてサンフランシスコ・49ersのHCがジム・ハーボー(弟)という史上初の兄弟対決となったのである。そして、レイブンズの強力ディフェンスの中心選手として活躍してきたレイ・ルイスがプレーオフ前に引退を表明し、ルイスにとって最後のスーパーボウルになることが決まっていた。
試合前半はレイブンズのクオーターバック(QB)ジョー・フラッコが3タッチダウンパスを決める活躍と、ディフェンスが2つのターンオーバーを奪い、21対6とレイブンズの一方的な展開となる。
後半は開始直後、レイブンズのワイドレシーバー(WR)ジャコビー・ジョーンズがキックオフリターンタッチダウンでさらに突き放すも、会場の停電により35分間試合が中断してしまう。この中断が試合に大きな影響をもたらした。
再開後、試合のモメンタムが完全に49ers側に移ったのだ。レイブンズがパントを繰り返すのに対し、49ersは試合再開からわずか5分で2タッチダウン、1フィールドゴールで28対23まで追い上げた。
さらに第4クオーターに入り、当時ルーキーQBだったコリン・キャパニックがスクランブルでタッチダウンを収め、ついに2点差とレイブンズの背中に迫った。レイブンズがフィールドゴールを決めてリードを5点に広げた後、49ersはタッチダウンを奪うために猛攻を仕掛けたものの、ゴール前まで迫ったQBキャパニックがWRマイケル・クラブツリーに投げた3回のパスは全て阻まれ、逆転のタッチダウンは実現せず。その後、レイブンズは自陣ゴールを背負いながらの攻撃となり、そして、パントを蹴る際に、この試合最大のドラマが起こったのである。
NFLファンが『Twitter(ツイッター)』でつぶやいたとある投稿を紹介したい。
逃げるは恥だが役に立つと言われて浮かぶのはやっぱり47回スーパーボウル4Q残り11秒5点リード自陣8ヤード4th&7からレイブンズのPがパントせずにエンドゾーン内を逃げ回って残り4秒で故意に外に出てセイフティ献上するも時間を最大限に潰し勝利をものにしたやつ
— 韋堕天 (@Juxta_Crucem) 2016年12月6日
“逃げ恥”とはまた言い得て妙、その一言に尽きる。
すなわち、レイブンズのパンター(P)サム・コックがパントを蹴らずに逃げ続け、時間を消費し、セーフティを献上するも、試合はレイブンズが逃げ切り、勝利を手にしたのである。まさに“逃げるは恥だが役に立つ”勝利で、レイ・ルイスの引退に華を添えた第47回スーパーボウルであった。
【文 塩田拓也】