チーフスが新しいキックオフルールの下でDBリードのキッカー起用を検討
2024年05月31日(金) 16:38新しいキックオフ形式の導入に伴い、NFLの全チームのコーチたちが創意工夫をこらすようになっている。
ピッツバーグ・スティーラーズのクオーターバック(QB)ジャスティン・フィールズがリターナーになるのか? カンザスシティ・チーフスのディフェンシブバック(DB)ジャスティン・リードがキックオフスペシャリストになるのか? それもいいだろう。新しい時代が来たのだから、何でもありだ!
チーフスのスペシャルチームコーディネーターのデイブ・トーブが言及したところによると、チーフスはリードをキックオフ時のキッカー(K)に据えることを真剣に検討しているという。通常のキッカーであるハリソン・バッカーにキックオフでしてほしくないことをあげたトーブは、現地30日(木)にその理由を次のように説明した。
「キックカバーのときにタックルができる選手がいい。(ハリソン)バッカーもタックルはできるけれど、一年を通して彼にタックルをさせるようなことはしたくない。XFLを見れば分かるけれど、キッカーがタックルに関わる割合は少なくとも25%から40%はあると思う。相手を跳ね返そうとするか、自分でタックルするか、タックルをミスするか。バッカーにはそんな状況に陥ってほしくない。でも、彼がキッカーであり続けるのは確かだ」
「彼は特定の状況で使う選手になる。彼にはボールを動かすさまざまな能力があるが、他の選手にはそれは難しいかもしれない。もし必要になったら、タッチバックにしてもいい。ただ相手にいい位置でボールを渡すことになる。エンドゾーンの外に向けて蹴ってタッチバックにすると、相手は25ヤードラインではなく30ヤードラインからボールを持つことになる。その5ヤードの差は大きい。これは相手オフェンスの得点する確率が3%増えることを意味する」
その一方で、リードなら「そこに行ってタックルすることができる」とトーブは強調し、こう続けた。
「彼はおそらく相手チームが計算に入れていない特別な選手になる。相手は彼がタックルできることを知っている。でも、ジャスティン(リード)のような選手は相手が気にしなければならないし、ブロックしなければならない相手だ。だから、他の選手のブロックを諦める必要が出てくる」
一見すると、これは理にかなった論理に見える。少なくともその役割を果たすのに十分なキック能力を持っているリードが、最高のタックル能力を持つキッカーになりうることは明らかであり、新しいルールの下で強力なキックカーバーユニットの重要な一部となるだろう。しかし、『Prime Video(プライム・ビデオ)』の分析専門家であるサム・シュワルツスタイン——2020年にXFLで似たようなキックオフ形式の導入を推進した人物——は、NFLの新ルールではキッカーはレシービングチームがボールをキャッチするまで50ヤードラインを越えられないため、トーブは無駄な努力をしているかもしれないと指摘した。
シュワルツスタインはソーシャルメディア上でこうつづっている。
「このルールによってNFLでキッカーがタックルに関わることは少ないと思う。それに、キッカーがこれほど関与する理由は、彼らがリターナーを追いかけるのに最適な角度に位置していて、ボールの着地点から遠く離れていて、さらにフィールドの中央に並んでいるからだ。カバレッジの“レベル”が事前に設定されていないから、キッカーはいつも少なくとも第3のレベルに位置している」
NFLのキックオフがどうなるかを知っている人物がいるとすれば、それはシュワルツスタインだ。しかし、だからといって、リーグ中のコーチ陣がスペシャルチームにおける新たな展開に備え、あらゆる手段を試みることを思いとどまらせることはない。トーブもこれらの変更がまったく異なる重要な要素をもたらし、過度に攻撃的になることと安全策をとりすぎることのバランスを取るために、微調整が必要だと認めている。
「もはやハングタイム(キックされたボールの滞空時間)は関係ない。ハングタイムは重要ではなくなる。いま重要なのはキックの正確さだ。リターナーの配置を見て、彼らから遠ざけてコーナーに蹴ることを考えるんだ。でも、リスクをとり過ぎることはできない。なぜなら、アウトオブバウンズに蹴ると、40ヤード地点から相手にボールを渡すことになってしまうからね。ターゲットゾーンに届かないと、これもまた40ヤード地点から相手は攻撃を始めることになる。限界に挑戦するのと、安全にカバーに専念するのとの間には微妙なバランスがある」
このプレシーズンでは、キックオフに関する大胆な試行錯誤が見られるだろう。もしかすると、リードが深く蹴り込む場面も目にするかもしれない。
【KO】