恐れることなく攻めの姿勢を貫いたチーフスHCリード
2021年01月18日(月) 11:22恐れをなしていては求めるものを得られない。
カンザスシティ・チーフスのヘッドコーチ(HC)アンディ・リードには慎重なプレーも可能だったはずだ。バックアップクオーターバック(QB)に対し、守りのプレーを選ぶこともできた。ディフェンスを頼りにしても、勝利の目はあっただろう。
しかし、羊の群れに入り込むのに、羊の皮を必要としない狼もいる。狼であるがままに飛び込めばよいのだ。
脳震とうプロトコルに入ったパトリック・マホームズの代役としてバックアップQBのチャド・ヘニーを投入したリードHCと攻撃コーディネーター(OC)エリック・ビエネミーは、時計を進めるだけでよい最終ドライブでさえ、パスを繰り出すのをやめようとしなかった。
この試合で最も大きな決断が下されたのは、残り時間1分30秒ほど、チーフス側48ヤードラインからファーストダウン獲得まであとわずかの第4ダウンという状況の中、チーフスが22対17でリードを保っているときだった。ファーストダウンが獲得できれば、AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)への道が保証されるのだ。選択肢は2つあった。
1)パントしてブラウンズQBベイカー・メイフィールドに残り80秒ほどで75ヤード以上のタッチダウンドライブを強いる
2)挑戦して勝負を決定づける、もしくはミッドフィールドでブラウンズにボールを渡す
リードHCにとっては、悩むほどのないことだったようだ。
22対17で勝利した試合後、リードHCは「第4ダウン残り1ヤードに挑む・・・そこに疑いはなかった。疑う余地はなかった。われわれ側では、誰もがこのプレーに挑むと分かっていたと思う。世界中がなどと言っているわけではなく、われわれのサイドラインでは、皆“明日なんかないんだ。さあ行こう、やろう”という感じだった。だから、それが重要だったと私は思う」と話している。
そして、それは安全なQBスニークなどでもなかった。
リードのプレーコールはワイドレシーバー(WR)タイリーク・ヒルをオープンにし、ヘニーのパスがそこへ届いた。これで勝負ありだ。
選手たちも、コーチがアグレッシブな姿勢を取ることを予期していた。
セーフティ(S)タイラン・マシューは試合後、「だから俺たちはビッグ・レッド(リードHCの愛称)が好きなのさ」と『CBS』にコメントしている。
「彼はいつだって乗り遅れない。まるで俺たちの戦う精神みたいで、背後でいつも俺たちに火を着けてくれる。彼が一つのプレーを装填していることを、俺たちはいつだって分かっている」
リードHCのオフェンスにおける才覚は最高の部類に入るものの、コーチとして最も優れている点は、ロースターにいる53名全員に対する自信を育む能力かもしれない。
リードHCはヘニーが試合に投入された際に決して恐れず、このベテランQBにパスをコールした。深いところでのインターセプトを経た後だったにもかかわらず、リードHCは最終ドライブでもこのQBの手にボールを任せている。リードHCが得たのは、自らの信頼に対する報いだった。ヘニーはショートスローでファーストダウン獲得に成功。その後、第3ダウン残り14ヤードでQBスクランブルによって13.75ヤードを稼いだ。そして、リードHCは再び第4ダウンでバックアップQBを信じたのだ。
マホームズが離脱した後、何がチームの勢いを維持したのか問われたリードHCは「(ブレット・ビーチGMが)ここにもたらした選手たちの性質だと思うし、そこに勝利への意思も加わったのだと思う」と答えている。
「どこかで厳しい時期にも心の深みに達し、それを立ち直らせなくてはならない。コーチたちが尻込みしていては、そして、選手たちが――リーダーたちが――たじろいでいれば、そういうことは起こらない。われわれのロッカールームはたじろがない。彼らはそういうふうにタフなんだ。だからといってすべての試合に勝つわけではない。そういうことを言っているのではなく、それがチャンスを切り拓くということだ。そして、それがコーチたちの間に信頼を築いていく」
スーパーボウルウイナーからの信頼が、3年連続でAFCチャンピオンシップゲームをアローヘッド・スタジアムで開催するチャンスをチーフスにもたらした。
マホームズがプレー可能になるかどうかはまだ分からない。いずれにせよ、アンディ・リードが恐れを抱くことはないだろう。
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