元NFLコーチ2名がフローレス元HCの起こした集団訴訟に参加、カーディナルス、タイタンズ、テキサンズに新たな疑惑が浮上
2022年04月08日(金) 12:45マイアミ・ドルフィンズの元ヘッドコーチ(HC)ブライアン・フローレスが今年に入ってから起こしたNFLとそのチームによる人種差別的な雇用慣行を申し立てる集団訴訟に、アリゾナ・カーディナルスの元HCであるスティーブ・ウィルクスと元NFLアシスタントコーチのレイ・ホートンが参加した。ウィルクスとホートンはともに黒人だ。
現地7日(木)にニューヨーク南部地区で提出された修正訴状には、カーディナルス、テネシー・タイタンズ、ヒューストン・テキサンズによる差別に対する新たな申し立てが含まれている。また、黒人オーナーシップの推進、雇用および解雇プロセスの透明性向上、黒人アシスタントコーチの知名度向上、黒人コーチへのパイプラインの強化など、“黒人の候補者に平等な機会が与えられる未来を作るために”NFL内の変革を求める8つの提案の概要も明らかにされた。
NFLのスポークスパーソンは修正訴状についてのコメントを控えている。
ホートンは修正訴状の中で、タイタンズが2016年1月にヘッドコーチの空席を埋めるためにマイク・ムラーキーの採用を決めていたにもかかわらず、自分と“偽りの面談”を行ったと主張した。当時、ホートンはタイタンズの守備コーディネーター(DC)を務めており、白人のムラーキーはチームの暫定HCだった。
ホートンはタイタンズがルーニールールを遵守しているように見せかけるために自分とHC職の面談を実施し、“(ムラーキーを)ヘッドコーチとして採用するというあらかじめ下された決定”を発表する前に“黒人の候補者にも平等な機会を与えた”のだと主張している。
訴状では、2020年に行われたポッドキャストのインタビューで、ムラーキーがタイタンズのヘッドコーチになるまでの過程を後悔していると語ったことが引き合いに出されている。
ムラーキーはこう明かしていた。「テネシーにいた時に一度だけ自分を許してしまい、今でも後悔しているのだが、そこのオーナーであるエイミー・アダムス・ストランクとその家族がルーニールールを満たす前にやって来て、私が2016年にヘッドコーチになると伝えられた。だから、偽りの採用プロセスを進めていることも知っていたし、多くのコーチが面接を受けていることや、その面接を受けるために彼らがどれだけ準備したか、そしてできることすべてに取り組んでも彼らにはその仕事を得るチャンスがないということも知りながら、私は2016年にヘッドコーチになることを分かった状態で何もしなかった」
ホートンはタイタンズとの面接が偽りだったことを知ったとき、「打ちのめされ、屈辱を味わった」と木曜日に出した声明で表現している。
そして、「今回の件に参加することで、この経験をポジティブなものに変え、永続的な変化をもたらし、将来的に真の機会均等を実現させたいと考えている」と述べた。
2016年における新ヘッドコーチ探しのプロセスについて、タイタンズは木曜日に出した声明で次のように抗弁している。
「2016年のヘッドコーチ探しはNFLのガイドラインとわれわれ自身の組織の価値観に完全に沿って、熟考された競争的なプロセスで行われた。4名の優秀な人材がいてそのうち2名が多様な候補者という中で、対面での詳細な面接を行った。すべての面接が終了する前に決定がなされることはなく、決定事項が伝えられることもなかった。われわれは自分たちの多様性への取り組みを誇りに思いつつ、職場や地域社会における多様性と包摂性を育むために、組織として継続的に成長することに専心している」
フローレスの当初の訴えには、ドルフィンズのオーナーであるスティーブン・ロスが2020年ドラフト全体1位指名権を獲得するためにフローレスの就任初年度である2019年に敗戦ごとに10万ドル(約1,238万円)を支払うと持ちかけてきたという主張が含まれていた。ロスはこの疑惑を否定している。
木曜日に裁判所に提出された書類によると、現在、ピッツバーグ・スティーラーズのシニアディフェンシブアシスタント兼ラインバッカー(LB)コーチを務めているフローレスは、2019年12月4日にドルフィンズのジェネラルマネジャー(GM)クリス・グリアとCEOのトム・ガーフィンケル、上級管理者のブランドン・ショアに対し、ロスの試合に負けたいという望みと“組織内に存在する毒”について記した覚書を送っていたという。
『NFL.com』はドルフィンズにコメントを求めているところだ。
また、修正訴状には、最初の訴訟の結果としてテキサンズがフローレスに対して“報復”を行ったという主張も含まれている。フローレスは、テキサンズのヘッドコーチとしての1シーズンで4勝13敗という成績をもたらした後に解雇された黒人のデビッド・カリーの後任として雇われなかったのは、自分がリーグを訴えて“NFLにおける制度的人種差別について公に語った”からだと主張した。
訴状では、フローレスと元NFLクオーターバック(QB)ジョシュ・マカウンがテキサンズのヘッドコーチ職の最終候補者だとする2月6日の報道が引用され、白人であるマカウンを採用すれば、“黒人候補者に対する制度的差別があるというフローレスの申し立てを補強することになる”とチームが“懸念”していたと記されている。テキサンズは2月8日、当時のカリーHCの下で守備コーディネーターを務めていたラビー・スミスを次期ヘッドコーチに採用した。
テキサンズは木曜日に出した声明で「ヘッドコーチの人選は非常に綿密かつ包括的なものだった」としている。「NFLでコーチとして活躍していたこともあり、ブライアン・フローレスは最初に正式な面接を行った候補者の1人であり、最後まで候補者として残っていた。経歴が物語っているように、NFLで何年も競争心の強いコーチとして活躍しているブライアンを、われわれは人としても仕事面でも非常に尊敬している。ブライアンとはマクネア家やジェネラルマネジャーのニック・カセリオとの面談も含め、組織に対する彼のビジョンについて何度も話し合い、楽しい時間を過ごした。最終的に、われわれはラビー・スミスをヘッドコーチとして採用することを決定し、彼が今後のチームに最適な人材だと信じている。このプロセスは非常に流動的であるため、多くの優秀な候補者と一緒に時間を過ごすことができた。われわれは決断に誇りを持ち、プロセスを精力的に守っていくつもりだ」
訴訟に参加したウィルクスは、2018年にカーディナルスに“橋渡しとなるコーチ”として採用され、在籍1シーズンで“不当かつ差別的に解雇された”と主張。白人であるスティーブ・ケイムGMと比較して、自分の扱われ方に違いがあったとも述べた。ウィルクスは、飲酒および薬物の影響下での運転(DUI)で逮捕されたケイムが5週間の停職処分を受けてトレーニングキャンプとプレシーズンの大半を欠席したため、ヘッドコーチに就任した初年度が“非常に不利”だったと説明している。ウィルクスは停職中のケイムがランニングバック(RB)デビッド・ジョンソンの契約交渉に参加したとも主張した。また、訴状の中で、2018年ドラフトでカーディナルスがトレードアップしてQBジョシュ・アレンを獲得することを自分が希望していたのに対し、ケイムがQBジョシュ・ローゼンを獲得することを希望していたと明かしている。アレンがこれまでのキャリアでプロボウルに1回選出され、リーグ屈指のクオーターバックとして頭角を現している一方で、ローゼンはカーディナルスで1シーズンしか続かなかった。
ウィルクスは自分がカーディナルスでの初年度を3勝13敗という成績で終えた後に解雇された経緯と、ケイムがその1カ月後に4年の契約延長を得たことに関して、その相違点を説明した。また、現在、カーディナルスのヘッドコーチを務めている白人のクリフ・キングスベリーは就任初年度を5勝10敗1引き分けで終えた後、そこから成功するために“はるかに多くの自由”を持っていたと指摘している。
カーディナルスは木曜日に出した声明で「2018年シーズン終了後に下した決断は非常に難しいものだった。しかし、当時も申し上げたように、それらはすべて組織にとって最も有益なことであり、チームの向上のために必要なことだった。事実がそれを反映し、これらの申し立てが真実でないことを実証すると確信している」と述べた。
現在、カロライナ・パンサーズでディフェンシブアシスタントコーチを務めているウィルクスは、木曜日に出した声明で、この訴訟がリーグに人種的平等をもたらす一助となることを望むとして次のように語っている。
「フローレスコーチがこの訴訟を起こしたとき、私は自分自身のため、そしてNFLにいるすべての黒人コーチやコーチを目指す人々のために、彼とともに立ち上がる義務があると思った。この訴訟は、皆がその存在を知っていながら、あまりに多くの人が立ち向かおうとしていない問題に、さらに重要な光を当てることになった。黒人のコーチや候補者は白人のコーチや候補者とまったく同じように雇用され、雇用を維持する能力を持つべきだ」
2月に行われたスーパーボウルの記者会見の中で、NFLコミッショナーのロジャー・グッデルは、リーグが多様性やマイノリティのヘッドコーチ起用に関連して行ってきたことをすべて再評価すると話していた。NFLは3月28日、各チームに最低1名のマイノリティあるいは女性をオフェンシブアシスタントとして雇用することを義務付けたと発表しており、グッデルは先月、この新しい義務付けによってリーグがオフェンス側からより多様性のある候補者を育成する機会を得たと認めている。
記事提供:『The Associated Press(AP通信)』
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