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元ドルフィンズHCフローレスの起こした訴訟は法廷での判断へ

2023年03月02日(木) 22:14


ブライアン・フローレス【AP Photo/Wilfredo Lee】

現地1日(水)、連邦判事がNFLのコミッショナーであるロジャー・グッデルが主導する可能性のある仲裁という選択肢を拒絶し、このスポーツにおける人種的偏見の状況に辛らつな見解を述べたことで、NFLコーチのブライアン・フローレスはリーグと3つのチームに対する差別の訴えを今後も進めることができる。

マンハッタンでヴァレリー・カプローニ判事が出した裁定書により、フローレスが訴えを法廷に持ち込む道が開けると同時に、訴えに加わった他の2人の別のコーチには調停に従うことが求められている。リーグはフローレスが結んだ契約に言及し、この訴えを調停で決着しようとしていた。

フローレスは特に黒人コーチの雇用と昇進においてリーグに「人種差別がまん延している」として、1年前にリーグと3つのチームを訴えている。

カプローニ判事は決定文の中で、“長い歴史の中で黒人選手やコーチ、マネジャーたちに対する構造的な人種差別の構造が存在してきた”リーグにおけるコーチたちの人種差別の経験を描写するのはとてつもなく心が痛むことだと述べている。

判事はフローレスが訴えを起こした当時の黒人選手の割合がロースターの70%ほどに当たるのに対し、黒人のヘッドコーチはリーグの32チーム中1人しかいなかったという状況は“理解しがたい”としている。

判事はフローレスのリーグとデンバー・ブロンコス、ニューヨーク・ジャイアンツ、ヒューストン・テキサンズに対する人種差別の訴えの真価は陪審に問うことができると述べた一方、マイアミ・ドルフィンズへの訴えについては仲裁を通じて追求しなければならないという。

弁護士のダグラス・ウィドアはメールにて「構造的な差別に対する、NFLといくつかのチームを相手取ったフローレスコーチの集団訴訟が法廷で進められ、最終的には彼の仲間である陪審員の前で裁かれることを、われわれは喜んでいる」とし、こう続けた。

「裁判所がどの訴えであれそれをグッデル氏の前での仲裁とすることには落胆している。彼は明らかに偏見を持っており、こういった件の裁定を行うにはふさわしくない。基本的な公平性として、われわれは彼がこういった件を真に中立的な仲裁者の手に委任することを期待している」

リーグのスポークスマンは『NFL.com』に対し、「NFL全体の多様性と内包性が、NFLをより良い組織にしていく。われわれは完了しなければならない仕事がもっとあることを認識しており、それを進めるべく深くコミットしている。とは言え、われわれは本件における訴えの大部分はそれぞれの提訴人がサインした拘束力のある契約下で、コミッショナーによって適切に仲裁可能であるとした法廷の決定に満足している。われわれは裁判所の指示に従って速やかに仲裁を進め、残る訴えを退けようと努めていく」と話した。

フローレスはドルフィンズに解雇された後に訴えを起こしていた。フローレスが率いたドルフィンズは3年で24勝25敗を記録している。

今回訴えられた内容によれば、マイアミ・ドルフィンズのオーナーであるスティーブン・ロスが、フローレスがチームに加わった初年度に、ドラフトのトップピックを獲得できるように“わざと負ける”ことを求めて、敗北するたびに10万ドル(約1,367万円)を支払うことをフローレスに提案していたという。

さらに、ロスはリーグのタンパリングルールに反して著名なクオーターバックをリクルートするようにフローレスにプレッシャーをかけたとされている。フローレスがこれを拒絶すると、フローレスには一緒に働くのが困難な“怒れる黒人の男”のイメージが投影され、解雇まで嘲笑され続けたと訴状にはつづられている。

ドルフィンズはこの訴えが持ち上がった際に人種差別の疑いを強く否定し、「われわれのオーガナイゼーションに行きわたる多様性と内包性を誇りに思っている」と述べていた。

チームの弁護団は水曜日の時点でコメントの求めに応じていない。

訴訟を起こしたとき、フローレスは自分が愛するコーチングキャリアをリスクにさらしていることは承知しているものの、リーグの構造的な人種差別に立ち向かうことで、これからやってくる世代のためにポジティブな変化を起こすことを望んでいると話していた

判事はフローレスがミネソタ・バイキングスの新守備コーディネーター(DC)に起用されたことに触れていた。

カプローニ判事はこの訴えに加わった他のコーチたちであるスティーブ・ウィルクスとレイ・ホートンによる訴えについては、仲裁を命じている。

訴えによれば、ウィルクスは2018年にアリゾナ・カーディナルスから差別を受けたとされている。ウィルクスは“つなぎ役のコーチ”として雇用されたものの、成功するための正当なチャンスを与えられなかったという。また、ホートンは2016年1月にテネシー・タイタンズのヘッドコーチ職について見せかけだけの面談を受けたとのこと。

カプローニ判事はこの件がNFLのチームの“雇用慣例に厳しいスポットライト”を当てたと述べた。

「プロフェッショナル・フットボールの選手の大部分が黒人であるにもかかわらず、黒人コーチの割合はわずか」だとカプローニ判事は続けている。

訴訟の中でどの申し立てについては法廷ではなく仲裁で処理されるべきかについて、判事は個々の契約と、それらが適切に結ばれているかに言及した。

また、カプローニ判事は仲裁でグッデルが担う可能性のある役割が、仲裁の合意を無効にすることはないと裁定。判事は法律問題としてはグッデルがリーグの処理について公正に仲裁できないとするQBトム・ブレイディの弁護士――空気の抜けたフットボールと4試合の出場停止を巡る争いにおける――の議論を第2巡回区控訴裁判所が却下したことに触れている。

一方でカプローニ判事はグッデルを仲裁人にすることで偏見のリスクは生じるとし、フローレスが提訴した日にNFLが出した声明でこの訴えには価値がないと述べられていたことは“懸念される”とつけ加えた。

コミッショナーが仲裁人になった場合、判事はその決断を再検討する権限を自分が維持すると指摘している。


記事提供:『The Associated Press(AP通信)』


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