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元カーディナルスHCビンス・トビンが逝去、享年79

2023年07月04日(火) 13:20


ビンセント・トビン【NFL】

その昔、アリゾナ・カーディナルスにとって、ポストシーズンの試合に勝つことは幻のようなことだった。

51年にわたってプレーオフで勝利を収めることがなかったという、NFLでも有数の悪名高い連続記録を残したカーディナルス。NFL史上最長のプレーオフ未勝利記録は、1998年の運命的なシーズンに、カーディナルスがアウェーでダラス・カウボーイズに逆転勝利したことで終止符が打たれた。

その記念すべき勝利を導いたカーディナルスの元ヘッドコーチ(HC)ビンセント・トビンが現地3日(月)朝に亡くなったとチームが発表した。79歳だった。

カーディナルスのオーナーであるマイケル・ビッドウィルは声明で「ビンス・トビンを知り、愛したすべての人たち、特に奥さまのキャシーとそのご家族に謹んでお悔やみ申し上げます」と述べ、こう続けている。

「カーディナルスのヘッドコーチとして、彼の安定したリーダーシップは不変のものであり、彼の在任中にチームが享受した成功の大部分を占めていました。私たちと共に築いた彼のフットボールレガシーは、ポストシーズンに返り咲き、ダラスで行われたプレーオフゲームで逆転勝利を挙げた、スリリングな1998年シーズンに象徴されます。彼はジェイク・プラマーやパット・ティルマンをドラフト指名するなど、重要な決断を下す上で有益な役割を果たしたことでも記憶に残るでしょう」

「それだけではなく、彼は心から家族を大切にする人で、常に出会った人すべてにポジティブな影響を与える一流の人でした」

1996年から2000年にかけてカーディナルスのヘッドコーチを務めたトビンは、レギュラーシーズン成績は28勝43敗と振るわなかったものの、唯一の勝ち越しを実現させた1998年に、カーディナルスに忘れられないシーズンをもたらした。第6シードを保有していたカーディナルスは、10年で4度目のロンバルディトロフィーを狙っていたカウボーイズに勝利している。

トビン率いるカーディナルスはプロフットボールの殿堂入りが確実視されていた選手を多く抱えていたチームを相手に決してひるむことなく、カーディナルス守備陣は相手のチャンスを力強く打ち砕いた。

当時、カーディナルスはQBトロイ・エイクマンを相手にインターセプト3回(うち2回は殿堂入りしたディフェンシブバック/DBエネアス・ウィリアムズによるもの)、サック4回を決め、20対7で圧勝。また、ランニングバック(RB)エミット・スミスの成績を74ランヤード、タッチダウン0回に抑えた。さらに、キャリアで最後のプレーオフゲームに臨んでいたワイドレシーバー(WR)マイケル・アービンの成績をレシーブ4回で32ヤードにとどめている。

当時キャリア2年目だったQBジェイク・プラマーは213パスヤード、タッチダウン2回を記録。プラマー率いるカーディナルス攻撃陣はカウボーイズ守備陣の守りをしのいだ。また、RBエイドリアン・マレルはキャリー12回で95ヤードをマークすると同時に、プラマーが投げたタッチダウンパス1回も受け止めるなど、好成績を残している。

この勝ち方は、カーディナルスに移る前にシカゴ・ベアーズとインディアナポリス・コルツで守備コーディネーター(DC)を務めていたトビンにふさわしいものだったと言えよう。その感動的なプレーオフランは、翌週に行われた、第1シードを保持していたミネソタ・バイキングスとの試合で幕を閉じたものの、それから間もなくして2000年代後半に成功期を迎えたフランチャイズにとっては、待望の出来事だった。

しかし、トビンがその成功を直接的に目の当たりにすることはなかった。2000年シーズンを2勝5敗でスタートした後、トビンはカーディナルスから解雇されている。その翌年に、デトロイト・ライオンズから守備コーディネーターとして採用されたが、それは1シーズンしか続かなかった。

カーディナルスでの在任期間は成功と称賛に満ちたものではなかったとはいえ、トビンは砂漠地帯に希望を取り戻す魔法のようなシーズンを築くのに貢献した。

【RA】