チーフスRBパチェコ、49ersラン守備のほころびを突けるか
2024年02月08日(木) 17:12現地11日(日)に行われる第58回スーパーボウルでは、カンザスシティ・チーフスとサンフランシスコ・49ersの対決を前に、ほとんどのオフェンス主要人物リストはクオーターバック(QB)のパトリック・マホームズとブロック・パーディー、ランニングバック(RB)クリスチャン・マカフリー、タイトエンド(TE)トラビス・ケルシー、ワイドレシーバー(WR)のディーボ・サミュエルとブランドン・アイユーク、そしてTEジョージ・キトルといった選手から始まっている。
チーフスのRBアイゼア・パチェコの名前が出てくるまでには時間がかかる。しかし、このパワフルなランニングバックは、日曜日の試合の流れを変える可能性を秘めている。
49ersのランディフェンスは、ポストシーズンになって突如として機能不全に陥った。ディビジョナルラウンドではグリーンベイ・パッカーズのRBアーロン・ジョーンズが49ers守備の間を駆け抜けている。NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)チャンピオンシップゲームの前半では、デトロイト・ライオンズがRBのデビッド・モンゴメリーとジャミール・ギブスを使って地上戦で49ersを圧倒した。
49ersは2023年のレギュラーシーズン中、ランディフェンスが3位だった(1試合あたり89.7ランヤードを許した)。ところが、ポストシーズン2試合では159.0ランヤード(パッカーズ戦136ヤード、ライオンズ戦182ヤード)を許しており、49ers史上、プレーオフ2試合で3番目に多いランヤードを許してしまっている。
ポストシーズンでレギュラーシーズンより69.3ヤード多いランヤードを許したのは、スーパーボウルに進出したチームとしてはNFL史上最大の差だ(最低2試合)。
そこにパチェコが登場する。
パチェコは「49ersとの対戦が楽しみだ」と言い、こうつけ加えた。
「彼らは良いフロント、良いディフェンス、飛び回る選手たちをそろえている。それがすべて。こういう瞬間のために競争するのが大好きなんだ」
2年目のRBパチェコはセンセーションを巻き起こしており、2023年には935ランヤード、ランタッチダウン7回、1,179スクリメージヤードを稼いでチーフスをリードしている。今季の大部分において、この怒れるランナーであるパチェコは、パスゲームが安定した結果を出せずに苦しんでいたチーフスのオフェンスを支えてきた。
「ランニングバックの一番楽しいところは、全力で走り、タックルされた後できるだけ早く立ち上がり、セレブレーションでボールを投げて審判に怒鳴られることだ」と語るパチェコはこうつけ加えている。
「楽しい、愛さずにはいられない」
24歳のパチェコは常に激しいランナーだったが、穴を見つけるまで待つ忍耐力や、ブロッカーのセットアップを理解し、時にはディフェンダーをうまく騙して間違ったホールに侵入させるなどの部分で、大きな進歩を見せている。一見、印象的な特徴には聞こえないかもしれないが、昨シーズンは2、3ヤードのゲインだったパチェコが、この成長によって5、6ヤードを獲得できるように変わっている。
『NFL.com』によると、パチェコの今季の改善について、チーフスの攻撃コーディネーター(OC)マット・ナギーは「彼は経験を積んで、技術や基礎を理解するようになった」と述べたという。
「ギャッププレーやトラッププレーのプルガードのタイミングを把握すること。ゾーンリードで誰を見るかを知ること、そういったすべてのこと。彼にとっては物事がゆっくりと進むようになったから、より速くプレーできるようになったんだ」
パチェコは2年目に飛躍するために勉強時間を重要視し、それについて次のように語っている。
「ハードワークを理解すること、スキームを理解すること、コーチが自分に何を求めているかを知ること、すべてを横に置き、雑念を抑えること」
去年のストーリーは、ドラフト7巡目の新人がスーパーボウルへ向かうチーフスにいかに活力を与えたか、というものだった。その魅力的なランナーであるパチェコは今や、チーフスオフェンスの重要な歯車の1つとなっている。
チーフスのヘッドコーチ(HC)のアンディ・リードは、パチェコの走り方を49ersの名選手ロジャー・クレイグと比較するまでに至った。
リードHCは、パチェコを他の選手と比較できるかという質問にこう答えた。
「彼は49ersの選手だったから、このことを口にするのは抵抗があるが、ロジャー・クレイグは力強いランナーだった。彼は膝や肘、すべてを一度に使って向かってきた。彼らは同じような体格で、似たような激しい走りを見せる」
“怒りに満ちた”ような走りは大きな話題になっているが、パチェコはその走り方によって容赦なくディフェンスをすり減らし、相手を消耗させることができる。
「フィジカルなスタイルで走ることで、毎プレー立ち上がることができ、過去を振り返ることなく、次のプレーを楽しみにすることができる」と言うパチェコはこうつけくわえた。
「ディフェンスにプレッシャーをかけることで、第4クオーターで自分が必要とされたときに走り続けることができる。
その走り方はどこから来るのかという問いに、パチェコはこう応じている。
「断固とした心構えで、フィールドに出たら、すべてのプレーに全力を尽くさなければいけない。すべてを出しきることで、自分がやったことをテープで見ることができる。全力疾走していれば、テープでそれを見ることができるし、全力を出しきれば、もしミスしても、全力疾走しているのだから問題ない」
ナギーOCは、パチェコが早くもチームの若きリーダーの1人になりつつあることを指摘。
「若い選手たちがここに来て、フットボールフィールドで素晴らしい選手であるだけでなく、素晴らしいリーダーにもなっているのはいいことだ。彼らは自覚していないが、素晴らしいリーダーになりつつあり、エネルギーに満ちあふれている」
日曜日に迎えるスーパーボウルでは、パチェコはダラス・カウボーイズのデュアン・トーマス(第5回と第6回)、ミネソタ・バイキングスのチャック・フォアマン(第8回と第9回)、ダラス・カウボーイズのトニー・ドーセット(第12回と第13回)に続く、NFL史上4人目の、最初の2シーズンともスーパーボウルで先発出場したRBとなる。過去3人のうち、2試合とも勝利した選手はいない。
元7巡指名選手であるパチェコのプレーオフ通算スクリメージヤードは、543ヤード(2022年以降チーフス首位、NFL2位)だ。ロサンゼルス・レイダースのマーカス・アレン(804ヤード)、ニューオーリンズ・セインツのチャーリー・ブラウン(653ヤード)、シンシナティ・ベンガルズのジャマー・チェイス(623ヤード)、ドーセット(600ヤード)に続き、NFL史上5人目(RBとしては3人目)のポストシーズン600ヤード超えを達成するには、日曜日に57ヤード以上のスクリメージヤードを獲得する必要がある。
パチェコはプレーオフ4試合連続で、いずれも50ヤード以上のランヤードとランタッチダウン1回をマークしており、1970年以来、このようなプレーオフ連続記録を持つのは、殿堂入り選手であるニューヨーク・ジェッツのジョン・リギンズ(7試合)、デンバー・ブロンコスのテレル・デービス(7試合)、ピッツバーグ・スティーラーズのフランコ・ハリス(5試合連続2回)だけだ。
日曜日の試合では、パチェコは特にランに対して、過去2週間よりも良いパフォーマンスを必要としている49ersディフェンスと対峙する。
49ersが2023年のレギュラーシーズンで許したランヤードは、予想されるランヤードを67ヤード下回っていた(NFLで8番目に良い成績)。『Next Gen Stats(ネクスト・ジェン・スタッツ)』によると、プレーオフではNFL最下位のプラス79RYOE(想定よりも稼げた獲得ヤード/Rushing Yards over Expected)を許してしまっている。
ナギーOCは、日曜日に49ersがパチェコの攻撃に対して準備ができていることを知っており、次のようにコメントした。
「どの試合でもボールを運ぶことが重要だ。それが攻撃を有利に進めることにつながる。私たちはそれを守らなければならない。それは彼らも49ersも分かっている。このリーグでは、うまく対応する素晴らしいコーチがいる」
もし49ersがうまく対応できなければ、第58回スーパーボウルではアイゼア・パチェコの怒涛のハイライトランが見られることだろう。
【KO】