コラム

スーパーボウルウイークのスケジュールに変化

2017年02月03日(金) 14:25

【渡辺史敏】

第51回スーパーボウルの開催地、テキサス州ヒューストンではスーパーボウル当日までの1週間、通称スーパーボウルウイークに地元やその他の都市からのファンに向け、コンサートや屋外アトラクションを集めた屋外イベント“Super bowl Live”やNFLの屋内型テーマパーク“NFL Experience”といったファン向けイベントが多数、開催され、盛り上がりを演出している。その一方で国内外から集まった報道陣向けには記者会見やメディア向けイベントが連日組まれているのもまた恒例だ。今回はそのメディア向けスケジュールにいくつかの変化が見られた。

まず一番大きなものといえるのがロジャー・グッデルNFLコミッショナーの年次記者会見が現地2月1日、水曜の午後に開催されたことだ。この記者会見はNFLの戦略やトピックに関してコミッショナー自らが、報道陣からの質問に対して回答するもの。シーズンの締めくくりや来シーズンへの展望などが語られるため非常に重要な会見として広く認識されているが、これまで25年以上、金曜の午後に開催されていたのだ。それが今回、スーパーボウルウイークの2週間前に水曜午後開催になると発表されたのである。

たかが水曜に移っただけと思われるかもしれないが、意外とその影響は大きい。この会見を取材することを念頭に木曜日、または金曜日に現地入りする記者なども多かった。2週間前では対応に苦慮したメディアも多そうである。変更の理由だが、コミッショナーがマンオブザイヤーの最終候補者と共にファンからの質問に答える“ファンフォーラム”という新たなイベントを金曜日に開催するためと説明されているが、釈然としないものが残ったのも事実だ。

そのコミッショナー記者会見だが、来シーズン、レイダースがメキシコでペイトリオッツと対戦することが発表された。

その他にもオーナーシップや家庭内暴力などの問題から子供向けプログラムである“Play 60”に至るまで、多岐に渡る質問が出たが、コミッショナーはそつなくそれらに回答していた印象だ。

スケジュールの2つめの変更点はAFCチャンピオン、ペイトリオッツの定例記者会見が夕方に開催されたことである。これまで出場チームの選手やコーチを取材できる記者会見は基本的に、火曜日から木曜日まで1チーム目が朝8時頃、2チーム目が続いて午前10時頃に開催されてきた。朝のチームミーティングの前後、練習前に行われていたのである。今回もファルコンズは朝一番の時間帯に行われた。だが、ペイトリオッツの水曜日、木曜日の記者会見は午後4時からの開催となっているのだ。これは練習を終えてからということだ。

メディア嫌いで有名だったシーホークスの元ランニングバック(RB)マーション・リンチ氏ではないが、特にスター選手の場合、メディア対応はそれなりにストレスとなる。ステイシー・ジェームズ副社長によれば、今回NFLから従来の時間帯と午後4時という選択肢が初めて提示され、ヘッドコーチのビル・ベリチックが日中にミーティングや練習が分断されるよりも良いと判断し、午後4時を選んだということだった。こんなところにもスーパーボウルへの準備に対する決断がなされ、変更に至ったのである。

さらにメディアにとって悩ましい変更となりそうなのが、コミッショナーの会見が金曜日から水曜日に移されただけでなく、やはり金曜午前に開催されてきたヘッドコーチの記者会見がなくなってしまったことだ。この記者会見はスーパーボウル前の一般メディアに向けた最後会見となるもので、両ヘッドコーチがメディアセンターのステージで質疑応答するものだった。スーツ着用が基本で、ビンス・ロンバルディ・トロフィーも置かれていた。会見時にトロフィーの前でほほえむヘッドコーチの写真を見た方も多いのではないだろうか。

その恒例の記者会見が廃止されてしまったのである。このため、我々、一般のメディアは金曜日、土曜日とチームを直接取材できなくなってしまっている。ニュースを配信する側としては頭が痛い状況というしかない。

メディア向けスケジュールという目立たないところでも変化を続けているところが、スーパーボウルがアメリカ最大のスポーツイベントとなった所以ともいえるかもしれない。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。