新スタジアム建設やリノベーション実施における注目点
2017年09月10日(日) 13:45![](https://nfljapan.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wp-content/uploads/2017/09/09154644/AP_182888532644_01.jpg)
いよいよ開幕した2017年シーズン。今季は新設のスタジアムに移ったファルコンズとロサンゼルスに移転したチャージャーズが新たな本拠地を構える他、いくつかのチームではホームとするスタジアムでリノベーションを実施している。今回はそうしたスタジアムの特徴を紹介してみよう。
ファルコンズ:メルセデス・ベンツ・スタジアム
16億ドル(約1,760億円)の建設費を投じてアトランタのダウンタウンに建設されたのがメルセデス・ベンツ・スタジアムだ。幾何学的な形状の外観が特徴のドーム型スタジアムである。収容人数は7万1,000人だが、再来年に開催予定の第53回スーパーボウルの際には8万3,000人にまで一時的に拡大される予定だ。
スタジアムの屋根の中央部は開閉式となっており、カメラのシャッターのように8分割された屋根がスライドして動くのも大きな特徴の一つとなっている。ただし、建設が約5カ月遅れたこともあり、閉じられたままでの開幕となった。ファルコンズと米プロサッカーリーグMLSのアトランタ・ユナイテッドの親会社『AB Group(ABグループ)』のCEOによればシーズン中に開いた状態で試合が行えるようになる見込みだという。
スタジアムの内装で最大の特徴となっているのはリング状に360度画面となっている巨大ビデオ画面“ヘイローボード”である。その大きさは6万2,000平方フィート(約5,760平方メートル)にも及ぶ。しかも巨大ビデオ画面はこれだけではない。スタジアム内の四隅のうち東側をのぞく3カ所には高さ101フィート(約31m)幅71フィート(約22m)という柱形の大スクリーン“メガコラム”が設置されているのだ。ちなみに東側の隅は透明の外壁を通してダウンタウンの街並みが見えるように配慮されたとのこと。
同スタジアムの特徴はハード面だけではない。ファンの立場に立った価格設定という“ファン・ファースト・メニュー・プライシング”を売り言葉に、場内で販売される飲食物の価格がNFL最低クラスに設定されているのだ。ホットドックが2ドル、生ビールのバドライトが5ドルといった具合である。飲食物の価格を高くして収益を拡大しようとするチームも多いだけに画期的といえるだろう。
チャージャーズ:スタブハブ・センター
今シーズンからロサンゼルスに移転したチャージャーズはイングルウッドに建築中の新スタジアム、ロサンゼルス・スタジアム・アット・ハリウッド・パークが完成するまでは郊外のカーソンに建つスタブハブ・センターを仮の本拠地として使用することとなった。
スタブハブ・センターは2003年にMLSロサンゼルス・ギャラクシーの本拠としてサッカー専用スタジアムとして設計・建設された比較的新しいスタジアムである。サッカー専用スタジアムがNFLに転用される初のケースとなった。
ただ、チャージャーズのチーム運営にとってスタブハブ・センターには大きな懸念がある。それは収容人数が2万7,000人にとどまっている点など、NFLとしては設備が貧弱な部分が多いことだ。
チャージャーズは座席を3万人規模に増やす計画で、さらにロッカールーム、プレスボックスの増築などに取り組んでいるが、それでも見劣りすることは否めない。この点を新スタジアムが完成する予定の2020年までどう耐えるかがチャージャーズの大きな課題となりそうである。
パンサーズ:バンク・オブ・アメリカ・スタジアム
1996年完成のスタジアムでは5年間にわたるリノベージョンが展開されている。このオフには4,700万ドル(約51億7,000万円)規模のアップグレードが実施された。クラブレベルの内装がより豪華で便利になった他、1階部分の飲食スタンドの改装が現在も行われている。
スティーラーズ:ハインツ・フィールド
スタジアム南側でリノベーションが施された。300万ドル(約3億3,000万円)をかけて、大型スクリーンが5,000平方フィート(約465平方メートル)のものに新調された他、5つのスイートボックスと1,500のクラブシートを含む2,700の座席が追加されている。
レイブンズ:M&Tバンク・スタジアム
以前より2倍大きい4Kビデオボードが両エンドゾーン側に設置された他、スタンドの縁にはLEDリボンボードが新調された。それらのコストは3,000万ドル(約33億円)とのことである。これは3年1億2,000万ドル(約132億円)のリノベーション計画の1年目にあたる。
ライオンズ:フォード・フィールド
1億ドル(約110億円)をかけたリノベーションで、場内に複数のレストランやビアホールが新設された他、スイートボックスが改装された。
ドルフィンズ:ハードロック・スタジアム
過去5年間6億ドル(約660億円)をかけて、屋根の設置や大型スクリーンの新調など大々的なスタジアムの改装が行われてきた。このオフにはスイートボックスが新調されただけでなく、過剰と判断されたスイートボックスが25減らされている。こうしたこともあって以前7万5,000人収容だったが、現在は6万5,000人となっている。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。