コラム

2017年シーズン開幕! NFC展望

2017年09月07日(木) 12:27

ニューヨーク・ジャイアンツ対ワシントン・レッドスキンズのスクリメージライン【Evan Pinkus via AP】

NFCは混戦模様だ。裏を返せばどのチームにもチャンスがある。

東地区はカウボーイズ中心と考えられたが、RBエゼキエル・エリオットの6試合の出場停止処分でその状況が変わってきた。異議申し立てが認めらなかったため、エリオットは開幕週こそ出場できるものの、その後の6試合は欠場を余儀なくされ、第9週からの本格的な復帰となる。QBダック・プレスコットとともにオフェンスの柱だっただけにそのダメージは大きい。幸いにNFLトップとも評されるOLは健在で、これがチームの支えだ。

注目したいのがジャイアンツだ。昨年もプレーオフに出場したが、WRブランドン・マーシャルと新人TEエバン・イングラムが加わったことでQBイーライ・マニングのターゲットが増え、必然的にオデル・ベッカムへのマークが軽減される。また、昨年レッドゾーンディフェンスでリーグ1位となった守備は先発11人中9人が残留した。さらにオリビエ・バーノン、ジャノリス・ジェンキンズらが加わり、より強力になった。

レッドスキンズはWRデション・ジャクソン、ピエール・ガーソーンを失った中でQBカーク・カズンズが思い通りのパスオフェンスを展開できるかが鍵。イーグルスはWRアルション・ジェフリー、トーリー・スミス、RBルギャレット・ブラントとオフェンスで大型補強を施した。2年目のQBカーソン・ウェンツの成長を助ける目的であることは言うまでもない。

4勝6敗から逆転で北地区優勝を果たし、カンファレンス決勝まで駒を進めたパッカーズは昨季終盤の勢いを持続すれば今季もNFCトップクラスの実力を発揮するだろう。QBアーロン・ロジャースとWRジョーディ・ネルソンのコンビネーションは今年もタッチダウン量産が期待できる。タイ・モンゴメリーは今季からRBに専念。しかし、彼のレシーブ能力はパスオフェンスの大きな武器になる。不安材料はパスディフェンスだ。昨年は故障者続出の影響があったとはいえ、空中戦への守備は不調だった。その改善は不可欠だ。

ライオンズは昨季終盤の失速で地区優勝を逃した。その修正ができていれば再び優勝争いを演じられるだろう。オフェンスは豊富なRB陣に注目だ。アミア・アブダラー、テオ・リディックら先発クラスが揃う。契約延長を終えたばかりのQBマッシュー・スタッフォード率いるパスオフェンスとのバランスを生み出したい。

バイキングスは今季もサム・ブラッドフォードを先発QBとして起用する。昨年はパス成功率71.6%でNFL新記録を樹立したが、ショートパス中心でタッチダウンにはなかなか結びつかなかった。被サックが多かった昨年を反省し、今季はOLを整備して臨む。ベアーズはドラフト1巡(全体2番目)指名のミッチェル・トゥルービスキーがいつ登場するか。チーム再建途上にあり、優勝争いは難しい

南地区は激しい競争が予想される。ファルコンズは攻撃コーディネーターがシャナハンからスティーブ・サーキシャンに代わるが、基本スキームは変わらないはずだ。QBマット・ライアン、WRフリオ・ジョーンズ、RBデボンテ・フリーマンの“トリプレッツ”が揃う限り昨年の威力は維持できる。若い選手の多いディフェンスは更なる成長に期待したい。

パンサーズは昨年こそ負け越したものの、攻守にタレントが揃っており、復活すればこの地区の優勝候補のひとつだ。肩の手術を受けたQBキャム・ニュートン、脳震盪で昨季終盤を棒に振ったラインバッカー(LB)ルーク・キークリーの復活が最低条件である。

進境著しいのがバッカニアーズで、今季はプレーオフのみならず地区優勝を狙ってくる。3年目のQBジェイミス・ウィンストンは過去2年でいずれも4,000ヤードを超えるパス獲得距離をマークし、パサーとして着実な成長を遂げる。そのターゲットとして今季はWRでショーン・ジャクソンが加わった。プレシーズンでもコンビネーションがよく、RBダグ・マーティがケガなく過ごせればオフェンスはNFLトップクラスのポテンシャルを持つ。セインツはベテランQBドリュー・ブリーズが好調だが、例年課題となるディフェンスは相変わらず不安材料だ。

西地区はシーホークスとカーディナルスが優勝を争うとみられるが、いずれも主力選手の高齢化が進み、かつてのような勢いはない。シーホークスではRBエディ・レイシーが加わった。毎年のように体重オーバーに苦しむレイシーだが、コンディションが良ければパスキャッチでも貢献できるのでリンチとは全く違うスタイルのプレーが可能だ。カーディナルスはQBカーソン・パーマーとWRライアン・フィッツジェラルドが今季限りでユニフォームを脱ぐ可能性がある。それだけに今年こそスーパーボウルをという思いが強い。

ラムズはQBジャレッド・ゴフをさらに育成するシーズンだ。一方で守備コーディネーターにウェイド・フィリップスが就任した。従来の4-3守備からフィリップスの3-4主体のものに転換を求められるが、実績あるコーディネーターだけにどうディフェンスが変わるか楽しみだ。ただし、DTアーロン・ドナルドのホールドアウトはその期待に暗い影を落とす。

49ersは一からのチームを作り直しだ。オフェンス畑のシャナハンが新HCに就任したのと裏腹にGMジョン・リンチはディフェンス中心の補強を行った。まずは攻守で中心となる選手を見いだし、それを核にスキームを構成していくことが必要だろう。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。