コラム

2017年シーズン開幕! AFC展望

2017年09月07日(木) 12:26

ニューイングランド・ペイトリオッツのトム・ブレイディ【AP Photo/Mary Schwalm】

ペイトリオッツ、スティーラーズ、レイダーズが3強としてAFCの覇権を争う展開になりそうだ。

東地区はペイトリオッツの独壇場だ。QBライアン・タネヒルが膝の故障で今季絶望となったことで、昨季8年ぶりにプレーオフに出場したドルフィンズがペイトリオッツの対抗候補から脱落した。ランニングバック(RB)ジェイ・アジャイのランは好調で、ディフェンシブタックル(DT)ダムコング・スー、DEキャメロン・ウェイクのいるディフェンスは堅いが、現役復帰したQBジェイ・カトラーがよほど好調で乗り切らない限り昨年並みの成績を収めるのは難しい。

ビルズとジェッツは残念ながらチーム再建途上だ。ビルズはRBルショーン・マッコイ頼みだが、サミー・ワトキンスの放出でレシーバーの人材が薄くなったのが痛い。

北地区は地区優勝のスティーラーズをレイブンズとベンガルズが追う展開。スティーラーズはQBベン・ロスリスバーガー、WRアントニオ・ブラウン、RBレベオン・ベルの“ビッグ3”に加えてWRマータビアス・ブライアントが1年の出場停止処分を終えて復帰する。オフェンスはスーパーボウルを狙えるレベルだ。あとはアグレッシブさを取り戻したディフェンスがそれにどう応えるか。AFC決勝でブレイディに露呈されたカバレッジの弱点を確実に克服することが条件だ。

レイブンズは昨季終盤まで地区制覇に望みを繋いだが、自慢のディフェンスが崩れてしまった。その反省からディフェンスの強化に力を注いできた。それが功を奏すればスティーラーズを脅かす存在になる。オフェンスではWRジェレミー・マックリンの加入が注目されるが、QBジョー・フラッコが背中のケガでプレシーズンを全休したのが心配される。

ベンガルズは昨年負け越して連続プレーオフ出場が5年で途絶えた。今季はオフェンスライン(OL)で人材の流出が多く、復活への大きな障害となりそうだ。ブラウンズは新人QBデション・カイザーを先発起用。将来のエース候補として実戦で育てる方針だ。

過去2年連続で南地区を制覇したテキサンズだが、今年もまた新たな開幕QBを起用しなければならない苦しいスタートだ。ドラフト1巡(全体12番目)で指名したQBデション・ワトソンはシーズン後半からの投入か。

そのテキサンズに代わって新王者となりそうなのがタイタンズだ。QBマーカス・マリオタが順調に成長している。全体5位指名のWRコーリー・デイビスを指名するとともにベテランのエリック・デッカーを獲得するなど、マリオタを活躍させるためのオフェンス構築が進む。昨季も9勝7敗でテキサンズと同率だった。ディビジョン内対戦成績(2勝4敗)の差で地区優勝は逃したが、地力はついてきている。

コルツはQBアンドリュー・ラックの見込みが立たないのが痛手。ジャガーズは大型補強を今季も続けているものの、QBブレイク・ボートルズがプレシーズンで不調だったため不安が残る。

AFCで最も激戦区となりそうなのが西地区だ。昨年優勝のチーフスと2位のレイダーズが今年も地区優勝を争う。チーフスはディフェンス主導でオフェンスがミスなく試合をマネジメントするという従来の戦法は変わらない。ただ、戦力の充実しているレイダーズに対抗するにはオフェンスのプレーメーカーが必要か。

昨年大躍進を遂げたレイダーズは今季も期待できる。長年かけてドラフトとフリーエージェント(FA)で作り上げてきたOLは安定感があり、現役復帰したRBマーション・リンチの存在も楽しみだ。ディフェンスはDEカリル・マックが大暴れしそう。攻守のバランスではレイダーズはリーグトップクラスだ。

一昨年のリーグ王者ブロンコスもディフェンス頼みだ。ただし、DEデマーカス・ウェアが引退し、セーフティ(S)T.J.ウォードを開幕直前にリリースしたため、新戦力の台頭は不可欠だろう。ウォードの退団でコーナーバック(CB)アキブ・タリブ、クリス・ハリスJr.らとともに形成した“No Fly Zone”にどう影響が出るか。

ロサンゼルスに本拠地を移したチャージャーズはキャパシティわずか3万人のスタッブハブセンターでプレーする。新規ファン獲得のためにも好成績を残したい。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。