コラム

イーグルスファンが審判に抗議の請願運動

2017年10月22日(日) 12:51


フィラデルフィア・イーグルス【AP Photo/Bob Leverone】

自分の応援するチームに不利な判定を出され、審判に対して声を上げてしまった人も多いのではないだろうか。今、多くのイーグルスファンがNFLのとあるレフリーに対し、批判の声だけでなく、行動に出て注目されている。

対象にされている審判とは現地12日(木)に行われたサーズデーナイトフットボール(TNF)でレフェリーを務めたピート・モレリ。モレリは1997年にバックジャッジとしてNFLの審判チームに加わったベテラン審判の一人だ。その後、2003年からレフェリーを務めるようになった。先月にはNFLが初めてフルタイムで雇用した24人の審判の1人でもある。それだけ信頼されている審判なのだ。

にもかかわらず、請願・署名サイト『change.org』に「ピート・モレリはフィラデルフィア・イーグルス戦を審判することを禁止すべき」というロジャー・グッデルNFLコミッショナー宛の請願が掲載され、18日時点で6万7,000人を越える署名が集まっているのである。さらに「解雇されるべき」、「NFLとNFL審判協会が調査する必要がある」といった請願まで掲載されている状況だ。

13日に掲載された冒頭の請願を書いたのはフィラデルフィアではなくアーカンソー州リトルロックに住むというウィル・フィルブリックなる人物。請願の中でモレリについて「フィラデルフィア・イーグルスに対して明確にかつ統計的に明らかな偏見を持っている」と記している。

ではなぜこんなことになったのか、発端はやはり12日のTNFだった。共に4勝1敗のイーグルスとパンサーズの対戦という好カードだったが、この試合でイーグルスはモレリ率いる審判団から10回126ヤードものペナルティを取られているのである。対してパンサーズは1回1ヤードにとどまった。『NBC Sports』によれば一方のチームがペナルティを120ヤード以上取られ、その相手チームが10ヤード以下だったのは史上初とのことである。このためイーグルスは28対23で勝利したものの、イーグルスのファンはモレリに怒ることになったのだ。

ただ、怒りの理由はこの一戦だけではないようだ。請願でフィルブリックはモレリが審判した2013年以降の過去4回のイーグルス戦で、イーグルスに40回396ヤードのペナルティを出したのに対し、相手チームは8回74ヤードだけだったと指摘している。「これは受け入れがたいディスアドバンテージをフィラデルフィア・イーグルスに与えている」という主張なのだ。

興味深いのはこれら4戦全てがイーグルスの本拠地センチュリーリンク・フィールドでの試合だった点だ。モレリが裁いた最後のイーグルスのロードゲームは奇しくもパンサーズ戦だったが、この試合でイーグルスに与えた罰退は30ヤードで、パンサーズは101ヤードだった。必ずしもイーグルスへのバイアスとは言えない数字もあるのである。

こうしたモレリの判定に対し、イーグルスのセーフティ(S)マルコム・ジェンキンスは「微妙なプレーが多く、良い判定ではないのもあった。自分たちにとって逆境は新しいものじゃない。気にせず、黙ってプレーを続けるだけだ」と冷静にコメントしている。

膨大な署名が集まったとしても不正の証拠やそれにつながるものが出されることが無い限りコミッショナーやリーグが動くことはないだろう。しかし今回の行動が話題になったことによってモレリが今後イーグルスのファンから目の敵にされるのは間違いなさそうだ。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。