コラム

ついにロジャースも戦列離脱、NFCの戦力分布図はどう変わる?

2017年10月21日(土) 13:50

グリーンベイ・パッカーズのアーロン・ロジャース【AP Photo/David Goldman】

先週のコラムで主力選手に故障者が続出する状況を取り上げたばかりだが、シーズン第6週にはパッカーズのクオーターバック(QB)アーロン・ロジャースが鎖骨を折るというアクシデントに見舞われた。バイキングス戦でラインバッカー(LB)アンソニー・バーからのタックルを受けたロジャースはそのまま右肩からグラウンドにたたきつけられて負傷、手術を受けた。

ロジャースは2013年にも鎖骨骨折で長期の戦列離脱を余儀なくされている。この際に欠場したのは7試合だ。これを参考にすればロジャースの復帰は第14週前後ということになるが、アメリカの報道ではほぼ今季絶望とする見方が強い。パッカーズはバックアップのブレット・ハントリーを先発に昇格させ、プラクティススクワッドからジョー・キャラハンをロースター登録した。ヘッドコーチ(HC)のマイク・マッカーシーはフリーエージェント(FA)になって以降、まだどことも契約していないコリン・キャパニックの獲得は明確に否定している。

ハントリーもキャラハンもレギュラーシーズンでの先発経験はなく、パッカーズの戦力ダウンは必至だ。パッカーズのオフェンスはピンポイントで決まるロジャースのパスを土台に組み立てられる。ハントリーやキャラハンに歴代でも屈指のコントロールを持つロジャースと同等の能力を求めるのは現実的ではない。ちなみに2013年のロジャース不在の間はマット・フリンとスコット・トルジーンが先発出場して2勝4敗1分だった。

メディアはベテランQBの獲得の可能性も示唆するが、テッド・トンプソンはFAでの補強には消極的なGMで、ましてやシステム習得に時間のかかるQBはチーム外に頼るとは考えにくい。

パッカーズは現在4勝2敗でバイキングスと並ぶNFC北地区首位だが、このまま並走するのは難しく、代わって3勝3敗のライオンズが絡んでくるだろう。カンファレンス全体を見渡せば好調のパンサーズを破ってNFL最高勝率(5勝1敗)に並んだイーグルスの充実ぶりが目立つ。QBカーソン・ウェンツは着実に成長を遂げており、安定感もある。

昨年NFC優勝のファルコンズは2連敗と予想外の足踏みをしている。パンサーズもイーグルスに負けたとはいえ、ここで大きく崩れること思われる。急速に勢いをつけてきたのがセインツだ。強力な得点力で開幕2連敗の後の3連勝。第7週はロジャースのいないパッカーズとの試合で、十分に勝機はある。

NFC西地区の首位をいくラムズ(4勝2敗)は好調なオフェンスとは裏腹に失点の多いディフェンスが心配される。シーホークスとカーディナルス(ともに3勝3敗)も本来のポテンシャルを発揮しつつあり、トップの座は安泰ではない。

シーズンも中盤に入ると開幕当初の勢いで好調だったチームに陰りが見えてくる。一方で、パッカーズがプレイオフ戦線から一歩後退する可能性が高く、その分どこかのチームにチャンスがめぐってくる。そのチャンスをつかむことのできるチームはどこか。中盤の注目点の一つだ。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。