今回も多大な影響力を示したスーパーボウル
2018年02月11日(日) 07:30イーグルスが41対33でペイトリオッツを破り、初優勝を果たした第52回スーパーボウル。サンデーナイトフットボールでお馴染みの『NBC』が行った全米テレビ中継の平均視聴者数が1億0,340万人だったことが分かった。これは調査会社『ニールセン』が発表したもの。
視聴者数としては2009年の第43回以来最低となった。ただこれは、アメリカテレビ史における視聴者数ランキングでは10位で、1億1,440万人でトップの第49回をはじめ、上位8位を第44回以降のスーパーボウル中継が占めている。ちなみに第9位は1983年に放送された伝説的ドラマ『M.A.S.H.』の最終回で1億0,600万人だった。
いずれにせよ今回の中継が2018年で最も視聴された番組になるのはほぼ間違いない。現地1月21日に行われたAFCチャンピオンシップの中継は4,410万人が視聴しており、スーパーボウルの半分にも満たないが、それでも2018年の2位になるだろうと見られている。それほどにスーパーボウルとNFLは頭抜けた存在であり続けているのだ。
またイーグルスとペイトリオッツは2005年1月に行われた第39回スーパーボウルでも対戦したが、この時の視聴者数は8,610万人で今回はその20%増となっている。さらに今回の世帯視聴率は43.1%、占有率68%で、第39回のそれぞれ41.1%と62%を上回った。
時間帯別の視聴者数ではキックオフ時の8,940万人から徐々に増加し、ピークは第4クオーターの米東部時間午後10時から10時15分に1億1,230万人を記録している。接戦が続いただけに最後まで視聴者が釘付けになっていたようだ。
今回のスーパーボウルはテレビだけではなく、NFLやNBCのウェブサイト、アプリなどを通じてライブストリーミング配信も実施された。動画配信サービス『Hulu』や家庭用ゲーム機プレイステーションを通じたストリーミングでは受信できなくなるトラブルが生じたりしたものの、毎分の平均視聴者数は202万人に達し、スーパーボウル史上最多記録を更新している。ピーク時には310万人が視聴したということだ。
その総配信時間は6億3,370分で、これは前回NBCが放送を担当した2015年と比べ185%も増加している。さらに視聴に使用されたデバイスは610万台で112%増だった。
また、スーパーボウルのテレビ中継で試合と共に毎回大きな話題となるのがCMだ。視聴率の高さを受け、さまざまな企業が力を入れて制作した新作CMを放送するのが恒例になっており、俗に“スーパーボウルCM”と呼ばれる。今回も全米枠、ローカル枠で約100ものCMが放送された。
そんな中、全米紙『USA Today(USAトゥデー)』が一般ユーザーの投票により決定するCMランキング“Adメーター”で1位に選出されたのが『Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)』による“Alexa Loses Her Voice(声を失ったアレクサ)”である。これは日本でも発売されているスマートスピーカー“Amazon Echo(アマゾン・エコー)”で使用されているAI(エー・アイ)のアレクサを扱ったもの。ある日、アレクサが声を失ってしまい、その対策としてとられたのが――という構成になっている。コメディアンで女優のレベル・ウィルソンや名優アンソニー・ホプキンスが出演する同CMは1月31日にオンライン公開されると瞬く間に人気となり、『YouTube(ユーチューブ)』では試合開始前の段階で約1,800万回もの視聴があり、放送後もその人気は衰えを見せず、7日の段階で3,900万回を突破している。
わずかの差で2位になったのはNFLによる“Touchdown Celebrations to Come”というCMだ。これは練習場でジャイアンツのクオーターバック、イーライ・マニングとワイドレシーバーのオデル・ベッカムがタッチダウンセレブレーションのダンスを練習するという内容。マジメかつユーモラスに踊る姿が笑いを誘う作品となっており、必見だ。
3位はビール・ブランド『Budweiser(バドワイザー)』の“Stand By You”というCMで、ハリケーンなどの災害発生時にビールの生産ラインを止めて生産・寄付される飲料水缶を紹介したもの。社会貢献活動を知らせるCMである。
こうしたCMが話題になる一方で、意外なことから一挙にスター扱いされることとなった人物も出た。ジャスティン・ティンバーレイクが出演したハーフタイムショー終盤、スタンドに上がったティンバーレイクが歌うすぐ横にいた少年だ。少年は当初、ティンバーレイクに肩を組まれ、一緒に歌っていたものの、途中でティンバーレイクから目を離し、持っているスマートフォンをイジりだし、最後は一緒に自撮りをしたのである。
このためツイッターでは「ジャスティン・ティンバーレイクって誰? って打ってるんだ」とか「ティンバーレイクを知らないんだろう」といった投稿が飛び交うことになったのである。こうした話題もあって試合翌日にはABCのモーニングショー“グッドモーニング・アメリカ”などのテレビ番組が少年を出演させるまでになった。
少年はマサチューセッツ州に住むライアン・マッキーナ君、13歳。ティンバーレイクを大好きな歌手だとし、スマートフォンをいじったのは最初自撮りをしようとしたものの、動かなくなったので再起動したのだとか。ティンバーレイクとはしゃべれなかったものの、自撮りには成功したということだ。騒ぎについてはクレイジーと話す一方、一晩でフォロワーが8,000人も増えたそうである。
スーパーボウルは社会的影響力がこれほどあるイベントなのだ。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。