コラム

公開直前、2つのドキュメンタリーシリーズ

2019年07月15日(月) 11:11


“Hard Knocks(ハードノックス)”の撮影クルー【AP Photo/David Richard】

トレーニングキャンプの開始が近づく中、NFLのチームを追ったドキュメンタリーシリーズの配信と放送がまもなく始まる。

7月19日にインターネットサービス大手の『Amazon(アマゾン)』が有料サービスの『Amazon Prime Video(Amazonプライム・ビデオ)』で配信をスタートさせるのが、シーズンを通して1つのチームに密着、撮影したシリーズ“All or Nothing(オール・オア・ナッシング)”だ。シーズン4となる今回の題材となったのはパンサーズである。これまで2015年のカーディナルス、2016年のラムズ、2017年のカウボーイズといずれもNFCのチームが扱われてきた。

昨シーズンのパンサーズは第9週まで6勝2敗と好スタートを切りながら、その後7連敗し、7勝9敗と負け越している。特に最大のスター、クオーターバック(QB)キャム・ニュートンは当初好調だったが、右肩を負傷し、そのパフォーマンスの低下がチームの不調の原因ともなった。今年1月には手術も受けている。そうしたことの裏側にも番組は迫ってくれることだろう。

その一方でパンサーズがツイッターで公開した予告動画では、チームの面々がミーティングルームで談笑し、2年目で昨シーズン1,098ヤードを走りオールプロに発選出されたランニングバック(RB)クリスチャン・マカフリーがアメリカンジョークを飛ばす様子が映し出されてもいる。

全8回が予定されており、同シリーズはこれまで日本のAmazonプライム・ビデオでも字幕付きで公開されているため、今シーズンも同様に配信されると思われる。

もう一つのドキュメンタリーシリーズは有料娯楽チャンネル『HBO』が放送するトレーニングキャンプを追った“Hard Knocks(ハードノックス)”だ。2001年のレイブンズに始まり、昨年のブラウンズまで13のチームが登場してきた人気のシリーズである。今回14番目のチームとして登場するのはレイダースだ。

レイダースもフランチャイズをオークランドからラスベガスに移転することが決まっている一方で、ロサンゼルスからオークランドに戻って25周年、2年目の熱血漢ヘッドコーチ、ジョン・グルーデン、新加入のワイドレシーバー(WR)アントニオ・ブラウンとQBデレック・カーのコンビなど話題に事欠かないチームである。

番組は8月6日から計5回のエピソードが放送予定となっている。HBOは声明で「8月、選手とコーチたちの日常生活とルーチンに焦点を当てたシネマ鑑賞ショーで熱くなります」とコメントしている。またマーク・デービスオーナーも「誰もがレイダーになりたい。どうすればできるのかが分かるだろう」と語ったということだ。

2つのシリーズに共通しているのは、配信はAmazon、放送はHBOだが、どちらも共同制作に映像制作・管理会社『NFL Films(NFLフィルムズ)』が参加していることだ。同社はNFL傘下にあり、長年の実績があるだけでなく、各チームからの信頼も厚い。それゆえ、通常は入室が許可されない選手やコーチのミーティングルームやトレーニングルーム、リビングルーム、練習場などへのアクセスが可能となっているのである。

レイダースの“Hard Knocks”に関しては30人のNFL Filmsクルーがキャンプ地であるカリフォルニア州ナパバレーに張り付き、計1,750時間以上に渡って撮影を行うということだ。HBOのピーター・ネルソン副社長は「説得力があり、魅力的なトレーニングキャンプであることを知らしめる点で、HBOとNFL Filmsが夏をレイダースと過ごすことのドアを開き、許可してくれたこの名高いフランチャイズにとても感謝している」と語っている。

そしてもう一つ、2つのシリーズに共通している見どころは、楽しさだけでなく、プロとしての厳しさが随所に登場する点だ。戦力外や期待外れとして解雇される選手やコーチの場面も登場するのである。例えば、2012年にドルフィンズを扱った“Hard Knocks”ではかつてはスター選手だったWRチャド・ジョンソンが解雇を言い渡されるシーンがあり、話題となった。また“All or Nothing”ではラムズのヘッドコーチだったジェフ・フィッシャーがコーチやスタッフに「クビになった」と告げる場面が登場し、衝撃を与えてもいる。

果たして今シーズンはどんな事が起こり、どんな場面が登場するか、ぜひ視聴してみて欲しい。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。