コラム

バーチャルテールゲートにLEDスクリーン、いろいろ楽しめる第55回スーパーボウル

2021年02月01日(月) 05:06

レイモンド・ジェームス・スタジアム【AP Photo/Chris O'Meara】

いよいよ間近に迫ってきた第55回スーパーボウルはバッカニアーズとチーフスが激突する試合も楽しみだが、試合中継以外にもいろいろな楽しみ方がある。今年ならではというものも多い。

まず紹介したいのは試合開始前にNFLと人気のソーシャルメディア『TikTok(ティックトック)』がライブストリーミングを行うバーチャルテールゲートパーティーだ。『NFL TikTok Tailgate』と名付けられたこのイベントはアメリカ東部時間2月7日(日)14時30分【日本時間8日(月)午前4時30分、以下同】から2時間にわたって試合会場のレイモンドジェームス・スタジアムのイベント会場で開催予定となっている。招待されたワクチン接種済みの医療従事者7,500人を前に歌手のマイリー・サイラスが主演を務める。他にもNFLからの特別ゲストやTikTokのクリエイターなどが出演し、ミュージックパフォーマンスの他、クッキングコーナーなどが設けられる予定だという。

NFLが主催するスーパーボウルのテールゲートパーティーは例年、試合会場に隣接した会場で開催されてきたが、入場できるのは試合のチケットだけでなく、招待状が必要だった。またアメリカのテレビでもごく一部だけが中継されていた。そんな一般のファンではなかなか観られなかったイベントを今回はインターネットを通じて観ることができるのである。

試合直前に配信されるテールゲートイベントはこれだけではない。元NBAのスター選手、シャキール・オニール氏が主催する『シャックボウル』も2月7日15時(8日5時)から3時間開催予定だ。フロリダ州タンパのスタジオに特設されるシャックボウル・スタジアムからライブストリーミングが配信される。

番組にはカウボーイズのランニングバック(RB)エゼキエル・エリオットや元ブロンコスのクオーターバック(QB)ティム・ティーボー、ミュージシャンのネリー、WWEのドリュー・マッキンタイアなどが出演。テレル・オーウェンス氏とチャド・“オチョシンコ”・ジョンソン氏という元名ワイドレシーバー・コンビがホストを務め、2チームに分かれてドッジボールやダンス、ホットウイングの早食いなどを競っていくという。ラップグループ、ミーゴスやDJディーゼルなどが出演するハーフタイムショーまで予定されている。

このシャックボウルは専用サイト『shaqbowl.com』の他、Facebook、Twitch、YouTube、Twitter、TikTokなど複数のプラットフォームで配信されるとのことだ。

一方、試合会場のレイモンド・ジェームス・スタジアムで今回注目してもらいたいのがスタンドの前方部分である。今シーズン、試合中継を観てこの部分が布のタープで覆われていたことに気づいた人も多いのではないだろうか。これは新型コロナウイルス対策として選手たちと観客を隔離する目的と、収入減となるチームへの救済策として新たな広告スペースとして導入されたものである。7列目まで覆わなければならなかった。

今回のスーパーボウルでも同様の措置がとられるのが、タープではなくLEDメッセージボードが設置されることになっている。主な目的はやはり広告。8分から12分周期で表示が変わる予定で6前後のブランドが予定されている。150万ドルから200万ドルという価格でNFLが売り込みを行っている模様だ。

ただ、広告だけでなく、ハーフタイムショーなどで観客によるライトなどに代わる形でスクリーンとして使用されるのは必至だろう。どんな演出が行われるかにも注目したい。

最後に紹介したいのはスーパーボウルCMである。毎年視聴者数が1億人を超えるスーパーボウルの全米テレビ中継はアメリカ最大の人気番組であり続けている。その中で放送されるCMの視聴者数もダントツなのだ。今回30秒のCMを放映するための権料は560万ドルに達したと見られるほどだ。

それだけに広告主たちはスーパーボウル中継で流すCMに力を入れている。スーパーボウルのために制作される大作も多い。そしてそれがスーパーボウルCM人気につながっているのだ。ある調査でCMを目的に中継を観ると回答した人が4分の1にのぼったほどである。

日本で放送されるスーパーボウル中継はCMがカットされるため、以前は観ることが難しかった。しかし現在ではそのほとんどがYouTubeなどインターネットを通じて視聴できるようになっている。特にお勧めしたいのが全国紙『USA Today(USAトゥデー)』が開催している『Ad Meter(https://admeter.usatoday.com/)』である。これはスーパーボウルCMに関してユーザーが点数をつけていき、最終的にどのCMが良かったかランキングにするという恒例の企画だ。中継でCMが放送されるとサイトにそのCM動画が掲載されるようになっている。試合中継の合間にどんなCMが放送されたかチェックするとアメリカの中継を観ているような気分でなかなか楽しい。

すでに事前公開されているCMもあり、それらは今から観ることが可能だ。今年はパンデミックや社会分断の影響もあってコカ・コーラやペプシ、バドワイザーなど常連企業が放送をとりやめることを発表し話題となった。その一方で、ドリトスやチートスなどは例年通り放送を行う。トヨタやメルカリ、インディードといった日本に関連する企業も放送する予定だ。

ぜひこれを機会に多方面からスーパーボウルを存分に楽しんでみてはいかがだろうか。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。