コラム

存在感を示し続けるマニング兄弟

2021年07月05日(月) 08:26

マニング家、左からアーチ―、ペイトン、クーパー、イーライ【AP Photo/Darron Cummings, File】

マニング兄弟の活躍が続いている。マニング兄弟とはセインツを中心に名クオーターバック(QB)として知られたアーチー・マニング氏の息子たち3人のことだ。長男のクーパー氏は高校でワイドレシーバー(WR)として活躍したものの、ミシシッピ大学入学後に脊柱管狭窄症で現役を引退。その後投資会社で重役を務める傍ら、地上波『FOX(フォックス)』のNFLプレゲーム番組で「マニングアワー」というコーナーのホストも務めている。次男のペイトン氏はコルツとブロンコスで14シーズンに渡ってプレーし、スーパーボウル優勝2回、MVP5回授賞を誇る殿堂入りもしている元スター選手だ。三男のイーライ氏はジャイアンツ一筋16年の現役期間にやはり2回スーパーボウルを制しており、2019年に引退した。

その3兄弟が名を連ねているのが現地6月22日に地上波NBCで放送が開始されたクイズ番組「キャピタルワン・カレッジボウル」である。この番組はかつて60年代に放送されていた伝統ある番組で、コロンビア大学やアラバマ大学、南カルフォルニア大学など全国のトップカレッジの学生チームが合計100万ドル(約1億1,000万円)の奨学金をかけてクイズで争うというもの。

この番組でペイトン氏が司会を務め、クーパー氏がアシスタントに就いているのである。さらにイーライ氏はクーパー氏とともに共同プロデューサーとなっている。まさにザ・マニング・ショーといったところである。

また、イーライ氏に関しては6月22日、ジャイアンツがフロントオフィス入りを発表した。イーライ氏は事業運営およびファンエンゲージメントの業務を担当するとしている。事業開発、マーケティング、コミュニティおよび企業広報活動に貢献するのが役割だという。さらにジャイアンツが今秋に予定している新しいライフスタイルシリーズなど、オリジナルコンテンツの開発にも協力していくということだ。

ジョン・マーラ社長兼CEOは「16シーズンにわたり、イーライはジャイアンツの一員であるとはどういうことかを示し、定義してきた。われわれは彼がフロントオフィスのビジネス面に参加することに興奮している」とコメントしている。

さらにジャイアンツはマニングが使用していたジャージーナンバーの10を永久欠番とし、現地9月26日(日)に本拠地メットライフ・スタジアムで実施されるアトランタ・ファルコンズ戦でマニングをジャイアンツのリング・オブ・オナーに迎えることも発表した。イーライ氏の先発デビューは2004年11月21日に行われたファルコンズ戦だったことにちなんだものである。

この決定に対してイーライ氏は「最高に名誉なことだし、信じられない気持ちだ。その日にどんな感情を抱くのか分からない。ただ、高ぶるのは分かっているよ」と話したということである。

一方、現在放送界を中心に高い関心が寄せられているのが、IT大手『Amazon(アマゾン)』がサーズデーナイトフットボール(TNF)の解説者としてペイトン氏と契約するのではないかというトピックだ。『New York Post(ニューヨーク・ポスト)』紙などが報じている。

アマゾンは2022年シーズンからTNFを独占的にストリーミング配信する権利を獲得した。近年、同社はこれまでもTNFの配信を行ってきたが、いずれもフォックスなどのテレビ中継との同時配信だったのである。そのため中継番組そのものはテレビ側が制作し、それを配信する形式だった。今回独占契約を結んだことでアマゾン独自で番組制作する必要があり、実況や解説もそろえる必要がある。その解説者の最有力候補としてペイトン氏が選ばれているというのである。

報道によればアマゾンはサンデーナイトフットボール(SNF)などで知られるベテランのアル・マイケルズ氏を実況候補にピックアップしている模様だ。そうなるとペイトン氏とマイケルズ氏のスーパーコンボが実現することになる。さらにSNFのエグゼクティブプロデューサー、フレッド・ゴーデリ氏の参加も打診しているとされており、アマゾンがTNFにどれほど力を入れているかわかる。

一方でペイトン氏参加の道筋は平坦ではなさそうだ。まず契約に必要な金額である。『CBS』はトップ解説者のトニー・ロモ氏と昨年10年1億8,000万ドル(約200億円)で契約した。この1年あたり1,800万ドルという額を下回ることはないだろうというのがもっぱらの見方である。

さらに人気の高いペイトン氏には解説者としてのオファーはこれまでもいくつもあったと見られているが、ペイトン氏が受諾したことはなかった。ただペイトン氏は今年2月に自らの映像制作会社『Omaha Productions(オマハ・プロダクション)』を起ち上げており、考えに変化が出ているかもしれない。

いずれにせよマニング兄弟が人々の話題になることは続きそうだ。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。