コラム

加速するスポーツベッティングへの参入

2021年09月06日(月) 08:58


ディスプレイに表示されたオッズ【AP Photo/John Locher, File】

現地8月30日、NFLは『Fox Bet(フォックス・ベット)』、『BetMGM(ベットMGM)』、 『PointsBet(ポイントベット)』、『WynnBET(ウィンベット)』の4社を「公認スポーツブック(スポーツ賭博)運営企業」に加えたと発表した。この分野の公認企業は4月に発表されていた『Caesars Entertainment(シーザーズ・エンターテインメント)』、 『DraftKings(ドラフトキングス)』、『FanDuel(ファンデュエル)』と合わせ7社となった。

これら7社はNFLのテレビ中継で今シーズンから1試合最大6回放送することが解禁されたスポーツブック企業のCM枠を購入し、自社CMを放映することができる。またNFLの映像などを使用することも可能だ。ただし、先行した3社はプロモーションなどでNFLのロゴマークなどを使用することが可能だが、追加された4社は使用が許されていない。先行3社は5年契約で合計10億ドル(約1,097億円)近い契約料を支払うと見られている。

4社が加わったことに関してNFLのビジネス開発担当ナナヨー・アサモア副社長は「この度、厳選されたグループを公認スポーツブック運営企業として発表できることをうれしく思います。(先行した)3社とともに、この事業者グループは、スポーツベッティングの状況が進化し続ける中、リーグが今シーズン、責任ある革新的な方法でファンの皆様に貢献してくれることでしょう」とコメントしている。

アメリカでは2018年に下された最高裁判所の判断により、全国的にスポーツベッティングが実施できるようになった。多くの州が解禁に動いており、現地、オンライン、またその組み合わせのスポーツベッティングが現在22の州で解禁されている。さらに増えることが予想されており、スポーツベッティングは一大成長産業となっているのだ。

NFLはいわゆる4大プロリーグの中で、スポーツベッティング企業と公式契約を結んだのは最も遅かった。しかし、4月以降はその動きを加速させている。4月には『Genius Sports(ジーニアス・スポーツ)』とスポーツベッティングには不可欠な公式データを配信する権利の独占契約を結んでいる。この契約ではジーニアスは年間1億2000万ドル(約131億7,000万円)以上の権利料を現金と株式で支払う模様だ。

また、各チームもスポーツベッティング運営企業とパートナー契約を次々に結んでいる。セインツは本拠地スーパードームのネーミングライツ、命名権契約をシーザーズ・エンターテインメントと結び、名称をシーザーズ・スーパードームに改めたばかりだ。

リーグはスタジアム内に賭けを行うための窓口を設置し、ベッティングすることは依然許可していない。ただし、現在主流となりつつあるスマートフォンなどの携帯端末を使ってファンが賭けること自体は可能だ。そのため、各企業は窓口はないものの、ファンがくつろげる自社のラウンジなどを設置する動きが広がっている。

業界分析会社『PlayUSA(プレーUSA)』は、今シーズン、NFLとカレッジフットボールで200億ドル(約2兆2,000億円)以上がフットボールに関連した賭けに使われるだろうとしている。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。