昨季の崩壊を乗り越えるためにキャンプで新たな緊迫感を見せるイーグルス
2024年08月01日(木) 14:25ラインバッカー(LB)デビン・ホワイトは2023年シーズンにおけるフィラデルフィア・イーグルスの失速について独自の視点を持っている。当時、タンパベイ・バッカニアーズでプレーしていたホワイトは、昨シーズンに2回イーグルスと対峙した。1回目の対戦はシーズン第3週に行われ、このときバッカニアーズのオフェンスをわずか174ヤード、11得点に抑えたイーグルスは、シーズン開幕から10勝1敗と好調な滑り出しを見せていた。しかし、2回目の対戦として臨んだスーパーワイルドカードウイークエンドでは、バッカニアーズに32対9で打ちのめされている。失速していたところにとどめを刺されたイーグルスは、長きにわたる自問自答の期間に突入した。イーグルスに何が起こったのか? その根本的な疑問に対する答えはまだ完全には出ていない。
それを間近で見ていたホワイトには、ある考えがある。
現地7月30日(火)、ホワイトは練習を終えた後に「結局は、プレーオフではケガが影響していたんだと思う」と語った。
「イーグルスのディフェンスに対する危機感――バッカニアーズにはそれがあった。俺たちは貪欲で、威勢が良かった。それがあると思い切っていける。ケガなのか、勝ちたいという意思がなかったのか、理由は何であれ、彼らにはそれが欠けていた。でも、これは新しいユニットだし、素晴らしい選手たちが戻ってきている。素晴らしいリーダーたちがたくさんフィールドにいるときに集中力を失うのは難しいことだ」
オフェンスが苦戦するようになった昨シーズン後半に自身の影響力も薄れてしまったワイドレシーバー(WR)A.J.ブラウンは、2023年シーズンのことをこれ以上、考えたくも話したくもないと思っている一方で、イーグルスが正しい方向に進んでいると確信している。初期の練習では、新攻撃コーディネーター(OC)ケレン・ムーアが昨季よりも多くスナップ前のモーションを取り入れ、ランニングバック(RB)セイクワン・バークリーがクオーターバック(QB)ジェイレン・ハーツにとって重要なセーフティネットになるということがうかがえた。ハーツはこの夏、練習中にチームメイトやコーチに頻繁に話しかけるなど、落ち着いた様子を見せている。月曜日、ハーツがこれまでのところ鋭い動きを見せていると述べたヘッドコーチ(HC)ニック・シリアニは、特にハーツがプレッシャーに反応して足をスライドさせたり、チェックダウンでバークリーなどにパスを出したりするところを見るのがうれしいとわざわざ強調した。昨シーズンはハーツに対するプレッシャーと、それに適応できなかったオフェンスが、シーズン終盤の苦戦に大きく影響していた。
イーグルスがブラウンとデボンタ・スミスで構成されるリーグ屈指のワイドレシーバーコンビを擁していることを踏まえると、そうした問題はなおさら不可解だったと言えよう。ブラウンはイーグルスのオフェンスには特別な選手が多くいると絶賛した一方で、次のステップに進み、再びスーパーボウルに出場するためには、イーグルスは“やるべきことをやらない選手を抱えてはいけない”と語った。イーグルスが昨シーズンの状態を乗り越えたとブラウンが考えている理由は何なのか。
「選手たちがどれだけ努力しているか、それだけが基準だ」とコメントしたブラウンは「みんなはじっとしながら何かが起こるのを待っているわけでも、ふてくされているわけでもない。それだけが重要なんだ。俺はそれだけを気にしている」と続けている。
火曜日に行われた練習でファンから最も大きな歓声が上がったのは、バークリーがレッドゾーンの練習でタッチダウンを決めたときだった。バックフィールドから抜け出してキャッチする能力と、ボールを持つたびに爆発的なプレーに変える可能性を秘めているバークリーが、昨季のイーグルスに欠けていたプレッシャーを和らげる役割を担い、ハーツをサポートすることは容易に想像ができる。
「彼がここにきた最初の日、やばいことになった。俺はただただ見ていたんだ。ブロックするつもりだったのに。現実に戻る必要があった」とブラウンは話している。
現在のイーグルスにとっては、たとえこれ以上思い悩みたくなかったとしても、2024年レギュラーシーズンの序盤に実力を見せつけるまでは昨季の崩壊の影が残り続けるというのが現実だ。今年から加わったコーディネーターや選手たちは新たなエネルギーをもたらすだろう。昨季にバッカニアーズで評価を落としたホワイトは、キャリアを復活させるためにイーグルスに移籍した。ホワイトは自分のコミュニケーション能力だけではなく、自分が持っている自信と威勢もチームの役に立つと考えている。ホワイトは守備コーディネーター(DC)ビック・ファンジオのディフェンスが導入された初期段階で見たことや、学習場から練習場に持ち込まれた細部へのこだわりに勇気づけられているようだ。
「みんなが群れをなしている」と明かしたホワイトはこう続けた。「1つ言えるのは、俺は素晴らしいディフェンスチームにいたことがあって、そこでは誰かが失敗すると、誰かがボールに飛んでいってくれる。助けに来てくれるって仲間を当てにすることができるんだ」
ホワイトが指摘したように、ファンジオDCは選手たちと冗談を言い合うようなタイプのコーチではないが、その存在とスキームは守備選手たち全員をより一層奮い立たせている。7月の練習であるにもかかわらず、攻撃的で競争心に満ちた雰囲気が漂っている状態だ。復帰したセーフティ(S)C.J.ガードナー・ジョンソンは、朝の間ずっと話し続けており、特定の誰かに向かって話しているわけではないこともある。アウトサイドとスロットの両方で練習している新人コーナーバック(CB)クインヨン・ミッチェルは、レッドゾーンでの1対1のカバレッジでブラウンに挑み、ピッタリとマークしながらブラウンを見つめ、けたたましくしゃべり続けていた。
昨シーズン終盤にイーグルスが停滞した原因に対するホワイトの評価が正しければ、そのような鋭い競争心はオフェンスにおけるバークリーと同じように歓迎されるだろう。
「ただ貪欲なやつらが必死にやっているだけだ」とホワイトは強調した。
【RA】