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警官がWRヒルを車から引きずり出す映像が公開に、ドルフィンズが声明を発表

2024年09月10日(火) 16:27


マイアミ・ドルフィンズのタイリーク・ヒル【AP Photo/Rebecca Blackwell】

現地8日(日)に行われた試合前、車両停止命令を受けたマイアミ・ドルフィンズのワイドレシーバー(WR)タイリーク・ヒルがスポーツカーの窓を閉めたため、警官がヒルの腕と頭をつかんで車から引きずり出し、顔から地面に押し倒したことが、月曜日に公開されたボディカメラの映像で明らかになった。

フロリダ州マイアミ・デイド郡の警官とヒルの間のやり取りが急速にエスカレートし、警官がヒルに対して罵声を浴びせたものの、ヒルは警官たちに抵抗したり、攻撃したりしなかったことが、その映像から確認できる。今回は6人の警官のボディカメラの映像が公開された。

ステファニー・ダニエルズ警察署長は、通常であれば調査中にこういった映像を公開することはないものの、警察署の「透明性と市民の信頼維持へのコミットメント」を示したかったと説明。

ドルフィンズはこの事件に関して声明を発表し、ヒルやチームメイトのディフェンシブエンド(DE)カライス・キャンベルとタイトエンド(TE)ジョンヌ・スミスに対する行為に関して悲しみを表明するとともに、関与した警官に対して「厳しい対応を求める」と訴えた。

ドルフィンズは声明で次のように述べている。

「昨日の試合の前に警官がタイリーク・ヒル、カライス・キャンベル、ジョンヌ・スミスに対して取った過度に攻撃的で暴力的な行為に関して、われわれは心を痛めている。コミュニティを守ってくれると信頼している人々が、これほど不必要な力と敵意を選手たちに向けるのを見て、怒りと悲しみを覚えている。その一方で、今回のような状況がすべて平和に終わるわけではないことを改めて認識させられた。今回はこのような形で治まったことに感謝している。“もし俺がタイリーク・ヒルじゃなかったら、どうなっていた?”という問いかけは反響を呼ぶだろう」

「われわれはマイアミ・デイド警察署をはじめとする法執行機関と強固で良好な関係を築いていることを誇りに思っており、大多数の警官が最高の人格と全市民を守るという願望をもってコミュニティに奉仕していることを認識している。しかし、今夜公開された映像に明らかに映し出されていたように、その責任と奉仕へのコミットメントを誤解し、見当違いの権力を振るう警官がいることも事実だ。MDPD(マイアミ・デイド警察署)がこの映像を迅速に公開したことは正しい対応であり、われわれはその行動を称賛するが、それと同時に、このような卑劣な行為におよんだ警官に対しても同様に迅速かつ厳しい対応を取るよう強く求める」

「タイリークと他の選手たちが彼らの立場とこの状況を利用して、地域社会にポジティブな影響を与えようと努力することを、われわれは応援する。われわれは常に、フットボールという競技が人々を団結させる特別な力を持っていると信じてきた。選手、組織、地域社会のパートナーたちとの協力を通じて、持続的な変化を生み出せることを期待している」

ある映像では、ハードロック・スタジアムに向かう道路でヒルを停止させた白バイ警官の様子が映し出されていた。この警官はヒルのマクラーレン・スポーツカーの窓を事前に叩いていたか、軽く触れていたように見える。

警官は車内をのぞき込み、なぜシートベルトをしていないのかとヒルを問いただした。ヒルは開いた窓越しに警官に向かって、「そんな風に窓を叩かないでくれ」と言った。

警官は「なんで窓を閉めるんだ?」と応じる。

これに対して、ヒルは「やることをやってくれ」と答え、スモークのかかった窓を再び閉めた。

警官は窓を叩きながら、「窓を開けておけ」とヒルに告げる。警官は5秒ほど動きを止め、周囲を見回した後、再びヒルに窓を開けておくように指示し、さもないと「車から引きずり出すぞ。いや、むしろ今すぐ車から降りろ」と言い放った。

その後、警官はヒルにドアを開けるように命令。もう1人の警官が近づき、「車から出ろ、さもないと・・・窓を割るぞ」と不適切な言葉を口にしている。

ドアが開き、2人目の警官が手を伸ばしてヒルの腕と後頭部をつかんだ時、ヒルは「今出ようとしている」と声を上げた。

2人目の警察官はヒルを顔から地面に押しつけた。ヒルが携帯電話に向かって「ドリュー、逮捕されそうだ」と叫ぶ中、警察官たちはヒルに無理やり両手を背中に回させている。ヒルが代理人のドリュー・ローゼンハウスに対して話していたのか、チームのセキュリティ担当ディレクターであるドリュー・ブルックスに対して話していたのかは不明だが、両者はすぐに現場に姿を現した。

警察官たちはヒルに手錠をかけ、そのうち1人がヒルの背中の中央に膝を押しつけた。そして、「何か指示したら、それに従え」と声をかけている。

それに対してヒルは「刑務所に連れていけよ、やるべきことをやれ」と返答した。

ヒルを車から引きずり出した警察官は「そのつもりだ」と応答。

そして、「正気かよ」とヒルは返している。

その後、警察官たちはヒルを立たせた。その際にヒルは「なんであんな狂ったように窓を叩いていたんだ?」と問いかけている。

警察官たちはヒルを立たせ、歩道に連行。1人の警察官が縁石に座るよう指示したが、ヒルは膝の手術を受けたばかりだと主張した。

ヒルを車から引きずり出した警察官はヒルの背後にまわり、上胸部あるいは首のあたりを押さえつけて座らせた。

ヒルは「落ち着いてくれよ」と訴えている。

その時点で、キャンベルは自分のSUVをヒルの車の前に止め、外に出て状況を尋ねていた。警察官たちはキャンベルに車に戻って立ち去るよう指示。その後、キャンベルに対して道路を塞いでいるとして違反切符を切ると告げた。キャンベルもまた、手錠をかけられたが、違反切符は発行されていない。

ヒルとキャンベルは最終的に解放され、スタジアムに入ることが許された。

月曜日、南フロリダ警察慈善協会のステッドマン・スタール会長は警察官の行動を擁護し、ヒルは「自身や他者に大きな危険をもたらすような運転をしたため、警察官の安全確保のために一時的に拘束された」と述べている。

「止められた際に、ヒル氏は現場の警察官にすぐに協力しなかった。警察官は方針に従い、即時の安全のためにヒル氏に手錠をかけた。ヒル氏は依然として協力的ではなく、地面に座ることを拒否したため、地面に座らされた」

ヒルの弁護士であるジュリアス・コリンズは声明で「ヒル氏は法執行機関が任務として遂行する本質的に危険な業務を理解しており、警察官の安全が重要であることも理解している。その一方で、ヒル氏が警察官たちに脅威を与えた瞬間は一度もなかった」と述べている。

キャンベルは状況を緩和しようと試みたと明かした。両手を頭上にあげた状態で車から降り、現場に近づいたキャンベルは、ヒルの友人であることを警察官に伝えたという。キャンベルはヒルを“サポート”するためにその場にとどまった。その後、警察官は自分たちに過度に接近して“直接の命令に背いた”として、キャンベルにも手錠をかけている。

キャンベルは月曜日に『ESPN』に対して「警官たちは彼を地面に引きずりおろそうとしていた」とコメント。

「彼を蹴ったり、引きずりおろそうとしたりしているのを見た。1人の警官が彼の頭を押したようにも感じた」

キャンベルによると、スミスや、後から来たワイドレシーバー(WR)オデル・ベッカムもヒルをサポートするために現場に残り、ヒルは彼らに対して繰り返し「置いていかないで」と伝えていたという。

黒人のヒルは、自分がNFLのスター選手ではなかったらどうなっていたかと考えたと語った。同じく黒人のチームメイトの中には、そのようなやり取りは見慣れていると話す者もいる。

セーフティ(S)ジェヴォン・ホランドは「黒人男性に対する過剰な実力行使は珍しいことじゃない」と言う。

「アメリカではよくあることだ。だから、全国レベルで取り組むべき問題だと思う」

月曜日、ドルフィンズのヘッドコーチ(HC)マイク・マクダニエルは今回の状況に動揺していると発言。マクダニエルHCは出来事を振り返る中で涙をこらえている様子を見せていた。

「私がより感情的になってしまうのは、共感を重視することに多くの時間を費やしているからだろう。本当の意味で理解することができないと分かっていると、その分からない部分に打ちのめされてしまう」と述べたマクダニエルHCは「私にできるのは予測だけだが、自分の予測よりももっと悪い場合もあるのかもしれない」と続けている。

ヒルは2件の警告を受けたものの、逮捕はされていない。1人の警察官は休職処分となっている。


記事提供:『The Associated Press(AP通信)』


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