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ジャイアンツに「何かを証明する必要はない」とイーグルスRBバークリー

2024年10月17日(木) 16:00


フィラデルフィア・イーグルスのセイクワン・バークリー【AP Photo/Chris Szagola】

ニューヨーク・ジャイアンツのオーナーであるジョン・マーラが恐れていた状況が訪れる。

ランニングバック(RB)セイクワン・バークリーがフィラデルフィア・イーグルスの一員としてメットライフ・スタジアムに戻ってくるのだ。

現地20日(日)にキャリア初のジャイアンツ戦に臨むバークリーは、メットライフ・スタジアムでの試合が自分にとって何を意味するのかまだ確信が持てないと認めた一方で、元所属チームに対して何かを証明する必要はないと前向きな姿勢を示した。

バークリーはロッカーの前で「いや、それに関する自分の考えはよく分かっている。彼らに何かを証明する必要はない」と報道陣に話している。

「この組織、つまり、ジェフリー(ルーリー、オーナー)やハウイー(ローズマン、ジェネラルマネジャー/GM)、自分をここまで導いてくれたすべての人たちに感謝している。つまり、俺が証明しなきゃいけない相手は、そういう人たちとチームメイトだ。結局のところ、一番重要なのは勝つこと。自分が300ヤード走ろうが、10ヤードに終わろうが、勝てればそれでいい。自分が活躍したとしても、彼らを見て“お前たちが手放したものを見ておけ”なんて思うほどのプライドやエゴはない」

今シーズン、バークリーは試合平均スクリメージヤード(114.8ヤード)でリーグ内4位につけ、依然としてNFL屈指のテールバックであることを証明している。また、バークリーは482ランヤード、タッチダウン5回を記録してきた。

とはいえ、次の試合は、バークリーがゴッサムを離れて地区ライバルのイーグルスと3年3,780万ドル(約56億5,458万円)の契約を結んだときから注目されていた。

2018年NFLドラフト全体2位で指名されたバークリーは、ジャイアンツで6シーズンを過ごし、AP通信オフェンス部門年間最優秀新人賞の獲得やプロボウル選出を達成し、ファンからもオーナーからも愛されていた。しかし、過去2シーズンは困難に見舞われ、2023年シーズンはフランチャイズタグをつけられたあとに再構築された1年契約を締結してプレーしたものの、シーズン終了後に契約延長を実現させることはできなかった。その過程は『HBO』の“Hard Knocks(ハードノックス)”で取り上げられ、その中にはマーラが“セイクワンがフィラデルフィアに行ったら、眠れないだろう”と発言する印象的な場面もあった。

結局、バークリーはフィラデルフィアに渡った。そして、日曜日に初めてイーグルスの一員としてメットライフ・スタジアムでプレーする。

『NFL Research(NFLリサーチ)』によると、スタジアムの歴史において、バークリー(2,601ヤード)を上回るランヤードを記録した選手はいないという。しかし、そのヤード数に縛られることは、バークリーにとって不吉な兆しとなるかもしれない。バークリーはジャイアンツのホームゲームで2,600ヤードを獲得した一方で、2019年シーズン第10週に行われたニューヨーク・ジェッツとのアウェーゲームでは、キャリー13回で1ヤードに抑えられたからだ。

次戦はバークリーにとってメットライフ・スタジアムで臨む2回目のアウェーゲームとなる。

それが自身やそのキャリアにとってどのような意味を持つのか、今も疑問に思っているバークリーは次のように語った。

「分からない。まだ考えている途中だと思う。いつもと同じように取り組むつもりだ。すべての試合が重要で、どの試合も特別だと常に考えている。最後の試合がいつになるかは分からないしね」

「もちろん、あそこに歴史があるのは間違いない。そこに戻るのは興味深いことではある。今はこれっていう答えがない。週の後半にはもっと良い答えが出せるんじゃないかな」

自分の思いを率直に語ったバークリーは、それを原動力にしつつ、集中力や準備の妨げにならないように心がけている。

バークリーは「もちろん、集中して試合に臨むつもりだけど、必要以上に大きく考えたくはない」と強調し、こう続けた。

「前にそうしてしまったときは結果が気に入らなかった。楽しい雰囲気になるだろうし、これはフットボールだ。そういう場にいるのが大好きだし、特にこのディビジョンでこの2チームが対決する歴史的な試合の一部になれるのはうれしい。大事な試合だからすごく楽しみだ」

記録にかかわらず、イーグルスとジャイアンツの対戦は常に盛り上がり、その理由は歴史、市場、注目度の高さにある。しかし、今回は“セイクワンゲーム”としてシーズンが始まるずっと前から注目されてきた試合でもある。以前のホームのファンから受ける歓迎は、かつてのコーチやチームメイトと共に交わす試合後の握手と同じくらい注目されるだろう。

バークリーは「前にブーイングされると思わないって言ったと思うけど、オフシーズンに“ハードノックス”で自分とジャイアンツとの間にあったことより、このライバル関係はずっと大きいものだってことが言いたかったんだ」とコメント。

「このライバル関係はずっと前から続いているし、自分はあっち側にいたから、ジャイアンツファンの気持ちも分かる。どういう雰囲気になるかは分からないけど、ワクワクしている。選手として、コンペティターとして、そういう環境や瞬間を歓迎しないと。どんな雰囲気でも、ちょっとした活力が得られたら、フィールドに出てパフォーマンスを発揮して、チームの勝利に貢献できると思う」

バークリーは3勝2敗のイーグルスにとって大きな戦力となっているが、今シーズン最悪の試合を終えたばかりで、前回のクリーブランド・ブラウンズ戦ではキャリー18回で47ヤードという数字にとどまった。2勝4敗という成績ながら、トータルディフェンスで10位につけているジャイアンツは、ブラウンズと同じようにバークリーを抑えようとするだろう。また、言うまでもなく、バークリーは予期していなかったシナリオ、つまり、NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)東地区のライバルチームの一員としてジャイアンツと対戦することになる。

ライバル関係の両側にいる感覚について尋ねられたバークリーは「1年か2年前にこれを聞かれていたとしたら、今の立場にいるとは思ってもみなかっただろう。でも、クールだし、楽しいと思う」と答えた。

バークリーが勝利を目指し、感情と葛藤する中、そこに悪意はないという不変の要素がある。

バークリーがかつての所属先に自分の力を証明する必要もなければ、試合に憎しみを持ち込むこともない。

「憎しみがあるわけじゃない。でも、それと同時に、これが大きな意味を持つ大切な試合で、地区ライバルとの対戦だってことは分かっている。しっかりと集中して、勝利に貢献できるよう全力を尽くすつもりだ」とバークリーは語った。

【RA】