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コマンダースQBダニエルズがベアーズ戦で“生涯一度の”ヘイルメアリーTD

2024年10月28日(月) 14:46


ワシントン・コマンダースのジェイデン・ダニエルズ【AP Photo/Nick Wass】

すでに鮮烈なデビューを果たしているワシントン・コマンダースの新人クオーターバック(QB)ジェイデン・ダニエルズが、現地27日(日)に行われたシーズン第8週のシカゴ・ベアーズ戦で今季最大の飛躍を遂げた。試合終了まで残りわずか2秒という場面で、ダニエルズは奇跡の“ヘイルメアリー”タッチダウンパスを成功させ、コマンダースを18対15の劇的勝利に導いた。

肋骨の負傷を抱えるダニエルズは今週の練習に1回しか参加できず、試合開始の数時間前まで出場が不透明な状態だった。しかし、ダニエルズはパスで326ヤード、さらにランで52ヤードを記録し、リーグ全体が驚愕するタッチダウンを決めてみせた。試合残り25秒で逆転タッチダウンドライブを成功させた全体1位指名のQBケイレブ・ウィリアムズをも凌駕する圧巻のパフォーマンスを披露している。

この大活躍に最も動じなかったのは、当のダニエルズ自身だった。

「とにかくボールを投げて、あとはチームメイトに託した」と、ダニエルズは勝利後に記者たちに話している。

「何も見えていなかった」

ダニエルズはただの“ヘイルメアリー”ではなく、ノールックの“ヘイルメアリー”を決めたことになる。ワイドレシーバー(WR)ノア・ブラウンが公式記録上52ヤードのタッチダウンパスをキャッチしていたことにダニエルズが気づいたのは、周囲の歓声が響き渡り、サイドラインにいた仲間たちがフィールドに駆け出していく様子を目にした瞬間だったという。

「その時にやっと分かったんだ」とダニエルズは話している。

ダニエルズはあまり自分をほめるタイプではないようだが、代わりにその役目を担ったのがブラウンだった。

「背番号5番がこのチームを引っ張ってくれていることに本当に感謝している」とブラウンはダニエルズを称えた。

「彼のプレーは特別だ。最後のプレーでも冷静さを保ち、必死に逃げ回りながらボールを投げた。あんなパスは滅多に見られない」

「彼以外のクオーターバックとはプレーしたくないね。彼がいてくれて本当に良かった」

ダニエルズは“ヘイルメアリー”を決める前に、2プレー連続でタイトエンド(TE)ザック・アーツに11ヤード、続いてワイドレシーバー(WR)テリー・マクローリンに13ヤードのパスをつなげたものの、残り時間2秒でエンドゾーンまではまだ半分以上の距離が残されていた。

ブラウンは、できるだけ早くエンドゾーンに到達して陣取り、ダニエルズがここまでパスを出してくれることを願っていたと記者たちに話している。

ダニエルズはその通りにした。

『Next Gen Stats(ネクスト・ジェン・スタッツ)』によると、ダニエルズのパスは空中で64ヤード飛び、ルーキーWRのルーク・マカフリーとアーツ、そして4人のベアーズ守備陣が密集する場所に落下。ティップされたボールは、4ヤード後ろのエンドゾーン内にいたブラウンの手に収まった。しかし、その前にダニエルズは12.79秒間、スクリメージラインの後方で40ヤード以上もスクランブルして時間を稼がなければならなかった。

「ジェイデン・ダニエルズは52ヤードの“ヘイルメアリー”タッチダウンパスを投げるまでにボールを12.79秒間キープし、ノア・ブラウンへとつなげた。これは、2016年にネクスト・ジェン・スタッツが統計を取り始めて以来、投球までに10秒以上かかった上で成功した初めてのタッチダウンパスとなる」

「彼はプレーを生かし続けるために素晴らしい仕事をして、最高のパスを投げてくれた。そして俺たちは勝った」とブラウンはコメントしている。

コマンダースは日曜日の試合を通じてほとんどの時間で優位に立っていたが、第3クオーターで3度レッドゾーンに到達しながら得点を挙げられず、リードはわずか12対0にとどまった。その後、ベアーズは第3クオーター終盤にWRディアンドレ・スイフトがタッチダウンを決めて12対7と追い上げ、さらにウィリアムズが試合終了直前にベアーズを逆転へと導いた。

コマンダースのヘッドコーチ(HC)ダン・クインは、勝利を確信していたわけではなかったが、痛みを抱えながらもプレーするダニエルズへの信頼は揺るがなかったと記者たちに語った。今週の練習で見せたダニエルズの進展を確認し、起用を決断したと述べている。

「彼には常に粘り強さがあり、真の競技者であることは分かっていた」とクインHCは言う。

「それがこれまでとは違った形で明らかになったかどうかは分からない。今回の負傷があって初めて、何が可能で何が無理なのかを一緒に判断する機会となった」

日曜日に38本のパスを投げたダニエルズは、投げる際に痛みがあったことを明かした。

「先発したからには最後までやり遂げようと決めていた。だから、何があっても途中で退場するつもりはなかった」とダニエルズは述べている。

コマンダースのファンがルーキーQBにこのレベルの偉業を期待するようになりつつある中で、ダニエルズは自らの“ヘイルメアリー”を「生涯一度の経験」と表現した。

「こんな経験は多くの人にはない」とダニエルズは語っている。

「初めてのことだったから、本当に興奮したし、スタジアム全体が盛り上がっていた。チーム、サイドライン、そして会場の全員が」

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