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QBフラッコを先発起用も、QBリチャードソンを「見限るつもりはない」とコルツHCスタイケン

2024年10月31日(木) 11:52


インディアナポリス・コルツのヘッドコーチ(HC)シェーン・スタイケンとアンソニー・リチャードソン【Lauren Bacho via AP】

インディアナポリス・コルツのヘッドコーチ(HC)シェーン・スタイケンは先発クオーターバック(QB)をアンソニー・リチャードソンからジョー・フラッコに変更する理由を説明するのに、1時間にわたる記者会見を必要としなかった。

理由は単純であり、コルツは2024年に試合に勝つことを必要としており、スタイケンHCはフラッコがそのための最良のチャンスを与えてくれると信じているからだ。現地30日(水)、スタイケンHCは日曜日のプライムタイムに行われるミネソタ・バイキングス戦ではフラッコが先発を務め、“今後も”先発クオーターバックであり続けると明言。つまり、フラッコとリチャードソンは1週間だけ交代するわけではないということだ。

スタイケンHCは「難しい決断だったが、このフットボールチームにとって最善の策だと思った」と述べている。

「今はジョーが私たちに勝つための最良のチャンスを与えてくれると感じている。そうは言っても、アンソニーを見限るつもりはまったくない。本当にそのつもりはない。彼はたくさんの才能を持つ若手選手だ。この時間を活用してプロとして成長し続けるだろう」

リチャードソンは2023年ドラフトの全体4位で指名されてから、2シーズンにも満たないNFLキャリアで数々の浮き沈みを経験してきた。

ルーキーシーズンに好調なスタートを切り、パスの精度には問題を抱えていたものの、次世代のキャム・ニュートンのように見えたリチャードソンだったが、4試合に先発した後、肩を負傷して残りの試合を欠場することになった。復帰後の今季も、少しばかり鈍さが見られたリチャードソンは、シーズン第4週に臀部を負傷し、代わりにフラッコが出場することになっている。リチャードソンはそこから2試合を欠場した後に先発復帰したが、直近の2試合ではパサーとしての不安定さがコルツのオフェンスに制限をかけていた。

フラッコは必要に迫られてリチャードソンの代わりに出場したが、そうでなければコルツはリチャードソンを先発に起用し続けていたかもしれない。しかし、リチャードソンの復帰後、フラッコのパフォーマンスは無視できないものとなった。リチャードソンが指揮を執っていた際に、コルツのオフェンスはフラッコが司令塔を務めていたときほど爆発的でも生産的でもなかったからだ。

スタイケンHCは水曜日に「たくさんの試合が残っている中で勝率.500という現状を踏まえ、フットボールチームとして自分たちがどういう状態にあるのかを見つめているだけだ。ジョーが私たちに最良のチャンスを与えてくれると感じている」と説明している。

コルツが去る日曜日に地区ライバルのヒューストン・テキサンズに敗れた試合で、リチャードソンが一時的に試合から退いたことを、弱さや信頼性のなさの表れと指摘する人もいるだろう。直前のプレーで300ポンド(約136kg)のディフェンダーを振り払い、スクランブルしてパスを投げたことを考えると、疲れ果てていたことは理解できるとはいえ、リチャードソンはその行動によって多くの批判を浴びた。結局のところ、誰もがケガや疲労を抱えながらプレーしている結果重視のNFLにおいて、クオーターバックがそのような行動をとるのは容認されない。

水曜日、リチャードソンは「あのプレーについては、リーダーとして、特にこのチームのクオーターバックとして、あんなことをしたらダメだってことは分かっている。一般的に言って、フットボール選手として、あんなふうに自分自身を試合から引き離すことはできない。特にあんなふうに重要な場面ではね。でも、人は経験から学ぶものだ。そこから成長するしかない」と話している。

リチャードソンが自身の決断とその影響を認識していることは、前向きな兆しだ。また、シーズン第7週にマイアミ・ドルフィンズに辛勝した試合をパス24回中10回成功、129ヤードという記録で終えたリチャードソンが、チームメイトのためにもっと良くならなければならないと認めたことも同様に重要だと言えよう。

それらはすべて、フランチャイズクオーターバックとしての地位を確立するための長期的なプロセスの一環だ。しかし、現時点で最大の問題は、コルツには将来のために多くの時間をかける余裕がないということだ。

水曜日、ベンチに下げられたことについて尋ねられたリチャードソンは「もちろん、つらい。1人のコンペティターとして、来週からはもう先発じゃないと言われたくないのは当然のことだ。でも大丈夫。俺はこの瞬間を成長し、失敗から学ぶための機会として活用している」と報道陣に語っている。

クオーターバックのプレーの微妙な差異に精通している人のほとんどは、リチャードソンの最大の問題はメカニクスだと指摘するだろう。バッファロー・ビルズのQBジョシュ・アレンがキャリア初期に経験したように、リチャードソンも生産性の高いパサーになるために、フットワークを含むメカニクスを調整する時間を確保する必要がある。しかし、プレーオフ進出が現実的な可能性として残っている中で、地区ライバルのテキサンズに敗れて4勝4敗となっているコルツには今、そのことに集中している余裕はない。

スタイケンHCは「もちろん、難しいことではあるが、やはり、この組織にいる53人の選手たちにフットボールの試合に勝たせることが私の義務だ」と述べている。

「今は試合に勝つことに集中している。将来のことについては、そのときを迎えてから考える」

指揮官として比較的短い在籍期間で、スタイケンHCはこのような決断を下すだけの権威を獲得してきた。2023年シーズン序盤にリチャードソンをケガで失った後も、スタイケンHCはベテランのバックアップQBガードナー・ミンシューを起用してコルツの競争力を保ち、シーズン最終戦でAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)南地区王者のテキサンズに敗れるまで、プレーオフ進出の可能性を維持していた。

スタイケンHCは現在、フラッコというより良い選択肢を持っていると信じている。2023年シーズンにクリーブランド・ブラウンズに加入したフラッコは、先発としてチームを4勝1敗に導く中で、1,616ヤード、タッチダウン13回に対してインターセプト8回を記録するなど、魔法のような力を発揮してプレーオフ進出に貢献した。今シーズンにコルツの一員として、ブラウンズを躍進させた昨季と同様の活躍を見せているフラッコは、3試合に出場(うち2試合に先発出場)してパス成功率65.7%、716ヤード、タッチダウン7回に対してインターセプト1回という成績を残し、チームに2勝をもたらしている。

今もなお仕事をやり遂げるのに必要な腕の才能と、豊富な経験を持ち合わせているフラッコは、スタイケンHCのオフェンスを比較的高いレベルで実行できることを証明してきた。残り9試合となった今こそ、フラッコに残された力を最大限に生かす時だと言えよう。

【RA】