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ラムズのプレーオフゲーム開催を全面的にサポートするカーディナルスオーナー

2025年01月13日(月) 15:26


アリゾナ・カーディナルスオーナーのマイケル. J.ビッドウィル【AP Photo/Ross D. Franklin】

アリゾナ・カーディナルスのオーナーであるマイケル・ビッドウィルは現地13日(月)夜にチームのスタジアムに足を踏み入れ、ロサンゼルス・ラムズのブルーとイエローのチームカラーが会場に広がる様子を見て、少し複雑な気持ちになると分かっている。ビッドウィルはライバルチームがそこをホームとしてプレーオフゲームに臨む様子を、あらゆる側面から体験することになる。

土曜日、ビッドウィルは『NFL.com』に対して冗談まじりに「“誰のハウス? ラムズのハウスだ!”というのを聞くのはちょっとつらいかもしれない」と述べている。

「だが、私たちは今起こっていることに心を痛めている。これはリーグにとってもチームにとってもベストなことだから、私たちは素晴らしい試合にするためにできる限りのことをしなければならない」

NFLは先週木曜日、ロサンゼルス地域で猛威を振るっている山火事の影響により、公共の安全を考慮して、月曜夜に予定されているミネソタ・バイキングス対ラムズのワイルドカードゲームの開催場所を、カリフォルニア州イングルウッドにあるSoFiスタジアムからアリゾナ州グレンデールにあるカーディナルスのステートファーム・スタジアムに変更すると発表した。

先週半ばにNFLから、今回のような事態になった場合に代替のスタジアムとしてライバルチームがプレーオフゲームを実施できるようにしておくようにと要請されたとき、ビッドウィルは父親から教わったある教訓を思い出した。

ビッドウィルは「いつだって正しいことをするのに最適なタイミングだ」とコメント。

「私たちが何か手助けできるとしたら・・・これが私たちにできる唯一のことかもしれない。エネルギーを注いで集中し、選手たち、その家族、コーチたちにとって素晴らしい経験となるようにしようじゃないか」

慌ただしい数日間で、カーディナルスは自分たちのシーズンを締めくくり、オフシーズンに備えてフットボールとビジネスの項目を整理する傍ら、プレーオフゲームを開催できるようにスタジアムを整えた。

すべてはNFL幹部のドーン・アポンテからの電話で始まり、アポンテはビッドウィルに「準備はできていますか?」と尋ねている。

ステートファーム・スタジアムは緊急時の代替施設としてよく利用される。電話がかかってきた時点で、その可能性が高いことは明らかだった。そのため、リーグによる指示が出る前から、ビッドウィルの組織はすでに動き出していた。

ビッドウィルは「その朝、チームに話をして、“もしこのようなことが起こるなら、先手を打とう”と言った。準備を整え、実現に向けて必要なことをすべて考え始めようとね」と明かしている。

スタジアムの準備から、チケット状況の把握(ラムズは“Ticketmaster/チケットマスター”を、カーディナルスは“SeatGeek/シート・ギーク”を使用)、計画の確認に至るまで、カーディナルスはあらゆることを検討した。NFLコミッショナーのロジャー・グッデルと何度も話し合い、詳細を確認したと明かしたビッドウィルは、次のようにコメントしている。

「発表される前から、私たちは万全の準備を整えることに全神経を集中させていた。あちらの組織の人々が、家族や友人がすべてを失うなどして、大きなストレスを抱えていることを理解していたし、できる限り思いやりを示したかった。そして、彼らの家族が来ることに気がついた。よし、そうなると別の要素が加わるな、という感じだった」

ビッドウィルはアクティビティからベビーシッター、アイスクリームパーラーに至るまで、ラムズが必要とする可能性があるものをすべてリストアップするようスタッフに指示した。

「私たちはすべてを考慮しようと試みた」とビッドウィルは話している。

カーディナルスはラムズが本当のホームのように感じられるよう、最大限の努力をしてきた。カーディナルスによると、以下のような準備をしてきたという。

◆カーディナルスはフィールドとエンドゾーンに使用するラムズのチームカラー(ブルーPMS 2736とイエローPMS 109)の塗料を確保するために奔走。200ガロン(約757リットル)の塗料が1,500マイル(約2,414km)離れたミシシッピ州リーランドの工場から取り寄せられ、土曜日にアリゾナに到着した。プレーオフをテーマにしたステンシルはロサンゼルスから発送された。

◆カーディナルスは数日間で6万人分の食事を注文。現在は通常の試合日と同じ量の食事が用意されている。具体的には1万本のホットドッグ、3,000個のハンバーガー、4,500個のチキンテンダー、5,500枚のピザ、3,500ポンドのポップコーン用コーン、1,200ポンドのプライムリブ、800ポンドのビーフテンダーロインが用意されている。

◆カーディナルスはラムズの選手やスタッフ、その家族を乗せるために2機のボーイング777を手配し、合計で300人と8匹のペットを輸送した。ビッドウィルが設立した『Gridiron Air(グリッドアイアン・エアー)』社がその実現に貢献。ビッドウィルは「あれほど短期間で実現できたのは良かった」と話している。

◆フェニックスにトラックで運ばれたラムズの備品は、土曜日の現地時間0時30分に施設に到着。カーディナルスのサポートスタッフは試合に間に合うよう、3時30分までラムズと協力して準備作業を行った。さらに、カーディナルスはラムズが利用できるように合計74個のロッカーを空にした。例えば、ワイドレシーバー(WR)マーヴィン・ハリソンJr.のロッカーは現在、WRプカ・ナクアのものとなっている。

◆チケットの売れ行きは好調で、最初の2時間で5万2,000枚が売れ、初日の終わりには完売となった。90以上の特別席と、すべてのラグジュアリーシートが完売した。

◆チームは試合当日のスタッフとして3,500人以上を確保し、短期間で集まった数としては驚異的なものとなった。スタジアムのゲームエンターテインメント担当スタッフはSoFiスタジアムのビデオボードコンテンツやデジタルアセットをすべて準備し、ステートファーム・スタジアムに持ち込むために、昼夜を問わず作業を続けている。それにより、次の試合はまるでラムズのホームゲームのような雰囲気になるだろう。

◆カーディナルスは自分たちのシステムに適合させるべく、何千ものメディアおよびスタッフの認証情報を作成した。

何よりもビッドウィルを感心させたのはチケットの売れ行きだった。通常、中立地で開催される試合のチケットがこれほど売れることはない。すぐに、これは普通ではないと気付いたビッドウィルは、次のように振り返っている。

「それは最初の12分間でかなり明白になっていた。テイラー・スウィフトのコンサートチケットが販売されるときのようなペースで、本当に速かった」

ラムズが勝利した場合、ロサンゼルスに戻る可能性があるが、安全が確保されている場合に限る。引き続き受け入れる準備を整えておくと述べたビッドウィルは「彼らが滞在するのは大歓迎だ」と語った。

【RA】