ショッテンハイマーのHC採用は「これ以上ないほどのリスクを伴う」とカウボーイズオーナー
2025年01月28日(火) 12:52ダラス・カウボーイズは新ヘッドコーチ(HC)にブライアン・ショッテンハイマーを選んだ。
この決定とそこに至るまでのプロセスについては、今後もしばらく議論が続くだろう。しかし、オーナーのジェリー・ジョーンズにとっては、これまでの自身の経験が判断材料として十分だったようだ。マイク・マッカーシー前HCの下で働いていたショッテンハイマーのことはすでによく理解しているという。
現地27日(月)に行われたショッテンハイマーの就任会見で、ジョーンズは次のように語った。
「ショッティは選手たちにとっても、この組織にとっても馴染みのある存在だ。私は時々、自分が心地良いと感じる領域から出ようとしないと批判されるが、今回の決定が私自身のためだとは思わない。もし私が慣れ親しんだ環境から抜け出せないと思うなら、それはとんだ勘違いだ」
「今回の採用は、これ以上ないほどのリスクを伴うものだ。これ以上のリスクはない。彼はヘッドコーチを務めたことがないのだから」
この日、ジョーンズはなぜマッカーシー前HCの後任に故マーティ・ショッテンハイマーの息子であるブライアン・ショッテンハイマーを選んだのかという質問を受け、やや守勢の姿勢を見せた。ジョーンズは、自身が長年にわたりカウボーイズのオーナーとして培ってきた経験を根拠に挙げつつ、ショッテンハイマーを適任と判断した理由を詳しく説明した。
「コーチというものがどうあるべきかについて、私はそれなりの知見を持っている」とジョーンズは切り出し、長い回答を続けた。
「面接だけで決断を下すなんてことは考えられない。もしその人物と事前に話したこともなければ、直接会ったこともないのであれば、私はそもそも面接をしないだろう。そうした状況であれば、その人物について詳しく知っている経験豊富な人たちから徹底的に話を聞いたうえで面接に臨む」
「われわれは浸透作用というものを理解しているし、ショッティがどんな環境で育ってきたかも知っている。ショッティに関していえば、この2つの条件が合致した。彼が3年前にコンサルタントとしてマイク(マッカーシー)とともにカウボーイズに加わっていなければ、候補にすら挙がっていなかっただろう。ショッティとはこれまでに何度もミーティングで同席し、彼の発言や振る舞いを見てきた。彼がヘッドコーチに敬意を払う姿勢を見てきたし、(守備コーディネーター)マイク・ジマーのような経験豊富なスタッフにも同じように敬意を払う様子を見てきた。時には自分の意見が必ずしも一致しないと感じた場面もあっただろうが、そんな時でも彼はぐっとこらえていた。それは、彼の父親が“不満があっても口をつぐめ”と教えた通りの振る舞いだったのだろう」
このパートナーシップにおいて、カウボーイズはショッテンハイマーの血統と、双方が共有する親和性に期待を寄せていると言えよう。スタッフのトップとしての経験を持たないショッテンハイマーが、初挑戦で成功を収めることを目指しているが、その自信の背景には、彼がすでにチームの内部事情を理解しているという点がある。ジョーンズも認めるように、これはリスクのある選択だ。しかし、チームを再び栄光の舞台へと導くために必要な決断だったと考えている。
今回の人事は多くの批判を招いている。ショッテンハイマーはカウボーイズ以外ではそれほど注目されていない候補だった上に、カウボーイズがマッカーシーとの決別を決定するまでに約1週間かかったことで、採用サイクルの中で貴重な面接機会を逃した。
一方、カウボーイズは内部にすでに優秀な人材を抱えていたとジョーンズは考えている。後はその人材を磨き上げ、世間に示すことが今回のショッテンハイマー採用の意図であり、カウボーイズはそれを実現したと信じている。
「これまで話してきた内容に関連して、ショッテンハイマーについて彼が話した浸透作用や家族について少し共有させてもらいたい」とジョーンズは語った。
「蛙の子は蛙ということわざがあり、さらに親からもしっかりと教育されている。それが信じられない人は、人生のどこかで重要な教訓を見逃してしまったのだろう」
「ショッティがこれまで一緒に働いてきた大勢のコーチングスタッフ、そして彼の周りにいた数え切れないほどの選手たちを見渡してほしい。25年もの間、人間関係を通じて学び続けてきた人物がどれだけいるだろうか」
「50歳という、まだ若手と言える年齢で、そうした経験をすべて活かすチャンスがどれだけあるだろうか。だが彼は、ダラス・カウボーイズのヘッドコーチとして求められることに25年間触れてきた。私は彼のそういった経験を高く評価している」
クオーターバック(QB)が中心となるリーグでは、そのポジションが自然と話題の中心となる。ダック・プレスコットがシーズン半ばで今季を終えたことにより、プレスコットの将来や、ショッテンハイマーが彼とどのように連携を深めていくのかという新たな疑問が浮上した。ショッテンハイマーはプレスコットを「リーグで最高のQBの1人」と評している。
「鉄は鉄を研ぐと言うように、ダックと私は素晴らしい関係を築いている。他の選手たちとも同じだ」とショッテンハイマーは語った。
「ダックと私はお互いのツボを理解しているし、時には難しい会話をすることもできる。昨年のトレーニングキャンプを思い出すと笑ってしまうんだけど、あるプレーで彼のパスがインターセプトされた。その時、インターセプトを喫したらベンチに下げられるというルールを作っていた。それで私がダックを下げたら、彼が“何で?”と反発してきた。その競争心が彼の特別なところなんだ」
「だから、彼と私が協力して他の選手たちとともにシステムを構築していく中で、微調整が行われるだろうし、変化も出てくるだろう。ただ、彼は組織全体を変えるような働きをする選手だと思うし、彼と私はオフェンス面においてフットボールを非常に似た視点で見ている。今後、テンポやプレーアクションを使ったパス攻撃、ランゲームなど、やりたいと思っていることについてたくさんコミュニケーションを取ることになるだろう。彼は話しやすい人物だし、私は彼を含めた選手全員のことが好きで尊敬している」
カウボーイズがマッカーシー前HCを解任しながらも、その後任に彼の部下を据えた理由に疑問を抱く人もいるかもしれない。しかしながら、カウボーイズの首脳陣はこれを前向きに捉え、チームの継続性を維持しつつも、必要だと判断した変化をもたらすための決断だったと説明している。
ショッテンハイマーはマッカーシーを「親友の1人」とし、カウボーイズでともに過ごした時間を振り返り、「素晴らしい成功を収めた」と評価した。その土台をさらに発展させ、自身のタッチを加えながらフランチャイズを前進させることを目指している。その目標は、NFLの32人のヘッドコーチが新シーズンに向けて抱くものと同じ――スーパーボウル優勝だ。
「われわれは勝つ。そして、チャンピオンシップを勝ち取る」とショッテンハイマーは話している。
「そうでなければ、何のためにやっているんだ?」
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