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ミズーリ州上院がカンザスシティ・チーフスとロイヤルズを州内にとどめる計画を承認

2025年06月06日(金) 13:58


GEHAフィールド・アット・アローヘッド・スタジアム【Cassie Florido/Kansas City Chiefs via AP】

ミズーリ州上院が現地5日(木)、竜巻の被害を受けたセントルイスに1億ドル(約143億8,200万円)以上の支援を提供する計画を承認するとともに、NFLのカンザスシティ・チーフスとMLBのカンザスシティ・ロイヤルズがミズーリ州内の新設または改修されたスタジアムで引き続きプレーするよう促すため、数億ドル規模の優遇措置を認可した。

議員たちは臨時議会で緊急に対応している。この2つのプロスポーツチームがカンザス州からの対抗提案を受け入れるかどうかを決める期限が6月末に迫っている一方で、セントルイスの住民たちが5月に発生し、推定16億ドル(約2,301億1,200万円)の被害が生じた竜巻からの復旧に苦労しているためだ。

支援策は共和党のマイク・キーホー知事が一部の反対派と合意に達した後、早朝の一連の採決でようやく前進した。その合意には、追加の災害救援金や、税負担が増加している一部の住宅所有者に対する固定資産税の軽減措置の可能性が含まれている。このパッケージには、ミズーリ大学でのがん治療に使われる核研究用原子炉の建設に充てられる5,000万ドル(約71億9,100万円)を含む、州内各地の建設プロジェクトへの資金も盛り込まれている。

下院の承認はこれからだが、上院の投票は大きな障壁となっていた。なぜなら、スタジアムの優遇措置は先月に上院で停滞していたからだ。竜巻がセントルイスやミズーリ州の他の地域を襲ったのは、議員たちが通常会期を終えた翌日にあたる5月16日だった。

セントルイスの災害救援に充てる1億ドルに加え、このパッケージには、大統領による災害宣言の対象地域に住む人々に対する、緊急住宅支援のための2,500万ドル(約35億9,550万円)と、保険の自己負担額を相殺するための5,000ドル(約7億1,910万円)の所得税控除が盛り込まれている。

キーホー知事はこの計画が「危機にある人々を支援するとともに、将来の機会を確保する賢明な判断を下すものになる」と述べた。

チーフスとロイヤルズの将来についてはしばらくの間、不透明な状態が続いている。

両チームは現在、ミズーリ州ジャクソン郡カンザスシティ東部にある隣接するスタジアムでそれぞれプレーしており、リース契約は2031年1月までとなっている。

ジャクソン郡の有権者は昨年、カンザスシティのダウンタウンにおける20億ドル(約2,876億4,000万円)規模の球場地区建設と、GEHAフィールド・アット・アローヘッド・スタジアムの8億ドル(約1,150億5,600万円)規模の改修を援助するための売上税延長案を否決した。

これを受け、カンザス州の議員は昨年、州内の新スタジアム建設費用の最大70%を賄うための債券発行を承認した。

ミズーリ州の対抗案は、スタジアム建設プロジェクト費用の最大50%を賄うための債券発行を認めるとともに、地元自治体からの支援(詳細は明示されていない)に加え、最大5,000万ドルの税額控除を提供する内容となっている。

火曜日に上院委員会で証言したチーフスのロビイストであるリッチ・オーブションは、ミズーリ州の提案を“正当”で“競争力のあるもの”だと述べた。また、オーブションはチーフスがミズーリ州にとどまる場合、2027年または2028年にアローヘッド・スタジアムの改修とチームの練習施設の整備を含む11億5,000万ドル(約1,653億9,300万円)規模の計画に着手する可能性が高いと発言。この改修計画は3年を要する見通しだ。

オーブションはボルティモア、ニューオーリンズ、ナッシュビル、ニューヨーク州バッファローで最近実施された他の公的資金によるスタジアム建設プロジェクトを例に挙げ、次のようにコメントしている。

「全国各地で州がスタジアム建設に資金を投入している。それは経済発展に大きく寄与する大きなビジネスだ」

しかし、スタジアムへの公的資金投入は価値がないと主張する経済学者も多い。スポーツは新たな収益を生み出すのではなく、他の娯楽に使われるはずだった支出の流入先に過ぎない傾向があるからだ。

「チームはカンザス州とミズーリ州を互いに競わせているだけだ」と、自由市場を支持するシンクタンク『Show-Me Institute(ショー・ミー・インスティテュート)』の上級研究員パトリック・トゥーヒーは述べている。同研究所の本部があるセントルイスは5月に発生した竜巻の被害を受けた。

トゥーヒーは「都市や州がこのようなことを行うと、裕福な億万長者のチームオーナーの利益のために税収基盤を空洞化させることになる。そして、公共の安全や基本的なサービスを提供する能力を失ってしまう」とコメントしている。

ロイヤルズのロビイストであるジュエル・パテックは、州の優遇措置があっても、計画中のスタジアム地区にはジャクソン郡かクレイ郡のいずれかで地方の税制優遇措置に対する有権者の承認が必要になる可能性が高く、それは今年後半まで実現しないだろうと述べた。

パテックはロイヤルズがカンザス州ではなくミズーリ州を選ぶと保証はしなかったものの、「私たちはこのコミュニティも、この州も愛している・・・これはミズーリ州にとって正しい方向への一歩だと考えている」とつけ加えている。


記事提供:『The Associated Press(AP通信)』


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