ニュース

スティーラーズとの契約は「自分の魂にとって最善」な決断だったとQBロジャース

2025年06月11日(水) 09:10


ピッツバーグ・スティーラーズのアーロン・ロジャース【AP Photo/Gene J. Puskar】

6月第2週に入り、NFL界はアーロン・ロジャースがピッツバーグ・スティーラーズのユニフォームを着た姿を初めて目にした。

この新たなパートナーシップはロジャースが1年1,360万ドル(約2億1,400万円)の契約に調印した現地7日(土)に成立したものだが、その舞台裏では数カ月にわたる交渉と準備が進められていた。

ロジャースいわく、ごく自然な選択だったという。

10日(火)、参加必須のミニキャンプでスティーラーズの一員として初登場したクオーターバック(QB)ロジャースは「マイク・トムリンが大きな決め手だった」と報道陣に語った。

「これまで何度も彼と対戦してきた。3月か4月くらいかな、最後の日曜日に電話したときの会話は、この世界で経験した中でも最高にクールなものだった。だから、彼の存在は大きいし、彼の下でプレーするのが楽しみ」

ヘッドコーチ(HC)を務めるトムリンも、プロフットボール殿堂入りが確実視されるNFL20年目の大ベテランに賛辞を惜しまず、次のようにコメントしている。

「彼の実績を見れば分かる。われわれは彼を迎えられて本当にうれしい。彼もここにいることに興奮している。ただ、派手な予言はしない。腕まくりをして地道に取り組むだけだ。努力がすべてを物語るだろう」

ロジャースは契約締結までスティーラーズを長く――多くの人がまたせ過ぎだと指摘するほどの期間――待たせており、2025年シーズンの準備に遅れが出る懸念もささやかれていた。それでも、ロジャースによると「プライベート」で「いろんなことに対応していた」のだと明かし、今は「ようやくチームメイトたちと全面的に向き合える状態」になったとも語っている。

トムリンHCは、自身がスティーラーズでヘッドコーチを務めるより長い期間の経験を持つベテラン選手が5月や6月の練習を欠席したことが問題になるとは考えておらず、「20年プレーしているような選手以上に、(2025年ドラフト6巡目指名のQB)ウィル・ハワードのような選手にとっては、キャリアの現段階で6月のレップスは極めて重要だ」と冷静だ。

加えて、ロジャースの契約締結は参加必須のミニキャンプ中に新たなチームメイトたち――今オフシーズンにともにトレーニングに励んだワイドレシーバーのD.K.メットカーフを含む――と時間を過ごすには間に合っている。

ロジャースはメットカーフについて「西海岸で一緒にやる機会があった。彼とは何度も対戦してきたしね。体格が良く、運動神経が抜群で、スピードもあり、素晴らしいキャッチ力とボールスキルを持っている。でも、何より一番ワクワクするのは彼の人間性だと思う。かなりの人格者だ。最初に会話したときにちょっとからかったんだ。彼が“イエッサー”って10回くらい言うから、“それはこちらが41歳だから?”って聞いたら、“いえ、こういう話し方なんです”って言ってた。彼の性格も姿勢も、フィールド上での振る舞いも全部好きだ」と話した。

スティーラーズとしてメディアの前に登場した10日、今オフに結婚していたことも明かしたロジャースは、攻撃コーディネーター(OC)のアーサー・スミスに好印象を抱いたこと、そして名将として知られるトムリンHCの評価も相まって、スティーラーズでの新たな章を楽しみにしていると発言。メットカーフがロースターに名を連ねることも良く、スティーラーズという伝統ある組織の名声も後押しになる。「NFLにおける数少ない象徴的」なチームのひとつであり、「このエリアには特別な雰囲気がある」とロジャースは目を輝かせて語った。

それでもジェッツで過ごした2シーズンの苦闘、特にアキレス腱断裂でわずか4スナップで終わったジェッツ初年度を経験した中で、なぜ41歳にしてなお現役続行の意欲があるのか、疑問に思うのは当然と言えよう。

「必要ない。自分のエゴのためだけなら、プレーを続ける必要はない。これまでキャリアでも人生でもエゴから出した決断はたとえ成功しても虚しいことが多かった。でも魂に基づいた決断はたいてい満たされるものだ。今回の決断は自分の魂にとって最善だった。ここに来てコーチTや仲間たちと一緒にいる機会が今の自分にとって最高だと感じた。ここに来られてワクワクしている」

スティーラーズは明確なスターターを必要としていた。メイソン・ルドルフという経験豊富な司令塔を擁しているが、その後方はスカイラー・トンプソンとルーキーのウィル・ハワードという、やや心もとない顔ぶれだ。ロジャースがいなければ、スティーラーズは2025年シーズンを大きな懸念材料を抱えて迎えたことだろう。

トムリンHCはチームがQB次第で左右されることを理解している。近年は特にその重要性を痛感してきた。ベン・ロスリスバーガーの晩年やケニー・ピケット時代の不安定な状況、さらには昨季のジャスティン・フィールズからラッセル・ウィルソンへの交代など、すべての試合で1人のクオーターバックを起用できる贅沢な環境にいられないかもしれないことを理解するようになった。

その教訓からスティーラーズはルドルフを引き止め、トンプソンを補強し、ハワードを指名したのだ。そして今、ついにロジャースという大看板を迎えた。

目下、ロジャースはデプスチャートのトップに据えられている。2025年に黒と金のユニフォームを着るロジャースが、真っ当な理由でトップに君臨していくことが期待されている。

【C】