コルツがリチャードソンではなくジョーンズをシーズン第1週の先発QBに指名
2025年08月20日(水) 10:14
インディアナポリス・コルツのクオーターバック(QB)争いに決着がつき、新たな先発が決まった。
現地19日(火)、コルツが2025年レギュラーシーズンの先発にダニエル・ジョーンズを起用すると発表。
コルツは9月7日(日)にマイアミ・ドルフィンズとのシーズン初戦に臨むことになっている。
このニュースを最初に報じたのは『NFL Network(NFLネットワーク)』のトム・ペリセロだ。
2023年NFLドラフト全体4位指名を受けたアンソニー・リチャードソンは、プレシーズンでのポジション争いで十分な成長や進歩を示せず、先発の座を守れなかった。今後はリチャードソンの代わりに、かつてニューヨーク・ジャイアンツからドラフト1巡目で指名され、オフシーズンにコルツに加入したジョーンズが、NFLキャリアで初めてコルツのオフェンスを率いることになる。
『Indianapolis Star(インディアナポリス・スター)』によると、ヘッドコーチ(HC)シェーン・スタイケンは火曜日にジョーンズについて「彼が今シーズンの先発クオーターバックだ。そこに関しては短い猶予で見たくないと思っている」と述べたという。
フィールド上での競争は勝敗の予測がつかないほど接戦だったが、それは両者が優れていたからではない。トレーニングキャンプを通じて、ジョーンズもリチャードソンも練習で相手を引き離すことができなかった。プレシーズン第1週から第2週にかけては両者がそれぞれ成長を見せたものの、スタイケンHCは最終的にオフェンスをうまく統率している点を評価し、ベテランのジョーンズを選んだようだ。
スタイケンHCは火曜日に「私が一貫性について話してきたのはご存じだろう。それが本当に重視していた点だ」と述べている。
「実際にはスクリメージラインでのオペレーション、チェック、プロテクション、ボールを投げる位置、パス成功率など、すべてが要因となった。ダニエルはよくやっていたと思う。A.R.も進歩はあったが、まだそういう部分で成長し続ける必要があると感じている。今朝、2人と話す機会があったのだが、どちらも素晴らしかった。A.R.も素晴らしかった。彼自身も成長し、学ぶ必要があることを認識しているし、あと一歩のところまで来ていることも分かっている」
NFLでの6年間で70試合以上に出場してきたジョーンズは、経験面で優位だった。コルツは3月にジョーンズと1,315万ドル(約19億3,976万円)を完全保証とする1年1,400万ドル(約20億6,514万円)の契約を締結。これにより、できるだけ早くジョーンズを先発として起用し、実力を試すことの重要性と緊急性が増していた。
一方のリチャードソンは、プレシーズン中に新たな健康上の問題に直面。8月7日に行われたボルティモア・レイブンズ戦で、レイブンズのラインバッカー(LB)デビッド・オジャボに無防備のままサックされた際に小指を脱臼し、試合から離脱した。早期退場を強いられたリチャードソンがわずか6スナップしかプレーできなかった一方で、ジョーンズはその試合で30スナップに参加したため、事実上ジョーンズが優位に立つ結果となった。
リチャードソンは今シーズン第1週に、昨季に初めて経験した状況と同じ立場に置かれることになる。つまり、健康であるにもかかわらず、ベテランQBの控えとしてサイドラインで過ごすことになるのだ。
リチャードソンはこれまで何度もキャリアを中断されてきた。ルーキーシーズンは肩のケガにより1カ月で終了し、昨シーズンは斜筋のケガでシーズン第5週と第6週を欠場したほか、ベテランQBジョー・フラッコに一時的に先発の座を奪われる場面もあった。リチャードソンは2シーズンで15試合に出場し、稀有な運動能力を持つ選手としてポテンシャルを垣間見せている。しかし、先発QBとしての責任を果たせることは証明できず、チームはリチャードソンを成長させるための競争環境を作ることを目的に、オフシーズンにジョーンズと契約するほどもどかしさを感じていた。
しかしながら、その試みは期待外れに終わっている。リチャードソンは再び負傷し、2025年の先発争いで明確な成長の兆しを示すこともなかった。全体的な潜在能力はジョーンズより高いものの、新人契約の3年目を迎える今、リチャードソンがフランチャイズクオーターバックの座を確立するチャンスは確実に減りつつある。
ジョーンズが先発を務めるからといって、リチャードソンが2025年にフィールドに立たないわけではない。ジョーンズは全試合に出場したシーズンが一度もなく、コルツでも全17試合に出場する可能性は低いと考えられる。多くの人は、ジャイアンツでの最後の2シーズンで苦戦し、16試合に出場してタッチダウン10回に対してインターセプト13回という結果に終わったジョーンズのことを、その程度のクオーターバックと見なすはずだ。その傾向が2025年も続く場合、スタイケンHCはやむを得ない判断としてリチャードソンを再び先発に据えることになるだろう。
それでも、プレシーズンでの先発争いで敗れたことは、リチャードソンの長期的な展望に打撃を与えるものだ。以前、リチャードソンの将来は有望視されており、多くの人はアンドリュー・ラックが引退してからコルツが抱えていた問題に解決策がもたらされたと考えていた。しかし、今となってはチームが来年に新たな解決策を模索する可能性が高いと考える理由が十分にある。特に、ジョーンズが復調を遂げられなかった場合はなおさらだ。
コルツはこの4年間、プレーオフ進出を逃しており、2024年シーズンの不振を受け、ジェネラルマネジャー(GM)クリス・バラードは解任の瀬戸際に追い込まれた。コルツが近年苦戦している理由はQBポジションの不安定さにある。カーソン・ウェンツ、マット・ライアン、リチャードソン、ガードナー・ミンシュー、フラッコといった選手が起用されるも苦戦し、すぐに交代させられてきた。リチャードソンの獲得は、ついにその問題を解決する手立てになると期待されていた。
しかし、コルツのQBポジションは安定するどころか不確実な状況が続いている。驚異的なポテンシャルを秘める一方で、フロリダ大学でフルで先発を務めた経験が1シーズンしかないリチャードソンをドラフト全体4位で指名する決断は、勇気とやや盲目的な信頼を要するものであり、現時点では懐疑的な見方が正しかったことが証明されている。健康面の問題であれ、正確性やプロ意識の課題であれ、リチャードソンはコルツに一貫性をもたらすことができていない。今回の競争に敗れたことで、そのドラフト指名はこれまで以上に大きな失敗に見えるようになった。
その責任はバラードGMにあると言えよう。バラードGMは勝率5割前後の戦績を安定的に維持し、プレーオフ進出の可能性が十分にあるチームを構築してきたが、過去4シーズンでは最終的に期待外れの結果に終わっている。バラードGMに対する我慢の糸は切れかけており、その運命はジョーンズ次第とも言える状況だ。
スタイケンHCも厳しい状況に置かれている。2023年にミンシューを先発に起用してチームの競争力を保ったことは評価できるものの、接戦となったシーズン第18週のヒューストン・テキサンズで敗れ、その年もプレーオフ進出を逃した。2024年はその結果を上回るどころか、平均的で刺激に欠けるチームにすぎないことを証明してしまった。
ジョーンズを選ぶことはリスクに見えるかもしれないが、実際には逆かもしれない。もしオフェンス重視のスタイケンHCが2025年以降も職を維持したければ、自分の指示に従って実行してくれる信頼できるクオーターバックを起用するしかない。この決断が失敗に終わり、スタイケンHCが方針を転換した場合、彼が追い詰められていることが明らかになるだろう。昨シーズンを残念な結果で終えたこともあり、スタイケンHCの立場はすでに危うくなっている。
【RA】