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片手で戦い抜き、チャージャーズを勝利に導いた“スーパーヒーロー”QBハーバート

2025年12月10日(水) 11:13

ロサンゼルス・チャージャーズのジャスティン・ハーバート【Brooke Sutton via AP】

手術で治療した左手にグローブをつけ、右手でチームの命運を握り、ロサンゼルス・チャージャーズのクオーターバック(QB)ジャスティン・ハーバートは67分25秒間、必死にプレーを続けた。

ハーバートは骨折した手の痛みだけでなく、フィラデルフィア・イーグルスの猛烈なパスラッシュも耐え抜いた。

現地8日(月)夜、ハーバートはキャリア最多となる7回のサックを浴びながらも、第4クオーターの同点ドライブと延長戦での決勝ドライブを、片手と俊足を駆使しながら成功させ、チャージャーズを22対19の勝利に導いた。

ヘッドコーチ(HC)ジム・ハーボーは、左肘から出血もあった中でプレーを続けたハーバートについて「1週間前に手術を受けたばかりなのに、今夜ここでプレーした」と述べ、こう続けている。

「まるで映画を見ているようだった。クオーターバックがああいうことをやって“おっと、これはちょっと現実離れしているな”と思うような感じ。分かるだろう? 私にはそう映ったんだ。彼は負けを絶対に認めない。とにかくタフだし、まさにスーパーヒーローのようなクオーターバックだ」

成績を見ると、チームもハーバートも特に素晴らしい数字を残したわけではなかった。

ハーバートはパス26回中12回成功、タッチダウン1回、インターセプト1回を記録。パス成功率(46.2%)とパサーレーティング(59.6)はキャリア最低の数字だった。その一方で、シーズン最多となるキャリー数(10回)とランヤード(66ヤード)を記録。さらに、68.3%のプレッシャー率――2016年に『Next Gen Stats(ネクスト・ジェン・スタッツ)』が統計を取り始めてから3番目に高い――にも耐え抜いた。

ハーバートは自身の成績について「勝つことがすべて。それが最優先の仕事だ。もちろん、改善したいプレーはたくさんある」と振り返っている。

ハーバートはシーズン第13週に勝利したラスベガス・レイダース戦で手を骨折し、試合の翌日にあたる月曜日に手術を受けた。月曜日に欠場する選手が発表されるまで、ハーバートの出場可否は報じられていなかったが、本人はずっと前から出場することになると分かっていたと話している。

いつ出場が決まったのかと質問されたハーバートは「たぶん先週の日曜日だ」と笑みを浮かべながら答えた。

ハーバートは驚くべきことに手を骨折した状態で2勝0敗、6回以上サックされた試合で3勝0敗と好成績を収めている。そのため、ハーバートにとって左手を負傷した状態でプレーするかどうかは、ほとんど迷う余地のない判断だった。

「正直に言うと、ロッカールームのみんなのことしか考えていない。みんなもチームのために戦っている」とハーバートはコメント。

「みんなそうなんだ。(ラインバッカー/LB)トロイ・ダイや(コーナーバック/CB)エライジャ・モルデンも手を骨折しながら次の週もプレーしていたと思う。彼らがそうしてもあまり評価されない。俺はクオーターバックだから話題に上るけど、あいつらも戦っているんだ。ロッカールームには俺よりひどいケガを抱えながらプレーしている選手がたくさんいる。つまり俺にできるのは、みんなのために出場してベストを尽くすことくらいだ」

月曜日の試合で、片手を使えない状態でありながらチャージャーズを率いる準備ができていることをすぐに示したハーバートは、最初のドライブでわずか2分49秒の間に6プレーでチームを80ヤード前進させた。ダンプオフでパスを受けたランニングバック(RB)キマニ・ビダルは、サイドライン沿いを駆け抜けて60ヤードを獲得。その数プレー後、ハーバートはRBオマリオン・ハンプトンに4ヤードのタッチダウンパスを通した。

残念ながら、それはチャージャーズにとって最後のタッチダウンとなり、それ以降はキッカー(K)キャメロン・ディッカーによる5回のフィールドゴールと鉄壁の守備、そしてハーバートの奮闘に頼る展開となった。

ビダルはキャッチ1回でチーム最多となる60ヤードを記録。2位につけたのは主力ワイドレシーバー(WR)キーナン・アレンで、その成績はキャッチ3回で22ヤードにとどまっている。

シーズン第14週の最終戦は混沌とした展開となり、両チーム合わせて8回のターンオーバーが発生し、勝利チームの獲得ヤードはわずか275ヤードだった。ハーバート率いるチャージャーズは試合時間残り2分16秒、自陣28ヤードラインから攻撃を開始した時点で19対16とリードを許していた。

チャージャーズはそのドライブで、プレー11回で43ヤード前進し、ディッカーによる46ヤードのフィールドゴールで同点に追いついた。ハーバートはその間にキャリー3回で20ヤードを獲得している。

延長戦で最初に攻撃権を得ると、ハーバートは骨折した手でイーグルスのセーフティ(S)リード・ブランケンシップを突き放しながら、ライトタックル(RT)の外側を回り込んで12ヤード前進するという驚異的なプレーを見せた。

ハーボーHCは「彼はスーパーヒーローだ。競争心の塊だ。手を骨折しているのに相手を突き飛ばしていた」と述べている。

そのプレーについてハーバートは「あの場面では、たぶん本能的にやったんだ」と語った。

生まれ持った才能と粘り強さ、そして不屈の精神で、ハーバートはチームを6プレーで34ヤード前進させ、ディッカーによる54ヤードの決勝フィールドゴールにつなげた。

その後、Sトニー・ジェファーソンがイーグルスのQBジェイレン・ハーツのパスを奪い取り、勝利を決定づけた。結果として、チームの勝利に大きな影響を与えたのはやはり守備陣だったのだ。

とはいえ、月曜夜にヒーローとなったのは、片手で戦い抜いたクオーターバックだったと言えよう。

【RA】