チーフスQBマホームズがプレーオフ進出の望みに言及、「可能性がどんどん低くなっている」
2025年12月09日(火) 12:53
AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)西地区を長く支配してきた王者が、現地7日(日)の夜にアローヘッド・スタジアムでその座から滑り落ちた。カンザスシティ・チーフスはヒューストン・テキサンズに20対10で敗れ、地区優勝への道は完全に断たれた。連続地区制覇は9シーズンで幕を閉じている。
日曜日の敗戦を分けたのは、ヘッドコーチ(HC)アンディ・リードの重大な決断だ。スーパーボウル3度制覇の名将は、10対10の同点で残り10分18秒という場面で、自陣31ヤードからのフォースダウン残り1ヤードに挑む選択をした。リードHCが第4クオーターの同点状況で、自陣40ヤード以内からフォースダウンを試みるのはキャリア初だった。
さらに不可解だったのは、今季ショートヤードで安定してゲインを稼いできたランニングバック(RB)カリーム・ハントを起用しなかった点だ。代わりに控えのオフェンシブラインマン3人を並べ、クオーターバック(QB)パトリック・マホームズのパスを選択。しかしプレッシャーを受けたマホームズのパスはワイドレシーバー(WR)ラシー・ライスに届かず、不成功に終わった。
チームの公式サイトによれば、リードHCは「フォースダウンでオフェンスを苦しい状況に追い込んでしまった。攻撃的な姿勢を保とうとした結果であり、その責任はすべて自分にある」と語ったという。
「いけると思ったからこその決断だった。成功できると自信を持っていた。チャンスを生かすことが大事であり、あれはチャンスだと思った。しかし、自分が間違っていた。振り返れば誤りだったと言える。これまでフォースダウンでは良い結果を出してきたが、今回は判断を誤った」
なお、『Next Gen Stats(ネクスト・ジェン・スタッツ)』は残り10分で勝負に出たリードHCの選択を支持している。残りポゼッションが限られる状況でボールを前に進められれば、チーフスの勝率は3.5%上昇すると算出していた。
この失敗は、あと一歩が届かず、勝利を手放す試合が続いている今季のチーフスを象徴するような内容だった。
すでに2人の先発オフェンシブラインマンを欠いていたチーフスは、試合最初のスナップで控えのオフェンシブタックル(OT)ワーニャ・モリスまで失う苦しい展開。手薄になったオフェンスは、今季リーグ随一の堅守を誇るテキサンズ守備陣を相手にドライブを継続できなかった。ラン攻撃もこれまで同様に封じ込められたままだった。マホームズはパス33回中14回成功、160ヤード止まりで、3回のインターセプトを喫した。パスが通りそうで通らない場面も多く、試合を左右しかねなかったWRタイクアン・ソーントンへのロングパスも最後にキャッチしきれなかった。終盤にはタイトエンド(TE)トラビス・ケルシーの落球がインターセプトにつながり、敗戦を決定づけている。
マホームズのパス成功率42.4%、パサーレーティング19.8はともに自己ワースト。タッチダウン0回、インターセプト3回もキャリア最悪の数字だ。チーフスのQBがタッチダウンなし、インターセプト3回で試合を終えたのは、2011年シーズン第12週のタイラー・パルコ以来。また、パサーレーティングがこれほど低かったのは、2012年シーズン第8週にブレイディ・クインがオークランド・レイダース戦で記録した16.7以来となる。
ディフェンスが後半序盤で踏ん張り、第3クオーターにテキサンズを-2ヤードに抑えたことで、前半を10対0で折り返したオフェンスは同点に追いつくチャンスを得た。しかしながら、フォースダウンの攻撃失敗が響き、流れは一気に崩れていく。
この敗戦で、チーフスは13試合を終えて勝率.500 を割り込んだ。これは2012年以来のことで、その年にチームは2勝14敗でシーズンを終了。翌年にリードHCが就任し、今の強豪チームが築かれていった。
リードHCは今季のチーフスについて「まだ終わりではない。戦い続けるだけだ」と語った。
「長くこの仕事をしてきて、あらゆる状況を見てきた。だからこそ、前に進むしかない」
チーフスが10年連続で地区優勝を飾る可能性は完全に途絶えた。9連続の地区制覇はNFL史上2番目の長さで、2009年から2019年にかけて11年連続で達成したニューイングランド・ペイトリオッツに次ぐ記録だった。
今のチーフスは満身創痍で、主力たちは幾度もの激戦をくぐり抜けてきたかのように疲弊している。ターゲット5回でキャッチ1回、8ヤードに終わったケルシーは、まさに殿堂入り級のキャリア最終盤を迎えた36歳のタイトエンドの姿そのもの。マホームズも、過去7年間で21試合ものプレーオフを戦い抜いてきた選手らしく、長い休養を必要としているように映る。
『ネクスト・ジェン・スタッツ』のプレーオフ進出確率モデルによると、6勝7敗のチーフスがポストシーズンに進む可能性は15%だという。日曜日の敗戦により、チーフスは残り試合を全勝した上で、ロサンゼルス・チャージャーズやインディアナポリス・コルツの失速といった外部要因にも頼る必要が出てくる。
マホームズは「プレーオフ進出の可能性がどんどん低くなっていることは分かっているが、このチームの選手たちは与えられた機会すべてで全力を尽くすはずだ」と述べている。
「シーズンも終盤に入り、同じチャンスは2度と戻ってこない。相手は良いチームだったけど、こちらにも勝つチャンスはあった。必要な場面で遂行できなかっただけだ」
先発に就いてから毎年AFCのチャンピオンシップゲームに進み続けたマホームズだが、今季は早々にオフシーズンを迎える可能性がある。
【R】



































