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コルツQBリバースが敵地での番狂わせまであと一歩、「自分が主役ではない」

2025年12月16日(火) 12:27

インディアナポリス・コルツのフィリップ・リバース【AP Photo/Lindsey Wasson】

44歳のクオーターバック(QB)フィリップ・リバースが、誰もが想像しなかった結末に迫った。

最後にNFLの試合に出場してから1,800日。わずか3日間の練習を経て復帰したリバースは、2桁勝利を挙げているシアトル・シーホークスのホームで、終盤にインディアナポリス・コルツにリードをもたらし、番狂わせ寸前まで持ち込んだ。

残り47秒、リバースはキッカー(K)ブレイク・グループの60ヤードフィールドゴールにつながるドライブを指揮し、コルツは逆転に成功。しかし、ディフェンスがその後を踏ん張れず、シーホークスが反撃。現地14日(日)の一戦は、シーホークスが18対16で制した。

5年間の現役引退を経て復帰し、即座に実戦へ戻ったリバースの状況を踏まえれば、コルツが勝利していれば衝撃的な結果となっていたはずだ。

チームの公式サイトによれば、リバースは「フィールドに立てたことに感謝しているし、本当に楽しかった」と語ったという。

「ただ、今は悔しい気持ちでいっぱいだ。自分が主役ではない。チームは必死に戦って、ポストシーズン進出を目指して踏ん張っている。だから全員が落胆している。あと一歩届かなかった。試合の流れ自体は、どうやって勝つかという点も含めて、ほぼ想定通りだった。いわゆる我慢比べのような試合だったけど、最後までやり切ることができなかった。それに尽きる」

リバースの腕は全盛期ほど強力ではなく、パスに鋭さも欠けていた。それでも、プレーの理解力が衰えていないことを示した。常にターゲットの位置を把握し、タッチを生かしてレシーバーの走る軌道に合わせたパスを供給。44歳になっても、ヒットを受けて立ち上がるタフさも健在だった。

この日、リバースはパス27回中18回成功で140ヤード、タッチダウン1回、インターセプト1回を記録。そのインターセプトは、コルツにとって最後のオフェンスプレーで喫したものだった。

ヘッドコーチ(HC)シェーン・スタイケンは「とても勇気づけられたのは間違いない」と述べている。

「5年間のブランクを経てフィールドに立ち、勝利のチャンスをつくり、残り40秒で試合を決めるフィールドゴールに迫った。相手はリーグ屈指のディフェンスだ。復帰に懸けてきた思いを体現し、仲間のために必死に戦ってくれた。本当に素晴らしかった」

リバースは日曜日の一戦で見どころを演出し、試合唯一のタッチダウンパスを投げた。斜めに走り込んできたワイドレシーバー(WR)ジョシュ・ダウンズへのショートパスだった。このプレーにより、リバースは44歳以上でタッチダウンパスを記録したNFL史上5人目の選手となり、トム・ブレイディ、ジョージ・ブランダ、ビニー・テスタバーディ、スティーブ・デバーグと肩を並べた。

クオーターバック事情が厳しいチームにとって、リバースの存在は前向きな材料となった一方、オフェンス全体としてはシーホークスに選択肢を絞られ、フィールドを縦に使う展開は限られていた。『Next Gen Stats(ネクスト・ジェン・スタッツ)』によると、リバースは飛距離10ヤード以上のパスでは8回中2回成功で33ヤード、インターセプト1回。一方、10ヤード未満のパスでは18回中16回成功で87ヤード、タッチダウン1回を記録しているという。

残り3週間でリバースがかつての感覚を取り戻し、フィールドを縦に広げる力を取り戻せるかが焦点となる。

「健康を維持できれば、手応えはあるし、ここからさらに良くなっていくと思う」とリバースは話す。

「ただ、勝たなければ意味がない。良くなっても勝てなければ、3週間後には終わってしまう。そこが現実だ。でも、良くなっていく感触は確かにある。何しろ今回は初戦で、練習はたった3日だった」

44歳で高校フットボールのコーチ職を離れ、シーズン途中にチームへ合流し、わずか3日間の準備でリーグ屈指のディフェンスと敵地で対峙する。そこに大きな期待が寄せられていたわけではない。だからこそ、もし勝っていれば歴史的な一戦となっていただろう。

NFLはゼロサムのリーグであり、惜敗してもリバースやコルツに加点が与えられることはない。それでも、あの状況、あの相手、あの環境でリバースが示した姿は、多くの人の心を打った。

「もちろん、こんなことが毎日起きるわけじゃない。でも、何が起こるか分からないからといって、怖がって逃げない。その姿勢を示せたならうれしい」とリバースは語った。

「少なくとも、息子たちや、学校で自分が指導している選手たちが“コーチは怖気づかなかった”と思ってくれたら何よりだ」

「迷いが生まれることもある。それは現実だ。安全な選択肢は、家に帰ることや、挑戦しないことかもしれない。でも、もう一つの選択肢はやってみよう、どうなるか試してみようという心意気。若い選手や若者たちに、何か前向きなメッセージが伝わればいい。男子に限った話ではないし、それが目的でもない。すべては神の御心のままに、その導きを喜んで受け入れている」

コルツはAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)のプレーオフ争いで7勝1敗と好スタートを切ったが、その後は4連敗。直近6試合で5敗を喫している。シーズン終盤はサンフランシスコ・49ers、ジャクソンビル・ジャガーズ、ヒューストン・テキサンズとの対戦を残している。

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