ドルフィンズQBタゴヴァイロアがベンチに、ベンガルズ戦は新人QBエワーズが先発
2025年12月18日(木) 09:47
マイアミ・ドルフィンズのヘッドコーチ(HC)マイク・マクダニエルが決断を下した。クオーターバック(QB)トゥア・タゴヴァイロアはベンチに下げられる。
現地17日(水)、ドルフィンズがシーズン第16週に行われるシンシナティ・ベンガルズ戦を前に、タゴヴァイロアをベンチに下げ、ドラフト7巡目で指名した新人QBクイン・エワーズを起用することになったと、『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポート、マイク・ガラフォロ、トム・ペリセロがこの動きについて知る人物の話をもとに報じた。
その後、マクダニエルHCは水曜日中にQBの交代を正式に発表し、ザック・ウィルソンがエワーズの控えとなり、タゴヴァイロアが緊急時の3番手クオーターバックになるとつけ加えた。
マクダニエルHCは「クインがこのチームに勝利をもたらす可能性を最も高めてくれると思う」と報道陣に語り、自身の決断を説明。
「最終的にチームに必要なのは、そして私が求めているのは、確固たる信念を持ったクオーターバックだ。彼が新人であることは承知しているが、このポジションを最も確信をもってプレーできるのは彼だと感じた。その姿勢はフィールドにいるすべての選手に影響を与える」
水曜日、タゴヴァイロアはこのニュースに“落胆した”――“うれしくはない”――と明かしつつも、エワーズとウィルソンが試合に臨む準備を手伝うつもりだと語った。
タゴヴァイロアは報道陣に「俺はここにいる。先発じゃないなら、今の自分の役割は先発選手を支えてチームの勝利を後押しすることだ」と話している。
マクダニエルHCが火曜日にQB交代を検討していると明かしていたことを踏まえると、今回の動きは驚きではない。コーチ陣が先発選手について迷いを見せ始めると、たいていその後に交代が伴うものだ。
火曜日にクオーターバックのプレーが「十分ではなかった」と述べたマクダニエルHCは、エワーズからより良いパフォーマンスを引き出せるかを見極めることになる。
タゴヴァイロアがベンチに下げられたのは、最近の不調が原因だ。それは1週間や2週間の話ではなく、タゴヴァイロアは先発を務めながら1カ月以上にわたって調子を崩していた。
月曜夜に大敗した試合では、最初の3クオーターで65パスヤードの獲得にとどまり、インターセプト1回、攻撃の流れを断ち切るサック2回を喫した。タゴヴァイロアは最終的に253パスヤード、タッチダウン2回をマークしたが、それらはいずれも勝敗が決まった後に記録したものだった。
シーズン第15週より前の4連勝期間中、マクダニエルHCは爆発力のあるラン攻撃に比重を置き、パス攻撃を抑制していた。その結果、タゴヴァイロアのパスヤードは4試合連続で175ヤードを下回っている。相手はほとんど勝率5割未満のチームだったため、その戦術で勝つことができたが、パス攻撃が健全であることを示すものではなかった。
2025年シーズン、タゴヴァイロアはインターセプト数がNFLで最多(15回)となっている。『Next Gen Stats(ネクスト・ジェン・スタッツ)』によると、ドロップバックあたりのEPA(追加予想得点)は-0.06で、300回以上のパスアテンプトを記録したQBの中では下から4番目に位置し、これを下回っているのはテネシー・タイタンズのキャム・ウォード、ラスベガス・レイダースのジーノ・スミス、ベンガルズのジョー・フラッコだけだという。また、タゴヴァイロアは総合QBRも対象選手の中で、ウォード、スミス、ミネソタ・バイキングスのJ.J.マッカーシーに次いで4番目に低いとのこと。
4,624パスヤードを記録してNFLトップに立ち、プロボウルに選出された2023年シーズンに見せていた、素早い判断と精度の高いパスを軸とする攻撃はほとんど見られていない。今季はキャリア6年目のタゴヴァイロアが読みを誤り、投げ損ない、プレッシャーに苦しみ、新人選手のようなミスを繰り返す場面があまりにも多かった。
マクダニエルHCがこの1カ月間で意図的にパス攻撃を減らしたことは、タゴヴァイロアのプレーをどう評価していたかを如実に物語っている。ベンチ降格はそうした見方を決定づけるものとなった。
マクダニエルHCが2026年も続投する場合、一度ベンチに下げたクオーターバックを再び起用するのだろうか。あるいは、ドルフィンズにタゴヴァイロアを手放す余裕があるのだろうか。
ドルフィンズは2024年にタゴヴァイロアと4年2億1,240万ドル(約330億2,937万円)の契約を締結。そこから2年も経たないうちに、タゴヴァイロアは精彩を欠くプレーを理由にベンチに下げられた。契約期間があと3年残る中、タゴヴァイロアは2026年に5,640万ドル(約87億7,051万円)の保証金を受け取ることになっている。
放出やトレードには大きなコストが伴う。単純に放出すれば、9,920万ドル(約154億2,615万円)のデッドマネーが発生する。6月1日以降の放出であっても、2026年のサラリーキャップに6,740万ドル(約104億8,107万円)が計上される。春先のトレードなら負担はやや軽くなり、デッドマネーは4,520万ドル(約70億2,885万円)で済む。とはいえ、結果を出せずにベンチに下げられ、基本給が3,900万ドル(約60億6,471万円)のクオーターバックを、獲得したいチームなどあるのだろうか。
デッドマネーの負担を受け入れたチームの例はある。最も顕著な例はデンバー・ブロンコスがQBラッセル・ウィルソンを手放したことだ。ブロンコスは2024年の5,300万ドル(約82億4,179万円)を含め、過去最高の8,500万ドル(約132億1,797万円)のデッドマネーを抱えることになった。
タゴヴァイロアがベンチに下げられたもう1つの要因は、その負傷歴だ。タゴヴァイロアはキャリア最初の5シーズン中4シーズンで複数の試合を欠場し、脳しんとうを何度も発症したほか、2024年にはシーズン終了につながる股関節のケガにも見舞われた。タゴヴァイロアをシーズン終盤に控えに回せば、チームはオフシーズンの選択肢を狭めかねない新たな負傷を回避できる。
『Over The Cap(オーバー・ザ・キャップ)』によれば、ドルフィンズはすでにサラリーキャップの問題を抱えており、来季のキャップ超過額は約1,100万ドル(約17億1,056万円)と予想されているという。この問題に加えてタゴヴァイロアの契約に伴うデッドマネーに対処するには、非常に高度なキャップ調整が必要になる。
ドルフィンズはアトランタ・ファルコンズの戦略を参考にできるかもしれない。高額報酬の控えQBとしてカーク・カズンズを抱えているファルコンズは、6月1日以降のトレードで負担が多少軽減されることを期待している。ただし、その場合は安価な新人契約を結んだ先発QBが指揮を執る体制が前提となる。
タゴヴァイロアがフィールドに立って報酬に見合うパフォーマンスを発揮しない限り、最善と言える選択肢は存在しない。
ドルフィンズのオフシーズンの動きはエワーズがシーズン終盤にどのようなプレーを見せるかに左右されるだろう。
ドラフト7巡目指名されたエワーズは、かつてニューヨーク・ジェッツからドラフト1巡目指名され、ここ数週間でバックアップを務めていたウィルソンを差し置いて先発起用されることになった。ウィルソンではなくエワーズを起用する判断は、新人選手の実力を見極めるための動きに見える。エワーズが例えばサンフランシスコ・49ersのQBブロック・パーディーのように活躍すれば、ドルフィンズは最も報酬が高いポジションで安価な先発候補を手にすることになる。
エワーズはこれまで1試合に出場しており、シーズン第7週に大敗したクリーブランド・ブラウンズ戦でタゴヴァイロアに代わって途中出場した。いわゆる敗戦処理を任されたエワーズはパス8回中5回を成功させて53ヤードを記録。今度は1週間の準備期間を経て、実力を示す機会を得ることになる。
テキサス大学で3年間先発を務めたエワーズは、36試合に出場して9,128パスヤード、タッチダウン68回、インターセプト24回を記録した。22歳のエワーズは飛び抜けて強い腕力を持つわけではないが、ボールを素早く放ち、リズムよくプレーすることができる。そうした性質はマクダニエルHCのオフェンスで有利に働くはずだ。新人であるエワーズには、自身のプレーの進め方をしっかり理解していることを示し、テキサス大学での最終シーズンに足かせとなった悪影響を及ぼすプレーを避けることが求められるだろう。
正式にプレーオフ争いから脱落したドルフィンズは、シーズン終盤にかけてドラフト7巡目指名選手にチャンスを与えることになった。これは試す価値のあることだと言えよう。エワーズが好印象を残せば、チームは2026年シーズンに向けてQBポジションに関する有力かつ低コストの解決策を得られる。仮にエワーズが結果を出せなかったとしても失うものはなく、4月のドラフトで1巡目指名する選手に目を向けることができるだろう。
【RA】



































