チーフスがアローヘッド・スタジアムを離れ、州境を越えて本拠地を移転すると発表
2025年12月23日(火) 11:07
現地22日(月)、カンザスシティ・チーフスが長年の本拠地であるアローヘッド・スタジアムを離れ、カンザス州とミズーリ州の州境を越えた場所に建てる新しいドーム型スタジアムに移転すると発表。新スタジアムの完成は2031年シーズン開幕に間に合う見込みだ。
この発表は、満員となった州議会議事堂の議場でカンザス州議会議員たちが全会一致でスタジアムおよび周辺の複合用途地区の建設費の最大70%をカバーするためのSTARボンド(*)発行を承認した直後に行われた。
【(*)編集部訳注:STAR/Sales Tax and Revenue債はカンザス州の自治体が大規模な商業、娯楽、観光プロジェクトの開発資金を調達するために債券を発行できる資金調達手段】
この債券は、スタジアム周辺の特定区域で得られる州の売上税および酒税の収入で償還される。
チーフスのオーナーであるクラーク・ハントは「チーフスの試合開催地は変わるが、変わらないこともある。ファンはこれまで通りNFLで最も大きな声援を送る存在であり、私たちの試合は世界で最もテールゲートパーティーに適した場所であり続ける。選手やコーチはチャンピオンシップに挑む準備ができている。フィールド内外を問わず大きな夢を描いているからだ。そして、次の章へ進む準備も整っている」と述べた。
チーフスは新しいスタジアムをカンザス州カンザスシティに建設する予定で、場所はカンザス・スピードウェイや『The Legends(ザ・レジェンズ)』として知られる商業エリアの付近となる見込みだ。周辺にはMLSクラブ、スポーティング・カンザスシティの本拠地であるチルドレンズ・マーシー・パークも存在する。
チームはカンザス州カンザスシティ郊外のオレイサに新たな練習施設も建設する予定だ。
カンザス州知事ローラ・ケリーは「本日の発表はまさに歴史的です。実際、少し現実離れしています」と述べ、こう続けている。
「本日の発表は、これから何世代にもわたってカンザス州民の生活に影響を与えるでしょう。私たちの州にとってはまさに完全にゲームチェンジャーです」
「私たちはずっとチーフスファンでした。今後はチーフスファミリーとなります」
チーフスの移転はミズーリ州の議員やマイク・キーホー知事にとって大打撃となる。彼らは過去10年で2つ目、かつ州内で3つ目となるNFLフランチャイズの州外流出を防ぐため、独自の資金調達案を練っていた。かつてラムズはザ・ドーム・アット・アメリカズ・センターを建て替える資金を確保できなかったことなどを理由に、セントルイスからロサンゼルスへ移転している。
キーホー知事は6月に、新設または改修されるスタジアムの建設費の最大50%をカバーする債券の発行や、各スタジアムにつき最大5,000万ドル(約78億2,210万円)の税額控除、さらに地方自治体からの支援(具体的な内容は未定)を認める特別立法会議を支持していた。
ハントは「50年以上にわたり、私たちはミズーリ州のジェファーソンシティ、ジャクソン郡、カンザスシティで素晴らしい協力関係を築いてきた。その協力関係が終わったわけではなく、今後も共に取り組んでいくことを楽しみにしている」と話している。
チーフスは当初、カンザスシティ・ロイヤルズとの共同事業としてアローヘッド・スタジアムの8億ドル(約1,251億6,080万円)規模の改修工事を計画していた。ロイヤルズも同様にカウフマン・スタジアムに代わる新施設の建設を計画している。両施設は駐車場を挟んで数百ヤード離れた場所に位置し、両チームともミズーリ州ジャクソン郡とのリース契約を結び、2031年1月に契約満了を迎える予定だ。
ジャクソン郡の有権者は昨年、フットボールスタジアムの改修費用やミズーリ州カンザスシティ中心部にロイヤルズの新球場を建設する計画に充てられる予定だった売上税の延長案を圧倒的多数で否決した。
「取り組みはまだ始まったばかりだが、2031年にカンザス州とともに私たちのビジョンを実現できることを楽しみにしている」
The work is just beginning, but we’re excited to bring our vision to life with the State of Kansas in 2031. pic.twitter.com/Ca2QmA9H8n
— Kansas City Chiefs (@Chiefs) December 22, 2025
月曜日のカンザス州議会でロイヤルズについては議論されなかったが、州境を越えて移転する計画は勢いを増しているようだ。球団の関連会社はすでに、カンザス州オーバーランドパークにある土地の抵当権を購入している。
ミズーリ州カンザスシティのクイントン・ルーカス市長は次のように語った。
「チーフスは遠くへ行くわけでも、まだ去ったわけでもないが、カンザスシティ市民として、元シーズンチケット保持者として、そして生涯にわたるチーフスファンとして、今日は大きな痛手を感じている。経営上の判断は現実であり、その点は理解しているが、アローヘッド・スタジアムはそれ以上の存在だ――家族であり、伝統であり、カンザスシティの一部で、私たちが決して離れることのない場所だ」
ハントは亡き父でありチーム創設者のラマー・ハントが愛したアローヘッド・スタジアムを改修することが最も望ましいと、長年にわたり語ってきた。グリーンベイ・パッカーズのランボー・フィールドと並び、NFL屈指の名所とされているアローヘッド・スタジアムは、テールゲートパーティーの盛り上がりやホームゲームでの優位性でも知られ、現在は最も歓声が大きいスタジアムとしてギネス世界記録を保持している。
2026年夏、アローヘッド・スタジアムではワールドカップの試合が6試合実施される予定で、それにはラウンド32や準々決勝の試合も含まれている。
ラマー・ハントは1959年8月14日にチーフスを創設。チームは当初ダラスを本拠地とし、テキサンズと呼ばれていたが、当時のカンザスシティ市長H・ロー・バートルに説得され、シーズンチケット販売数を3倍に増やすことやミュニシパル・スタジアムの座席数を拡張することを条件に、ミズーリ州に移転した。
1972年、チームはカンザスシティ中心部の東に位置するトルーマン・スポーツ・コンプレックス内のアローヘッド・スタジアムに本拠地を移した。
スタジアムは長年にわたり数多くの改修を重ね、スポーツ環境が変化する中でも存在感を保ってきた。しかし、スタジアム周辺の経済開発はほとんど進んでおらず、施設自体も老朽化が目立ち始めている。また、収益向上に活用できるラグジュアリースイートや付帯施設の数にも限界がある。
ハント家は長年にわたってアローヘッド・スタジアムを愛してきたが、近年では新スタジアム建設の計画にも前向きになっている。
新スタジアムは、アローヘッド・スタジアムが抱える多くの課題を解決するだけでなく、固定式または可動式の屋根を備えることで年間を通じて利用できるようになる見込みだ。そうなれば、コンサートや各種イベント、カレッジフットボールのボウルゲーム、ファイナルフォー、そしてラマー・ハントが長年抱いてきた夢の1つであるスーパーボウルの開催が可能になるだろう。
クラーク・ハントは「州境の両側にいるチーフスファンなら誰でも、私たちが共に築いてきた成功がこの地域全体の知名度を高めたと言うだろう」と述べ、こう続けている。
「スポーツはこのコミュニティの基盤に深く根付いている。ニューヨークやロサンゼルス、ヨーロッパや南米を訪れたとき、自分が州境のどちら側出身か説明する必要はない。カンザスシティ出身だと言えば、相手がチーフスの話題を出す可能性はとても高い」
記事提供:『The Associated Press(AP通信)』
【RA】



































