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批判は”外の雑音”だとバッカニアーズQBブレイディ

2020年11月30日(月) 16:58

タンパベイ・バッカニアーズのトム・ブレイディ【AP Photo/Mark LoMoglio】

クオーターバック(QB)トム・ブレイディは新たな機会とフレッシュなスタートを求めてタンパベイにやってきた。今、明らかに時機が悪い中でそういった夢を追いかけるのがいかに難しいかを、ブレイディは体感している。ブレイディは今、ニューイングランドで過ごした20年にはなかったことを経験している。問題は、そこに疑念の抱かれるコーチング上の決断や、予期されたケミストリーの不足が多く含まれることだ。

タンパベイ・バッカニアーズは現地29日(日)に27対24でカンザスシティ・チーフスに敗れた。とは言え、このチームにしばしば起こることとして、点差は試合の真の印象を反映してはいない。バッカニアーズは試合の大半で、チーフスのペースについていくのに苦戦していた。

7勝5敗となったバッカニアーズのヘッドコーチ(HC)ブルース・エリアンスは、「8月には誰もがわれわれにロンバルディトロフィーを渡そうとしてきた」と話している。

「ビッグネームだけ投入すればいいというものではない。練習を積まなくてはならない。お互いが同期するすべを学ばなくてはならない。それには時間がかかる」

バッカニアーズはここ4戦で3敗を喫した。現地11月2日にニューヨーク・ジャイアンツを25対23で下した試合がそれほど印象的なものではなかったのを踏まえれば、過去5週間で目覚ましいプレーを見せたのは一度のみということになる。才能あふれるチームらしからぬ事態だ。これまでのところ、現時点で勝ち越しているチームに対する白星は2つしかない。

最新の試合は、見る者に再びバッカニアーズが混乱している印象を与えた。ブレイディは345パスヤードとタッチダウン3回をマークしたが、2週連続で2回のインターセプトを喫してもいる。ゲーム序盤にはブレイディとワイドレシーバー(WR)たちの足並みがそろっていない様子も散見された。また、第3クオーターのランニングバック(RB)ロナルド・ジョーンズ二世の34ヤードのランを除き、ランゲームも鳴りを潜めている。

前半のバッカニアーズは、彼らがどこに行きたいのかまだ分かっていないチームであることを思い起こさせた。

試合後の記者会見の中で、ブレイディは「フットボールはリズムがすごく大事。リズムを保ち、リズムを見つけることがね。前に進み続ける中で、僕たちは自分たちについてもっと知り、何が必要なのかを理解していく。仕事に戻り、シーズンのラストクオーターでもっとうまくやれるよう努力するつもりだ」と話している。

ブレイディとバッカニアーズが5年を共に過ごせば、それも分かってくるだろう。シーズンが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受ける中で苦戦してきたバッカニアーズだが、それを言い訳に時間稼ぎをすることはできない。なぜなら、このチームは迅速にチャンピオンシップ制覇を果たすことが求められるチームであり、そのことはニューイングランド・ペイトリオッツを離脱したブレイディが新たなメンバーとして最初に加わったときから分かっていたからだ。

このチームが抱える明確な問題の一つが、過剰な才能だ。バッカニアーズはすでに才能が豊富だったロースターに、多くのビッグネーム――ロブ・グロンコウスキー、レナード・フォーネット、アントニオ・ブラウン――を加えてきた。しかし、カンザスシテイでアンディ・リードHCがすべてのスキルプレーヤーを管理しているようには、コーチ陣が全員を活用する術を理解できていないように見える。

ここ1カ月のバッカニアーズを見守ってきた者には、創造性の不足も見えているだろう。多くの実況者や解説者たちが、プレスナップモーションの不足や、しばしばボールがスナップされてからデイフェンスを読むことがブレイディに要求されている点について繰り返し指摘してきた。エリアンスHCと攻撃コーディネーター(OC)バイロン・レフトウィッチは、過去数週間でブレイディの仕事を難しくしてしまった。

そうなってしまった原因の一部には、殿堂入り確実なQBへの過度の信頼があるかもしれない。また、コーチングのおごりとも関係している可能性がある。しかし、最近になってバッカニアーズ攻撃陣に浴びせられている批判について、ブレイディはこう話している。

「外の雑音さ。負けているときには、そういうものに付き合わなきゃいけない。僕は今一緒にいるみんなとプレーするのが好きだし、コーチもこの組織全体も、信じられないくらい素晴らしい。今季のラスト4週間は、確実にいい仕事をしなきゃね」

WRクリス・ゴッドウィンも「自分たちがチームとして何なのか、何になれるのかを、俺たちは理解している。今も互いについて学んでいて、成長中だ。4試合残っているから、まだ可能性は無限大さ」とつけ加えた。

新たな敗北の中でもポジティブだったのは、後半のブレイディがより“らしく”見えたことだ。ブレイディはプレッシャーを受けながらもダウンフィールドでオープンになっているレシーバーを見つけ、ドライブを組み上げてタッチダウンにつなげている。

バッカニアーズがこの黒星から学ぶことがあるとすれば、彼らは試合の後半に自分たちが必要としているトム・ブレイディを見いだしたという点だろう。確かに、異例のオフシーズンが響き、彼らは今でもたくさんの仕事を進めている。それでも、シーズンの今の時点となってはそんなことに構う者はいない。今大事なのは、バッカニアーズが自分たちにした約束を真に実現できるかどうかだけだ。

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