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黒星ながらも「勇敢な」パフォーマンスで視聴者の心を奪ったワシントンQBハイニケ

2021年01月11日(月) 00:44


ワシントン・フットボール・チームのテイラー・ハイニケ【AP Photo/Al Drago】

サタデーナイト以前は、オールド・ドミニオン大学での功績とXFLでの勝利が最も有名だったテイラー・ハイニケ。

だが、もはやそうではない。

ハイニケはタンパベイ・バッカニアーズとのワイルドカードゲームで31対23で敗れながらも、英雄的な努力によって44回中26回のパスをコンプリートして306ヤードを獲得、タッチダウン1回とインターセプト1回という成績で、見違えるほどの力を見せたワシントンのオフェンスを突き動かし、1スコアゲームの大健闘に導いた。

「彼は(機会を)うまく利用し、われわれのために素晴らしい仕事をしてくれた」とワシントン・フットボール・チームのヘッドコーチ(HC)ロン・リベラは述べた。「今日彼に機会を与えることができ、全員が本当に燃えていた」

ハイニケがいなければ、ワシントンがバッカニアーズ相手にわずかな勝機以上のものを見いだせたかどうかは疑わしい。通常は強固な彼らのディフェンスはQBトム・ブレイディを追うのに苦戦し、12回のポゼッションで強いたパントはわずか3回、思ったよりも高得点の争いとなったゲームで31ポイントを献上してしまった。これでワシントンの希望の星に押し上げられたハイニケは、リベラいわく“勇敢な”パフォーマンスを絞り出している。

彼は期待以上の働きで後半2回のタッチダウンドライブとフィールドゴールのドライブをリードして、最後の最後までチームを逆転可能なポジションにとどめてみせた。終盤になってバッカニアーズがプレッシャーを強めるまで追い詰められることなく、ハイニケは序盤のインターセプトを立て直してしっかりとゲームを組み立て、『Twitter(ツイッター)』を視聴者の興奮と驚きの反応で埋め尽くした。

ハイニケはプレッシャーをかけられても動じず、フィールドを見渡し、さまざまなデプスとロケーションでターゲットをヒットしていった。ほんやりしたユニットだったワシントンのオフェンスがフィールドを突き進んでいつでも得点できるものに変化したのは、全てハイニケの落ち着きと配分のおかげだろう。

「彼は数多くのプレーをした。非常に落ち着いていた」とバッカニアーズのHCブルース・エリアンスは試合後、ハイニケについて評している。

彼のベストプレーは腕ではなく、足から生まれた。崩壊したポケットを抜け出し、左にロールしてからパイロンに突進したハイニケは、ダイブしながらボールを突き出した。ボールをパイロンに当てた彼はゴールラインを越えてタッチダウン。駆けつけたチームメイトのチェイス・ヤングは背中のハイニケの名前を指さし、カメラに向けて明確なメッセージを送った。“この名前を忘れてはいけない”と。試合後ハイニケは、このダイブで肩関節が脱臼したままプレーしていたことを明らかにした。これが原因で、その後試合中にヒットされた際に短時間フィールドを離れたが、次の攻撃ドライブで戻ってきている。

「フィールドで懸命にプレーし、全力をささげる者を彼らは尊敬する」とリベラは述べた。「自然とついていきたくなるんだ。そいうことが実際に起きた。皆がテイラーについていった。彼の周りに集まり、必死で戦った。本当に必死だった。私はこの立派なグループをとても誇りに思う」

突然のXFLの消滅後はフットボールの世界に残れるかどうかも分からなかったハイニケだが、必要に迫られたワシントンが彼に声を掛けた。オールド・ドミニオン大学とセントルイス・バトルホークスの元パサーは仕事をやり遂げ、自らNFLで居場所を見つけたかもしれない。

次の目的地が決まるのはこれからだが、この夜、彼はワシントンのQBで、プレーオフのスターターだった。そこでハイニケは結果を出した――たとえ試合には敗れたとしても。

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