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キャリア終盤を悟り、すべての瞬間を大切に味わうパッカーズQBロジャース

2021年01月15日(金) 16:22

グリーンベイ・パッカーズのアーロン・ロジャース【Todd Rosenberg via AP】

多くの得点を挙げながら、ときに厄介な時期のあったキャリアの中で、アーロン・ロジャースは5度のNFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)チャンピオンシップ戦を経験した。馴染みのある、寒さに凍りつくランボー・フィールドで行われた試合は、その中の1つだけだ。そして、その試合はロジャースの中で忘れたい経験となっている。

13年前、零下となった1月の夜の“Titletown(タイトルタウン)”で、ロジャースは成す術もなくグリーンベイ・パッカーズがニューヨーク・ジャイアンツに23対20で敗れるのを見つめていた。オーバータイムの2度目のスナップで当時の正QBであるブレット・ファーブがインターセプトを喫し、試合は決している。3年目のバックアップだったロジャースはサイドラインである仕事に励んでいたものの、気温マイナス1度、体感温度はマイナス23度という中で、その仕事を断念していた。

「オー・マイ・ゴッド。小さなノートに記録を取ろうとしたが、できなかったんだ」とロジャースは最近のインタビューで思い出している。

「メモを取るためにグローブを脱ごうとして、手は凍りついていた。できなかったのさ。第2クオーターでノートを放棄した。自分が参加した中でも2番目に寒い試合だった(1番は同じシーズンの12月初旬にシカゴで行われた試合)し、俺たちはあんなにもいいチームだったのに、みじめなシーズンの結末だった」

ロジャースがファーブのバックアップを務めたのはそれが最後であり、ファーブは8月にトレードでチームを去っていった。それからの13シーズンで、ロジャースは殿堂入りQBであるファーブに肩を並べている。そして、これから数週間で3度目のMVPの栄誉に浴すれば、その部分でもファーブに匹敵することになる。

より重要なこととして、ロジャースは2つ目のスーパーボウルリングを追いかけており、トップシードのパッカーズはホームでロサンゼルス・ラムズと現地16日(土)に対戦する予定だ。

もしパッカーズが勝利すれば、ロジャースはついにカンファレンスタイトル戦を最も愛するスタジアムでプレーできることになる。カリフォルニアで育ったロジャースは、ランボー・フィールドはたとえファンがいなくてもホームチームに大きなアドバンテージを与えると確信している。

「冬のグリーンベイには獣がやってくるのさ」とロジャースは言う。

37歳のロジャースは、そのキャリアにおいて何も保証されない段階にきている。2020年シーズンは自分の状況と技量について認識を新たにして戦いに臨んだロジャースは、そのメンタリティがハイレベルでプレーする役に立ったと考えている。

「今年は本当にすべての瞬間を大切にしようと努力していて、全部を楽しもうとしている。ただ聞こえてくる音だとか、ロッカールームでのやりとりといったもののすべてを楽しんでいるんだ。必ずしも“これが俺のグリーンベイでのラストイヤーだぞ”と思っているわけじゃなく、このリーグでの自分の時間が始まりよりも終わりに近づいているのを把握し、俺たちのゲームを作り上げているものや経験のすべてを大切にしたいんだ」とロジャースは語った。

「ただ日曜日や月曜日や木曜日――それに今年は土曜日も――プレーするだけにとどまらない。ロッカールームでのジョークやちょっとした会話、意味のある議論、練習の傍らでの対話・・・。多くの人たちが目を向けようとしないたくさんの特別なこと。すべてが終わった後に考えだすようなことだ」

「どんな意味でも、俺は今年が自分のラストイヤーだとは思っていないが、今年はすべてをできる限り楽しんでいて、特に、ファンがいないという奇妙な環境の中でそうしている」

昨年4月に行われたドラフト初日の夜、ロジャースはグリーンベイでの自らの未来と直面することを強いられた。パッカーズがトレードアップしてユタ州立大学のQBジョーダン・ラブを全体26位で指名したのだ。パッカーズのヘッドコーチ(HC)であるマット・ラフルアーがロジャースは“このフットボールチームのリーダー”にとどまり、“彼が長くリーダーであると考えている”と述べたものの、かつてファーブと交代したロジャースには、言外に含まれているであろうことが分かっていた。

「特にドラフトの後では、自分にとってそのことからメンタル的に自由であることが重要だった。苦痛から解放され、予想から自由であり、将来の考えにとらわれないことが。自分はそうできたと感じている。そのおかげでシーズンに対してとても穏やかに臨めたし、集中できた。とにかく毎日の仕事に感謝し、全ての瞬間を楽しもうと努力した」

「自分に制御できないことはあって、それは理解しているし、尊重している。そこと戦うつもりはなく、この組織にいる誰に対しても怒りやフラストレーションを抱えたりしなかった。自分が今いる位置に本当に満足していて、そのおかげで1年を通してクリアな気持ちを持つことができたと思う」

フィールド上でロジャースは相手守備陣を蹴散らし、リーグベストのパス成功率70.7%と4,299ヤード、これもリーグ最高のタッチダウン48回と、わずか5回のインターセプトを喫した。パサーレーティング121.5はリーグ史上、1シーズンの記録として2位にあたり、それを越えているのは2011年にロジャースが記録した122.5だけだ。

ラフルアーHCにとっては、悩む必要のない決断だという。

「毎週毎週、彼を上回るプレーをしている者など私は知らない。数字について話すことすらない」とラフルアーHCは先月に話していた。

「彼はものすごくたくさんのことを、あれこれとやっている。われわれは彼に多くのものを課した。そして、彼は周りにいるすべての選手を高めている」

ロジャースは「このオフシーズンに自分がやってきた仕事を本当に誇りに思っている。フィジカルな部分だけではなく、今年自由にプレーすることを可能にしたメンタルな部分でも。すごく奇妙ではあったけど、フィールド上ですごく楽しいシーズンだった」とコメントし、次のように続けている。

「雰囲気や環境、ランボー・フィールドのプレーを特別にしているすべてのもの、そういった意味では一番楽しいシーズンだったと言うことはできない。でも、フィールド上のことに限って言えば、そして、それを最大に活用するという意味では、本当にスペシャルなシーズンだった」

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