トム・ブレイディ帰還よりも、自チームの好転に集中するペイトリオッツ
2021年10月03日(日) 11:49クオーターバック(QB)トム・ブレイディがタンパベイ・バッカニアーズを率いて待望のニューイングランド帰還を果たす日が迫る中、ニューイングランド・ペイトリオッツのコーチやスタッフがジレット・スタジアムの上層階で深夜に開くであろうハイレベルな準備会議の内容を知りたいと思うのは自然なことだろう。朝4時の映像研究中に生まれたひらめきが話し合われているのか、はたまた、この数週間に限らず、昨年にブレイディがフォクスボロからタンパに移り住んだ日から練ってきたゲームプランを話し合うのか。
そういった会議が実際に開かれていたとしても、内密に集まった人々は誰もそれを事実だと認めようとはしないだろう。その建物の中では緊張感が漂っている――が、それはいつものことだ。今週は特に緊張感が高まっているように見えるが、それはフランチャイズ史上最も偉大な選手の帰還だけではなく、ペイトリオッツが現在1勝2敗で、前回の試合でニューオーリンズ・セインツを相手に面目を失ったことが理由として挙げられる。
セーフティ(S)デビン・マコーティーは先週の試合直後に「目の前のことに夢中になるほど俺たちは優秀じゃないから、もっとやるべきことに集中して、攻守両面から彼ら(バッカニアーズ)を観察したい。彼らのオフェンス、ディフェンス、スペシャルチームをすべて見て、頭にたたき込む。他のことは気にしていられない」とコメント。
また、14年目のベテランワイドレシーバー(WR)マシュー・スレイターは次のように話している。
「今週はトーマス(トム・ブレイディ)の帰還に関する話題が多くなるだろうし、ある程度はそうなるべきだと思う。彼は祝福されるべきだ。でも、日曜日に試合する俺たちにとっては対戦相手にかかわらず、準備をし、集中し、試合で良いプレーをして、勝つことが大切だ」
スレイターが示唆していたように、良いプレーをして勝つ――というのは今季、現時点のペイトリオッツにとっては捉えどころのない目標だ。
ワイドレシーバーのジャコビ・マイヤースは週の半ばにこう言った。
「コーチ(ビル・ベリチック)は一番に、確かに良い選手はいるが、優れたチームとしてのプレーができなかった、って言っていた」
マイヤースの言うとおりだ。スコアリングディフェンス、パスディフェンス、ディフェンス全体に関してもトップ5以内に入り、オフェンスのサードダウンコンバージョン率はNFL10位(44.7%)につけるなど、コーチングスタッフが進歩の証拠として挙げられる数字はたくさんある。ところが、シーズン第1週のマイアミ・ドルフィンズ戦でランニングバックのデイミアン・ハリスが決定的なファンブルを喫したように、ゲームを左右する許し難いミスもある――メンタル面からくるミスが多いことはさらに都合が悪い。
その典型的な例が先週日曜日に開催されたセインツ戦だ。WRマーキス・キャラウェイのタッチダウンキャッチでセインツが14対0とリードしていたハーフタイムの直前、新人QBマック・ジョーンズが31ヤードと13ヤード、7ヤードのパスを通して相手をレッドゾーンの端に追いやるなど、ペイトリオッツは2分間のドライブで見事に応戦した。ここで、タッチダウンの有無が今後を左右するという局面に差しかかる。しかし、セインツの22ヤードラインから第4ダウン残り1ヤードの場面で、5人の選手の誰にでも起こりうることだったとはいえ、タイトエンド(TE)ハンター・ヘンリーがフォルススタートで反則をとられてしまった。そして、ペイトリオッツはフィールドゴールを選択せざるを得なくなっている。
このようなミスはまったくもってペイトリオッツらしくない――ただ、チームがこれを克服できるほどの実力を持っているようにも見えなかった。
「これは新しいチームだ」とマコーティーは言う。「過去にいた選手やチームがやってきたことは、今のチームには何の影響もない。その人たちは今、ここでプレーしていないからだ。今の俺たちが何者であるかだ。今の俺たちが何を生み出すかだ」
『NFL Network(NFLネットワーク)』のマイク・ジアルディによれば、あるペイトリオッツのベテラン選手が今週に「これは俺たちのなりたい姿じゃない。恥ずかしい話だけど、(ビル)パーセルズは何と言ったんだ? 記録通りの実力だと言えるのか? 少なくとも今は、それに異議を唱えられない」と明かしたという。
ペイトリオッツはチームの問題を解決しようとしている一方で、ブレイディの帰還に関する絶え間のない雑音に対処しなければならない。元QBへの反感からではないものの、ロッカールームではすでに雑音は薄れてきている。とはいえ、ペイトリオッツが苦戦している状況を考えると、ブレイディがまだ高いレベルでプレーしていること、新天地で優勝したばかりであること、彼を支える選手たちが今年はさらに良いパフォーマンスをしていることを思い知らされるのは、当然ながら腹立たしいだろう。また、父親やトレーナーからの言葉も加わり、ブレイディは再び誰か――今回の場合はおそらくベリチックHC――が間違っていたことを証明しようと報復を目論んでいるような節も感じられる。
あるペイトリオッツの攻撃選手は「コーチとトムの間に何があったのか分からない」と話し、「率直に言うと、どうでもいい。彼が俺たちを撃破したいのはそうだろうけど、俺は彼と一緒にプレーしてきたから分かる。彼は全チームを撃破したいんだ」と続けた。
「それは個人的なことか? たぶんそうだな」と、今もフォックスボロにいるもう一人のブレイディの元チームメイトは言う。「でも、だからといって彼がいつもより厳しい準備をするってことはないと思う。チームの誰にも影響はないだろう。俺たちはただ、これまでみたいに断片的なプレーじゃなくて60分間、3つの局面を通して良いプレーをしなきゃいけない。なぜなら、それは俺たちが予想しているものとは全く関係がないからだ」
簡単に聞こえても、ペイトリオッツはこれまでにそれを証明できなかった。対戦相手を考慮すると、今週は依然として困難になるかもしれない。
【RA】