現実離れした勝利で「とても感情的な週」を締めくくったバッカニアーズQBブレイディ
2021年10月04日(月) 23:02現地3日(日)にニューイングランド・ペイトリオッツと対戦したタンパベイ・バッカニアーズが最初のドライブでフィールドに出た際、ブーイングが起こった。そのブーイングはスタジアムにいた全員――ファンはもちろんのこと、クオーターバック(QB)トム・ブレイディ、そしてニューイングランド・ペイトリオッツのヘッドコーチ(HC)ビル・ベリチックも――が抱えていた葛藤をよく表していたのかもしれない。
彼らが目にしたのは、時代をけん引した非凡なクオーターバックがかつてとは別のユニフォームを着て、関係が悪化したとされるチームと対戦するというNFL史上最も奇妙な光景だった。
ひとたび試合が終われば、ベリチックHCはノスタルジーに浸っている場合ではなくなった。ブレイディと初めて対峙したときの感想を聞かれたベリチックHCは歯切れよく次のように答えている。
「われわれは守備の練習で毎日トム・ブレイディと向き合っていた。つまり、トム・ブレイディがわれわれにとって初見だったわけではない」
その後、ブレイディと話すためにバッカニアーズのロッカールームに入ったベリチックHCは25分近くもそこで過ごしていた。
バッカニアーズの勝利後、ブレイディは旧HCやチームメイトと抱擁を交わしている。
ブレイディはチームに対し、自身や自身を取り巻くストーリーを気にせず、試合に勝つことに集中するように伝えていたと、ランニングバック(RB)レナード・フォーネットは話している。
バッカニアーズHCのブルース・エリアンスはこう語った。
「彼にとってはとても特別なことだと思う。この1週間、心の中に秘めていたものを彼は今、吐き出しているのかもしれないね。しかし、彼にとっては大きな一週間だったが、チームにとってはもっと大きな一週間だった。これはクオーターバックとコーチの問題だと言う人たちに対して私はとても、とてもフラストレーションを感じていた。これはチームスポーツだ。この試合はバックスが勝ったのだ。われわれがペイトリオッツに勝った。皆、これがチームゲームだということを見失っていた。誰もがこの試合をブレイディとベリチックのものにしたがっていた。ビルは一度もプレーしていなかったのに。彼が率いる22人の選手は全力でプレーしていたし、彼はきっとそうさせると思っていた。われわれの22人の選手も全力でプレーしていた。その中の一人がたまたまブレイディだっただけだ」
20年の月日と思いがつまった夜がついに終わりを告げたとき、ブレイディは古巣凱旋に際して自分に影響を与えてくれたニューイングランドの人々について考えながら「とても感情的な1週間」を過ごしたと認めている。また、ファンからの扱いについては期待しないようにしていたようだ。
しかし、彼らは「最高」だったとブレイディは言う。
ベリチックHCとの関係についてブレイディは「僕が見た中で、本当に正確なことを言っているものは何もない。そういうものは絶対に僕の個人的な感情や信念から来るものじゃない。コーチとしての彼、そしてこの組織のさまざまな人々を尊敬している」と言いながらも、互いに何を話したかについては明かさなかった。
自身の傑出したキャリアのほとんどを生み出したジレット・スタジアムでの試合は今回が最後だという可能性はあるのかと問われたブレイディ。ブレイディは現在44歳で、バッカニアーズが次にここでプレーする可能性があるのは2023年だ。
「将来、どうなるかは分からない。もしかしたら、ここに戻ってくるチャンスがあるかもしれない」とブレイディは答えている。
チームの勝利はもちろん、得た反応や受けた扱いがそうさせたのか、月曜朝のブレイディの声は大部分において平穏そのものだった。
ブレイディは「僕はいつもこのコミュニティの一部だと感じている。僕にとってはアメージングな場所だった。今でもそうだ」とコメントしている。
ブレイディはこの試合で史上最多パスヤードを更新した。記録を樹立したのはバッカニアーズの一員としてだったが、たとえそのブレイディに負かされたとしても、もう一度ジレット・スタジアムで伝説のクオーターバックがプレーするのを見に来たすべての人々が、雨の中で立ち上がってそれを見届けている。
「これまでに僕のパスを受けたすべての人たちが、彼らのおかげでこのものすごくクールな記録ができたと思って、笑顔になってくれるといいね」とブレイディは語った。
彼のパスを見守ってきた多くの人々も、やはり笑顔を浮かべたことだろう。
【R】