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NFLが補償金の資格判断に人種に基いた認知症検査を用いないことで合意

2021年10月21日(木) 19:10


NFLロゴ【Ric Tapia via AP】

現地20日(水)に連邦裁判所に提出された内容によれば、NFLは10億ドル(約1,140億4,000万円)の調停において、黒人の退職者が脳震とうに対する補償金の資格を得ることを難しくしたと批判されていた、人種に基づく調整が施された認知症検査を撤廃することに合意したという。

2019年に2人の元NFLプレーヤーが公民権の訴訟を起こしたことで明るみになった“レース・ノーミング(人種による基準づけ)”の慣例に対し、世間から怒りの声が上がったことを受け、検査プランが改訂されている。批判家たちによれば、これまで行われていた調整によって、認知症を患う数百名の黒人選手たちが平均50万ドル(約5,700万円)を超える補償金を受け取る妨げになった可能性があるとのことだ。

水曜日に『The New York Times(ニューヨーク)』がその詳細を伝えた合意内容によれば、黒人の退職者たちは検査結果を再計算するか、一部のケースでは新たな認知テストの実施を求める機会が得られる。

「人種による基準や、人種層による推定――黒人か白人かを問わず―――は今後の調停プログラムで使用されないものとする」とこの合意内容には記されている。

これから判事による承認を受ける必要があるこの合意内容は、NFLと引退選手たちの弁護団、訴訟を起こした黒人選手であるナジェ・ダベンポートとケビン・ヘンリーの弁護士たちによる数カ月におよぶ非公開の交渉を経て提示された。

リーグの選手の過半数――現役選手の70%、および存命の引退選手たちの60%以上――が黒人だ。したがって、今回の変化による影響は大きいと見られ、NFLにとってコストのかさむものになる可能性がある。

これまで、8億2,100万ドル(約936億3,000万円)が5つのタイプの脳の損傷に対して支払われてきた。そこには初期および重度の認知症、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)として知られるルー・ゲーリック病が含まれている。

訴えを起こした黒人選手らの弁護士は、白人男性が黒人男性の2倍から3倍の割合で補償金の資格を得ているのではないかと考えている。支払い内容の人種的な分析が行われるのか、また、それが公にされるかは分かっていない。

引退した黒人のNFL選手であるケン・ジェンキンスをはじめとする複数の選手が、司法省の公民権課に調査を行うよう要請していた。最初の支払いは2017年に行われている。現在は上限の設けられていないこの補償金は、これが最初に承認された当時に引退していた選手全員を対象に、65年以上継続することになっている。

これまでに約2,000人が認知症の補償金を申請したものの、認可されたのは30%のみだ。一部のケースでは、医師が人種的な調整を適用していなかった場合、NFLは黒人男性への支払いに上訴していた。

機能障害を抱えた元選手の妻であるサンディエゴのロクサーヌ・“ロキシー”・ゴードンは今週、「NFLはレース・ノーミングに強く怒るべきです。彼らにとっても、彼らのすべてのスポンサーにとっても、受け入れがたいものであるはずです」と話している。

スタンフォード大学出身のアモン・ゴードンは40歳のときに自分が就労不可能な状態であることに気づいた。ゴードンは2度にわたって重度の認知症の補償金を得る資格があるとされたものの、この裁定はいまだに本人側に明かされていない理由によって撤回された。ゴードンの件はフィラデルフィアの連邦控訴裁判所で審理中だ。

新たな和解条件の元、NFLはいかなる不正も認めない。

黒人選手の認知機能の基準をより低いところに置くことを前提とするレース・ノーミングの適用停止を求める大きな動きの中で、リーグは6月に合意に至った。この前提により、選手生活に関係する知能上の欠損を患っていることを示すことが困難になっていた。

二元化した認知症検査の評価システム――黒人に対してと、その他のすべての人々に対して――は、1990年代の神経学者らによって患者の社会経済的なバックグラウンドを要素とする粗雑な手法で開発された。専門家らによれば、このシステムは法廷で和解された案件における支払いの決定に適用されることを想定したものではないという。

2万人を超えるNFLの引退者やその親類が、観察や検査、そして一部の人を対象に補償を行う和解プログラムの手続きを行った。重度の認知症には平均71万5,000ドル(約8,100万円)、初期の認知症には平均52万3,000ドル(約6,000万円)が補償される。

本人に機能障害はないものの、そういった人々を支援してきたジェンキンスは「新たなプロセスがレース・ノーミングを排除し、より多くの人々が資格を得られるのであれば、素晴らしいことだ」と話し、次のように続けている。

「われわれが望んでいるすべてが得られたわけではない。われわれはNFLが人種的な情報、すなわち誰が申請し、誰が支払われたかについて、完全な透明性を持たせることを望んでいる」

10年近くにわたってこの調停を監督してきた地方裁判所の判事であるアニータ・B・ブロディはダベンポートとヘンリーが今年行った訴えを、手続き上の理由で却下していた。しかし、後にブロディ判事は2013年に調停の交渉を行った弁護士――ニューヨークの原告側弁護士である選手側のクリストファー・シーガーとNFL側のブラッド・カープ――に対し、調停人と共にこの件の解決に取り組むよう求めている。

もうしばらくの間、ゴードン家をはじめとするNFLファミリーたちは待つことになる。

ロキシー・ゴードンは約10年にわたってNFLでディフェンシブタックル(DT)やディフェンシブエンド(DE)としてプレーした夫について「彼の人生は損なわれました」と話している。

「彼は教育を受けた40歳の男性ですが、彼のスキルを使うことすらできません。それは恐ろしいことでした」

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